介護職の離職原因のトップは人間関係

介護職はほかの職業に比べ、離職率の高い職業です。厚生労働省の調査によると、勤続1年未満での離職率は40％近くにのぼります。

離職理由のトップが人間関係です。介護労働安定センターの介護労働者の就業実態と就業意識調査によると、辞めた理由の34.3％が人間関係でトップを占めています。

具体的には上司からのパワハラや思いやりのない言動、業務指示が不明確などの理由が挙げられていました。上司以外でも、同僚からのきつい言動や嫌がらせが原因で離職した方もいるようです。

また後輩への指導が難しかったことを理由に挙げている方もおり、介護施設の利用者との関係ではなく、一緒に働く上司や同僚・後輩との人間関係に悩む傾向にあります。

介護施設の人間関係が悪くなる原因

介護職の人間関係が悪くなりやすいと聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。とはいえ、具体的にどのような理由で問題が起こるのか、詳しくはあまり知られていません。

ここからは、介護施設の人間関係が悪くなる原因を、詳しく解説します。

関わる人間が多い

介護施設で業務をするにあたって、関わる人間が多いことが人間関係が悪化する原因のひとつです。

上司や同僚など同じ職種のスタッフはもちろん、相談員や医師・看護師・薬剤師・リハビリ専門のスタッフなど、さまざまなスタッフと連携しなければなりません。

それぞれの立場で見方が異なるため、意見が食い違ったりぶつかったりするケースも出てくるでしょう。また、利用者さんやそのご家族とも密に関わらなければなりません。

なかなか信頼関係が築けず、傷つくことを言われたり、わがままな要求に頭を悩まされたりするケースもあるでしょう。

関わる人間が増えれば増えるほど、人間関係のトラブルは発生しやすくなります。

人手不足で疲労がたまりやすい

介護職は慢性的な人手不足で、一人ひとりの業務負担が多い傾向です。

厚生労働省によると、ここ数年の介護職員数は必要人員よりも年間約5万人規模で不足しているとされています。

日本では急速な高齢化が進んでおり、介護職員のニーズは高まる一方です。必要人員に対し、実際の職員数が少なければ、当然一人あたりの業務負担は大きくなります。

忙しく疲労やストレスが蓄積している状態が続けば、心にゆとりが持てなくなり、同僚や部下へ優しく接せられないことも増えるでしょう。

業務中の焦りや忙しさから、きつい言葉を投げかけてしまったり、当たりが強くなってしまったりする場合もあります。

スタッフの教育環境が十分でない

介護施設では人手不足もあり、スタッフの教育環境が整っていないところが少なくありません。

先輩スタッフがそれぞれのやり方を後輩に伝えるため、やり方の違いが混乱を招き、人間関係のトラブルにつながる可能性があります。

また、新人スタッフがわからないことを質問しても、先輩スタッフが忙しくて優しく答えられないケースも発生しています。

マニュアルもないような施設の場合、新人スタッフは常に不安を抱えながら、仕事をしなければなりません。

施設内で各業務のやり方を統一し、マニュアル化すれば上記のようなトラブルを防げますが、人手不足でなかなかそのような時間を作れないのも問題点のひとつです。

異動が少なく人間関係が固定しやすい

介護業界は一般的な企業に比べて人事異動が少ない傾向にあるため、人間関係が固定しやすいことも要因に挙げられます。

勤務歴の長いベテランスタッフが、好き勝手に振舞っている施設もあるでしょう。

そのような施設ではほかのスタッフや施設長も意見を言いづらく、職場環境はなかなか改善されません。新しく入ったスタッフも馴染みにくく、離職するケースも少なくありません。

