介護施設での誤薬の危険性

誤薬とは薬を誤って与えることです。間違った種類の薬を与えたり、本人以外の薬を飲んだりする行為が該当します。

誤薬で注意が必要なのは、重大な結果を招きかねないためです。副作用による健康被害や症状の悪化、場合によっては致命的な事故につながりかねません。

このような深刻な結果を招きかねないので、介護施設で勤務するなら細心の注意を払うべきです。薬の取り扱いには、慎重を期しましょう。

介護施設での誤薬事例

誤薬が起こるのには、さまざまなパターンがあります。そのなかで、代表的な誤薬事例をいくつか紹介しましょう。

どのような事例が起こりうるのか、なぜ起こるのかについて見ていきます。誤薬が起こる事例を見ると、いずれも気をつければ予防できる事例も少なくありません。

別項で誤薬が起きる原因と対策も見ていくので、参考にしてください。

薬を飲み忘れた

誤薬の主要な事例に、薬の飲み忘れがあります。薬を飲んだものと勘違いするために起こる事例です。

例えば、食後に薬を服用する利用者がいたとします。食事を終え、歯磨きのために部屋に戻った利用者を見て、職員が薬を飲み終えたと誤解します。

しかし、その利用者は薬をまだ飲んでいなかったという事例です。このように職員が飲んだと思い込んでしまうと、薬を与え忘れかねません。

ほかの方の薬を飲ませた

誤薬事例のなかには、ほかの方の薬を誤って飲ませてしまうケースも少なくありません。過去には、マニュアルどおりに飲ませても誤薬が起こった事例もあるほどです。

特にほかの業務をこなしながらの忙しいときに発生しやすいため、注意が必要です。忙しいと確認をしていてもその確認が疎かになりかねません。

過去には降圧剤を異なる利用者に誤薬させて、その方が死亡したケースも見られました。重大な結果を招きかねないので、薬の確認は慎重に行うべきです。

服用する時間や回数を間違えた

薬によっては服用する時間や1日に与える回数が決められているものもあります。この服用時間や回数を間違えたために発生する誤薬事例です。

特に利用者に与える薬が変わったときに、以前の薬の用法で飲ませる誤薬には注意が必要です。厚生労働省にもこのような重要事例が過去報告されています。

抗生剤の種類が変更になり、投与の回数が1日3回から2回に変わりました。しかし、記載の補足に1日3回と誤って記載されていました。

さらに前から1日3回の指示を受けていたために、思い込みから誤って1回余計に投与してしまう事例です。確認不足によって起こりました。

介護施設での誤薬の原因

事例を見てもわかるように、誤薬は介護の現場では発生しうることです。では、なぜ誤薬が発生するのか、いくつか主要な原因が考えられます。

人為的なミスももちろんある一方で、現場の業務システムによる問題も考えられます。ここでは誤薬の主な原因について、いくつか見ていきましょう。

職員の意識不足や確認ミス

誤薬の原因として、人為的なミスは無視できません。例えば服薬介助を続けていると作業に慣れてしまって、流れ作業のように行う職員も見られます。

この場合、薬の種類が変わって服薬方法が変更されても、以前の用法で薬を与えるミスが起こりかねません。このようなミスは新人でもベテランでも起こりうるミスです。

また確認不足で、誤薬が起こるケースも考えられます。名前や種類、用法、用量のどれか一つ確認を怠っても誤薬は起こります。

特に忙しい時間帯と薬を与えるタイミングが重なると確認不足が起こりやすいので、注意しましょう。

人手不足や不適切な人員配置

介護業界の問題に起因する誤薬として、人手不足も挙げられます。慢性的に現場の人手が不足すると、一人あたりの業務量が増えます。

結果、薬の確認が疎かになり、誤薬が発生するわけです。介護業界における人手不足は、今後ますます深刻になると予測されています。

厚生労働省の試算によると2026年度には約250,000人、2040年度には約570,000人もの介護職員を確保する必要があります。

人材不足に伴う誤薬対策は、職員個々の努力だけでは困難です。施設や業界全体レベルの取り組みが求められます。

記録ミスや情報共有不足

