精神保健福祉士とは

精神保健福祉士は国家資格の一種で精神に問題を抱える方の社会復帰や生活支援を担う仕事です。

精神科病院や関連する医療施設に勤務して、精神障害の患者さんの相談を受けます。また助言や指導、日常生活に適応するための訓練やその他の支援に従事します。

精神保健福祉士を取り巻く環境の変化により、精神医療に果たす役割が比例的に拡大に向かいました。

精神障害者の援助に限定せず、うつ病や統合失調症を抱えて日常生活または社会生活に支援を必要とする方や、心に問題を抱えるビジネスパーソンの支援も可能な仕事です。

役割の拡大とともに従来の医療・福祉分野から、教育・司法・産業現場に活躍の場所が広がっています。

なお精神保健福祉士は精神科病院に長期入院する患者さんの退院および社会復帰を後押しするために1997年に誕生した国家資格です。

以下の記事を読んで精神保健福祉士に対するイメージを広げましょう。

精神保健福祉士の仕事内容

精神保健福祉士は心に問題を抱える方に寄り添い、社会の架け橋となる重要な仕事です。社会復帰や生活の支援のほか、日常の適応訓練やアドバイザリー業務を担当します。

精神保健福祉士の具体的な仕事内容は次のとおりです。

精神障害者の社会復帰に関する助言や指導を行う

精神障害者の相談に応じて、彼らが望む生活の実現に向けて助言や指導を担う仕事です。目標や理想の姿をともに考え、専門的な援助を実施します。

障害の有無に関わらず誰もが暮らしやすい地域社会の実現に向けて公的支援制度を紹介したり行政に働きかけたりする場合もあるでしょう。

支援対象者の個別の状況に応じて利用に適した制度を分析かつ検討のうえ、社会復帰の具体的な方向性を提案します。

精神障害者は多くの場合、各種給付制度や税の減免措置、利用可能な社会復帰促進施設の知識を有していません。各々の精神疾患の状態にも配慮して、円滑な情報提供や指導を担うことが重要です。

精神障害者の日常生活の適応に必要な訓練や援助を行う

精神保健福祉士は、長期入院中の精神障害者の社会復帰に必要な日常生活の適応への訓練を担います。例えば洗面や清掃、洗濯の習慣づけ、挨拶の練習などです。

また金銭の自己管理や一日の計画立案の援助、会話や生活マナーの訓練や指導を担います。
多くの場合、長期入院患者は病院の生活に慣れて自立した生活から遠ざかっているため、社会復帰が円滑に進みません。

精神保健福祉士は試験的な外出や周囲との関わり方のトレーニングを含む、幅広い生活技能を身に付ける活動を推進します。

精神保健福祉士の資格取得方法

精神保健福祉士は名称独占資格です。つまり資格を取得しなければ、業務を行うことは認められません。

資格を取得するルートには福祉系大学や短期大学の卒業、養成施設経、実務経験ルートがあります。それぞれの具体的な条件は次のとおりです。

• 保健福祉系大学4年、指定科目を履修
• 実務経験1年＋保険福祉系短期大学3年間、指定科目を履修
• 実務経験2年＋保険福祉系短期大学2年間、指定科目履修
• 福祉系大学4年、基礎科目履修＋短期養成施設6ヶ月以上
• 実務1年＋福祉系短期大学3年、基礎科目履修＋短期養成施設6ヶ月以上
• 実務2年＋福祉系短期大学2年、基礎科目履修＋短期養成施設6ヶ月以上
• 社会福祉士の資格保有者＋短期養成施設6ヶ月以上
• 一般養成施設1年＋一般系大学4年
• 一般養成施設1年＋実務1年＋一般系短期大学3年
• 一般養成施設1年＋実務経験2年＋一般系短期大学2年
• 一般系養成施設1年＋実務経験4年

　