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介護施設の人間関係改善につながるポイント

介護施設の人間関係が悪くても、個人の努力で改善できる可能性があります。

それぞれのスタッフの意識ひとつで変わることもあるので、参考にしながら動いてみましょう。

忙しくてもあいさつは欠かさない

あいさつはコミュニケーションの基本です。明るく元気な声で「おはようございます」とあいさつされて、気分を害する方はいないでしょう。

「おはようございます」「お疲れ様でした」「お先に失礼します」などのあいさつを欠かさないようにしましょう。

また、あいさつをされたときは、相手の目を見てあいさつを返すことが大切です。

忙しいからといって、パソコンの画面を見ながらあいさつを返せば職場の雰囲気は悪くなります。

あいさつを続ければ相手との信頼関係も深まり、チームワークも良好になるでしょう。

他人の悪口の話題には参加しない

悪口が飛び交っている職場は、人間関係が悪くなり、職場の雰囲気も暗くなりがちです。

悪口ばかりを聞いているとストレスが溜まり、自分も悪口を言われているかもしれないと不安になるため、相手を信頼できなくなります。

悪口の飛び交っていない職場で働くのがベストですが、多かれ少なかれ悪口が耳に入ることもあるでしょう。

そんなときはなるべく悪口に参加しないのが理想です。

直接話しかけられるなど参加しなければならない場面になった場合は、悪口を言わずに流すようにしましょう。

相手の意見を否定しない

相手の意見を否定すると、角が立ちます。たとえ事実でも、相手の意見を否定するような言葉は人間関係が悪化する原因です。

自分と違う意見だったときには「そういう考え方もあるんですね」と相手の考えを受け入れるようにしましょう。

どうしても自分の意見を伝えなければならない場合には、相手の考えを受け入れたうえで「このような考え方もできると思います」とやんわり伝えるようにします。

直接的な否定だけでなく、相手が話している途中に遮って自分の意見を話し始めたり目を見ないでほかの仕事をしながら話したりなどの言動も、相手が否定されたと感じることがあるため注意しましょう。

適度な距離感を保つ

人間関係に深入りしすぎてしまうと、職場環境が悪化するケースがあります。

相手の相談にのったり業務外で連絡を取り合ったりすると、一見同僚と仲よくなれたように見えますが、余計なトラブルに巻き込まれる原因です。

誰かに深入りすれば、ほかの人物の敵になる可能性もあることを覚えておきましょう。浅く広く付き合うことで、個人的なトラブルに巻き込まれずにすみます。

もちろん必要最低限のコミュニケーションは必要ですが、友達を作るためではなく、仕事をより円滑に進めるためであることを忘れないようにしましょう。

適度な距離感を保ちつつ、たくさんのスタッフと良好な関係を築くことが重要です。

笑顔を絶やさない

笑顔を絶やさずにいると、職場の同僚や上司・部下と良好な人間関係を築けます。普段から笑顔の人の周りには、たくさんの仲間が集まってきます。

それに対し、すぐに怒る人や不機嫌な人と接したいと思うケースは少ないでしょう。

特に介護職は利用者さんやご家族に安心感を与えるためにも、笑顔でいることは重要です。また、笑顔は自分自身の気持ちも明るくします。

辛いときや忙しいときほど、意識して顔の筋肉を笑顔に近づけるようにしましょう。職場の人間関係をギスギスさせないためにも、できるだけ笑顔を絶やさないことが大切です。

介護施設の人間関係に悩んだときの対処法

スタッフそれぞれの努力で職場の人間関係が改善されることもありますが、個人でできることには限界があるため、自分の力ではどうしようもないケースもあるでしょう。

介護施設の人間関係に悩んだときの対処法を具体的に解説します。

趣味などでストレスを解消する

趣味に時間を使うと、ストレスを解消できます。仕事の人間関係がすべてになってしまうと、ストレスは大きくなるばかりです。

仕事の人間関係から解放され、映画鑑賞や読書・ゲーム・旅行など、休日や仕事終わりの時間帯は自分の好きなことをして過ごしましょう。

好きなことに没頭していると、仕事のストレスを忘れることができます。心や体がリフレッシュされ、仕事にも意欲的に取り組めるようになるかもしれません。

また、ウォーキングやランニング、テニスやゴルフ・水泳など運動をして適度に汗を流すと、よりリフレッシュ効果が期待できます。

適度に身体を動かすので、睡眠の質も向上し、ゆっくり眠れるようになるでしょう。

相手の立場で考えてみる

相手の立場で考えてみると、今まで見えなかったものが見えてくることがあります。介護職は看護師・医師・リハビリ関係者・利用者など、さまざまな立場の方と関わる仕事です。