服薬に関する指示があっても、その情報が共有されないために発生する誤薬です。服薬方法の変更の指示があってもそのことを記録しなければ、職員間で情報共有できません。

注意が必要なのは紙媒体や口頭伝達による情報共有をしている施設です。この場合、服薬方法のリアルタイムでの情報共有が困難です。

日勤・夜勤のシフト交代のときに、直近の変更情報が共有できません。申し送りに漏れが発生し、以前の方法で薬を与えると誤薬が発生するわけです。

薬の保管や管理体制の不備

薬の保管がずさんな場合、誤薬リスクが高まるので注意しましょう。例えば複数の利用者の薬を同じ棚で保管していれば、取り間違いミスが起こりやすくなります。

また薬には、それぞれに利用者の名前や用法などが記載されています。記載が小さい・文字が薄い場合は、見間違いによる誤薬の危険が高まるため注意が必要です。

さらに別項で紹介した職員の確認不足により、誤薬リスクが高まります。常日頃から薬の保管棚は整理整頓して、取り間違いの起こらない環境を整えましょう。

マニュアルや教育体制の不備

誤薬防止策として、マニュアルの作成は大切です。ヒューマンエラーは個々の努力だけでは完全になくなりません。

しかし、マニュアル自体が不十分だったり、職員に徹底していなかったりすると誤薬が起こりやすくなります。

また新人職員への教育が不十分だと、自己判断で対応しがちです。その結果誤薬が起こってしまうこともあるので、研修体制の整った職場で働きましょう。

自己判断のなかには、利用者の言葉を鵜飲みにすることで発生する誤薬も見られます。

薬を飲んでいないのに飲んだといったり、飲んだのに飲んでいないといったりするケースもあるからです。

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介護施設で誤薬が起きたときの対処方法

もし誤薬が発生したら、速やかに医療スタッフに連絡しましょう。そして医療スタッフに対応を任せることです。

夜勤で誤薬が発生した場合、医療スタッフが不在の可能性もあります。その場合でも医療スタッフに連絡して、指示を仰ぎましょう。

自分ではなく、ほかの職員が誤薬を起こすこともあり得ます。その場合には職員間で情報を共有し、連携して対処しましょう。

誤薬によって、利用者に異変が発生する恐れもあります。利用者に変化がないか注意深く観察して、異変があれば速やかに医療スタッフに報告しましょう。

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介護施設での誤薬を防ぐ有効な対策

誤薬は利用者を深刻な状態にしかねないため、十分な注意が必要です。一方、多くの施設では誤薬防止のためにさまざまな対策を講じています。

現場でどのような誤薬防止策を講じているのか、主な対策について見ていきましょう。

就職する際にはどのような誤薬対策を講じているのか、確認しておきましょう。

トリプルチェックや読み上げ確認の徹底

誤薬防止の基本は、確認の徹底です。複数の職員でダブルチェックすれば、誤薬のリスクを低減できます。

しかし、ダブルチェックよりもトリプルチェックと、より多くの方で確認を共有するとよいでしょう。例えば自分とほかの職員、利用者の三者で確認する方法です。

さらに黙読ではなく、発声して確認するとより効果的です。声に出すことで目だけでなく、耳でも確認できるためミスにも気付きやすくなります。

薬の一包化や服薬タイミングの集約

薬の一包化で誤薬リスクの低減が可能です。利用者によっては服用する薬の種類が異なります。

一包化は利用者に渡す薬のすべてを一つの袋にまとめる方式で、ミスも起こりにくくできます。

また服薬タイミングを集約することも、誤薬対策です。服薬のタイミングがバラバラだと、職員の負担増につながります。

薬の保管方法の工夫

異なる利用者の薬を同じ場所で保管すると、どうしても取り違えが起こりやすくなります。もし、同じ場所で保管をしている場合は、保管方法の見直しを進めましょう。

例えば利用者ごとや服薬する時間帯ごとに分けて、別々の棚で管理します。またどの職員が扱っても誤薬が起こらないように、ラベル表示も大切です。