上記のいずれかの条件を満たす方は、精神保健福祉士の国家試験の受験資格を得ます。社会福祉士の資格保有者は、申請により一部試験科目の免除が可能です。

試験に合格後、登録をすることで精神保健福祉士になれます。

精神保健福祉士の主な活躍の場

昨今は精神障害を抱える方が日常生活に支障なく暮らせるように、福祉や医療現場および地域が連携して包括的な支援体制を敷いています。

精神保健福祉士の需要も広がり、病院以外にも働く機会がある場所が増えています。入院患者以外のメンタルサポートに役割が広がり、学校や企業でも求められ始めました。

具体的な活動の場所や主な業務内容は次のとおりです。

精神科病院

精神保健福祉士の主な勤務先は総合病院の精神科、精神科病院、心療内科クリニックです。

医師と協力して入院患者さんや来院した患者さんの生活に関わる事柄をヒアリングして、回復に向けた諸々のケアを担います。

厚生労働省の医療施設動態調査によると、2024年6月時点で日本には述べ1057もの精神科病院があります。活躍の場は少なくはなく、精神保健福祉士の主要な勤務先のひとつです。

一般病院

精神保健福祉士は大学病院や一般の病院、クリニックに勤務して入院患者さんの退院支援や退院に向けたリハビリテーションの支援を担います。また医師や看護師と協力してグループワークを主体的に実施する役割があります。

またデイケアや訪問看護事業所に所属して、通院患者さんの支援に取り組む働き方もひとつです。地域で暮らす方の日常生活の支援や、目標の達成に向けた方法の立案や援助を担当します。

症状が悪化したときは本人や家族の意向に沿って、入院手続きのサポートを実施する場合もあります。

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障害者支援施設

障害者支援施設は精神障害や知的障害、身体障害を抱える方のうち常時介護を必要とする18歳以上を対象とした入居型の施設です。

障害者の日常生活を包括的に支援する目的のもと設立されました。入居者の心のケアを担う精神保健福祉士を求める障害者支援施設は少なくありません。

利用対象者は原則18歳以上かつ障害支援区分4以上の方、または50歳以上かつ障害支援区分3以上の方です。

障害福祉サービスの事業所

障害福祉サービスを提供する事業所で働く方法もあります。代表的な場所は障害者就労移行支援や就労継続支援、相談支援事業を展開する地域活動支援センターです。

居住場所を提供して包括的に日常生活のケアに励むグループホームで働く方もいます。また生活保護受給者の救護施設や養護施設、虐待を受けた児童を保護する児童養護施設も一種です。

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精神保健福祉センター

精神保健福祉センターは管轄の地域に居住する方々の心の健康の保持や向上、精神障害者の社会復帰の支援を担う都道府県運営の総合施設です。

精神障害者の相談や精神保健福祉の啓発普及のほか、自立訓練施設や精神科デイケア、精神科救急情報センターの運営が主な役割です。

行政機関に勤務する精神保健福祉士は精神保健福祉センター以外にも、保健所や都道府県・市役所の生涯福祉担当として働くキャリアもあります。

一般企業

従業員のメンタルヘルス対策として、ソーシャルワーカーを担う精神保健福祉士を配置する企業が増えています。長時間労働や職場の人間関係を理由に、メンタル面の不調を訴えるケースは少なくありません。

メンタルヘルスの発症による労働生産性の低下や長期休職は、企業の生産性を著しく悪化させる可能性があります。精神保健福祉士が心のケアの専門家として介入することは有効な対策です。

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教育現場

スクールソーシャルワーカーとして小学校・中学校・高等学校に勤務する方法があります。精神保健福祉士は学童や生徒のほか、激務で心を病みやすい教員のメンタルケアを担います。

社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査結果によると、2020年度に学校教育関係の勤務先で働く精神保健福祉士は全体の4.1％です。