それぞれの立場での考え方があり、意見が衝突するケースもあるでしょう。

「もし自分が利用者だったらどう思うだろうか」「もし自分が看護師だったらどうするだろうか」など、相手の立場に立ち、客観的に物事を考えてみます。

なぜ自分の意見が受け入れられないのかがわかると、言い方や物事の進め方も変わってくるはずです。

相手もあなたの考えを受け入れやすくなり、人間関係が円滑に進むようになるでしょう。

問題点を整理する

現在どのような問題で悩んでいるのか、自分で整理してみることも大切です。問題点が明確にならないと、解決策が見つかりません。

自分が悩んでいる問題を書き出し、頭の中を整理しましょう。悩みが多そうに思えても、書き出してみると意外と同じような内容で悩んでいることがわかることもあります。

問題点が整理できると、上司に相談する際にも伝えやすくなるでしょう。

介護施設の人間関係が改善しなければ転職も視野に

さまざまな対処法を試しても人間関係が改善されないのであれば、転職も選択肢のひとつです。ストレスで限界を迎える前に、無理だと思ったら転職を検討しましょう。

特に職場の人間関係に悩んでいるけれど、介護の仕事自体は好きな方の場合、職場を変えるだけでストレスから解放される可能性があります。

新たな職場で良好な人間関係を築き、介護の仕事がもっと好きになるかもしれません。

職場の人間関係が原因で、睡眠障害や身体への不調を感じている方は早めに転職を検討してみましょう。

ただし、新しい職場に転職しても、同じように人間関係で問題を抱えてしまうとよりストレスになる可能性があります。

「自分はどこに行ってもうまくいかないのだろうか」と自己嫌悪に陥ってしまうこともあるでしょう。

そうならないためにも、十分にリサーチし自分にあった転職先を見つけることが重要です。

出典：公益財団法人 介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査」

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人間関係のよい介護施設のポイント

誰しも人間関係のよい職場で働きたいと思うはずですが、入ってみなければわからない部分もあるでしょう。

とはいえ、求人情報や会社情報をよく見ると、避けたほうがよい介護施設がわかってくるはずです。

ここからは、人間関係のよい介護施設を見分けるためのポイントを解説します。

人員配置に余裕がある

人手不足の介護施設の場合、スタッフに余裕がなくなって、職場の雰囲気がピリピリしていることがあります。

十分な研修制度が期待できず、不安を抱えたまま一人前の業務をこなさなければならないこともあるでしょう。

介護施設には人員配置基準が3：1と定められており、日中は入居者3人に対し、最低1人の常勤介護職員または看護師の配置が原則です。

これは最低限の人員配置で、施設によっては2.5：1以上にしているところもあります。

また、忙しい時間帯に非常勤のスタッフを入れ、現場を回しているケースも見られます。

人員配置に余裕を持たせる工夫をしている施設であれば、スタッフにも余裕があり、丁寧に仕事を教えてもらえるでしょう。

雰囲気が明るく職員に笑顔がある

転職の際には、求人情報だけでなく実際の職場を見学してみることがおすすめです。施設内の雰囲気が明るく、職員に笑顔が見られる職場は、働きやすい環境が整っている可能性が高いでしょう。

反対にスタッフ同士がギスギスしていたり、会話がなかったりする職場は注意が必要です。

職員だけでなく、利用者さんの表情もよく観察し、職場の雰囲気を確認するようにしましょう。

ハッシュタグ転職介護では、労働環境や人間関係、職場の雰囲気など、求職者が本当に重視するポイントを丁寧にヒアリングします。

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常に求人を出していない

常に求人を出している介護施設は、離職率が高い可能性があります。慢性的な人手不足に悩まされている施設は、十分な研修制度が整っておらず、入社しては辞めてしまう悪循環に陥りがちです。

もちろん業務拡大や規模拡大による求人など人間関係以外の理由も考えられますが、離職率が高いケースも多いので、よく調べてから応募するようにしましょう。

理念・業務内容が合っている

介護施設にはそれぞれの理念があります。公式ホームページやパンフレットに理念が記載されているため、事前に確認しておきましょう。

施設の理念には、経営者の人柄や大事にしたい思いが込められています。

その理念は職場の雰囲気にもつながるため、自分にあっているか確認しておくと、入社してから「思っていた職場と雰囲気が違った」とギャップに苦しむのを避けることができるでしょう。

ハッシュタグ転職介護では、入社後も定期的なヒアリングを実施し、職場での悩みや不安を早期にキャッチしてフォローしています。

こうした丁寧なアフターフォローにより、ミスマッチや早期離職を未然に防ぎ、高い定着率を実現しています。

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介護施設の人間関係をよくして働きやすい職場を目指そう

介護職はやりがいのある仕事ですが、人手不足や関わる人間の多さなどから、人間関係のトラブルが発生しやすい仕事でもあります。

あいさつや笑顔など、ちょっとした行動で、できるだけ職場の人間関係を改善するよう努力してみましょう。

とはいえ、個人でできることには限界があるため、無理だと思ったら転職を考えることも選択肢のひとつです。

人間関係のトラブルに再び悩まされることのないよう、よい職場環境の介護施設を見つけましょう。

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