ラベルには確認しやすいように、大きく太い文字で記載しましょう。また利用者や服薬する時間帯などで、カラー分けするのも一目で確認できます。

服薬介助専用のトレーを使用するのも一考です。トレーには服薬方法や服薬時の注意点を明記しておくと、誤薬リスクも低減できます。

ICTツールや記録システムの活用

誤薬は職員への教育徹底や確認でもリスクは低減できます。ただ人間にミスはつきものなので、ヒューマンエラーをゼロにはできません。

そこでシステムを導入することも検討しましょう。機械が薬のチェックや管理をし、ヒューマンエラーをさらに削減できます。

具体的には電子カルテや服薬支援アプリなど、ICTツールの導入が考えられます。

また薬にバーコードやQRコードを割り振り、端末で確認するシステムを構築するのも一つの方法です。

このようなシステムを導入すれば、薬の変更や処方方法の新しい情報もリアルタイムで共有できます。申し送り時に薬の情報漏れも発生しません。

マニュアルの見直しと個別対応

誤薬防止には、マニュアルを作成するのは有効です。マニュアルチェックを徹底すれば、誰もが同じように服薬管理できます。

ただし利用者の状況や職員の配置などは、時間の経過とともに変化します。そこで定期的にマニュアルを見直し、現状に合わせることも大切です。

介護施設の利用者の状態によっては、従来のマニュアルでは対処しきれない場合もあります。このような利用者がいれば、その方向けに個別のマニュアルを作成しましょう。

定期的な職員研修とOJT

職員が定期的に研修を実施して、誤薬防止に関する教育の徹底も対策になります。誤薬に関する新しい情報も、研修で共有できます。

職員がローテーションで講師を担当する仕組みを構築するのも有効な対策です。

講義を聴くだけでなく、自分が教える立場になることで誤薬に関する知識を高められます。

研修する時間がなければ、OJTで教育する方法を検討しましょう。新人と先輩が2人一組になり、先輩が注意や助言していきます。

またハンドブックを作成し、それを見ながら服薬管理を行う方法も考えられます。

利用者とのコミュニケーションの活用

利用者とのコミュニケーションで、誤薬を防止するのも有効な対策です。利用者に薬を飲んだか確認するように心がければ、誤薬を未然に防止できます。

薬を飲んだかだけでなく、どのような薬をいつ飲んだのか細かく聞くことで、さらに誤薬リスクを低減できます。

服薬のときだけでなく、利用者と密にコミュニケーションをとるのも有効な対策です。

常日頃からコミュニケーションをとっていれば、細かな利用者の異変や変化を見逃さずに済みます。ただし、利用者の言葉を鵜呑みにしないように注意しましょう。

利用者から確認をとり、なおかつ記録と照合すれば誤薬も発生しにくくなります。

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介護施設での正しい服薬介助の手順

介護施設で勤務するのであれば、服薬介助の基本的な流れを把握しておきましょう。まずは事前準備です。

薬の種類や用量など、内容を確認しましょう。そして内服薬の場合、飲み込むための白湯を準備します。

利用者のもとを訪れ、まずは服薬を行うと伝えましょう。そして自力で服薬できる場合は、利用者に薬を渡します。

もし自力での服薬が困難であれば、薬を口に入れる介助を行います。口のなかに薬が入ったら、白湯を飲むように促しましょう。

きちんと飲み込めたか確認した後は薬の袋を片付け、介助内容を記録します。

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介護施設で勤務するなら、利用者の安全管理はとても重要です。そのなかでも今回紹介した誤薬対策をしっかり行うことも大切といえます。

薬の飲み忘れや誤った用量で利用者に渡すなどの原因から誤薬が起きると、重大な結果を招きかねません。誤薬は人為的なミス以外にも、職場環境の問題も考えられます。

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