少子高齢化を受けて子どもの数が減少しても教員のメンタルケアのニーズは高いことから、今後も一定の需要は続くと見込まれます。

保護観察所

司法領域の精神保健福祉士として保護観察所や矯正施設で働く方法です。心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った精神障害者の医療及び観察に関する法律に基づき、精神障害が原因で重大な犯罪を犯した者の社会復帰を支援する役割を担います。

一定の精神保健福祉分野の実務経験を積むことで審判を判断する精神保健参与員に抜擢される可能性もあります。

災害現場

災害発生時に災害派遣福祉チーム（DWAT）に派遣され、避難所で被災者の心のケアに取り組むキャリアです。

被災現場で精神障害を患っている方と家族の対応、被災によるストレスの対応、行政や事業所などの支援機関との連携を担う役割が期待されます。

災害発生時は心身に問題がない健康な方でも生活支援の対象です。特に環境の変化に弱く、服薬の困難を抱える精神障害者は災害時要支援者に位置付けられ、精神保健福祉士による支援が欠かせません。

精神保健福祉士に需要や将来性がある理由

働き口を失わずに中長期的に働き続けるためには、需要や将来性に着目するとよいでしょう。現時点ではニーズがある職業でも、時代の変化に伴い労働者が減る可能性があります。

精神保健福祉士は需要と将来性ともに高い仕事です。需要や供給、AIの代替可能性の観点から解説します。

心の問題を抱える方が増えているため

精神保健福祉士の支援対象となる心に問題を抱える方は年々増加傾向にあります。

2024年厚生労働白書によると精神疾患を有する外来患者の数は約586万人と過去最高の水準に達しました。そのうち気分障害が占める割合は169.3万人、神経症性障害等は123.7万人です。

さらに精神障害を原因とする労災の認定件数は2022年に過去最多の710件に達しました。また高齢者福祉との兼ね合いでも少子高齢化の影響で認知症患者の数は今後ますます増加すると予想されます。

精神疾患は一度発症すると完全に治癒に向かうとは限らず、中長期的な支援が必要です。認知症患者の増加も考慮すると、精神保健福祉士の求人はより増加に向かう可能性が高いでしょう。

資格保持者が少ないため

急増するニーズに応えるだけの資格保有者がいない状況が背景にあります。精神保健福祉士の数は2019年時点で89,121人です。毎年3,000名以上増え続けていますが、著しい需要の増加を満たす水準には達していません。

精神障害者の相談支援や日常生活の援助、機能訓練の実施などの仕事は資格保有者以外でも従事できます。しかし資格の保有を応募条件とする求人が少なくありません。

同じ医療福祉職の介護福祉士の1,694,630人、社会福祉士の245,181人と比較すると、精神保健福祉士の有資格者の数は極めて低い水準です。

多方面での需要が見込まれるため

精神保健福祉士は、精神科病院以外にも多方面に活躍の場が広がり始めました。一定以上の従業員数の企業に義務付けられる障害者雇用率は上昇傾向にあります。

また障害者を支援する組織の数が増え、行政や司法も一体となって精神障害や身体障害を抱える方の支援に取り組んでいます。学校のいじめ問題や一般企業の福利厚生の充実などの動きも要チェックです。

社会的にメンタルヘルスの重要性が認知され、精神障害の予防に注目が集まるなか、精神保健福祉士を求める声が激しさを増しています。

AIで代替しにくい仕事であるため

徐々にAIをビジネスシーンに取り入れる企業が登場し始め、人間の労働力を代替する動きがみられます。「自分の仕事が機械に奪われるのでは？」と不安を抱く方は少なくありません。

しかし相談者一人ひとりに応じて個別にきめ細かい対応が求められる精神保健福祉士は、AIに代替されにくい仕事です。単純な作業やルーティンワークとは異なり、今後も長期的に人間が担う必要がある役割だといえるでしょう。

精神保健福祉士に重要なスキルは傾聴力や共感性です。家族構成や病状を考慮して言葉の背景にある感情を汲み取り、適切な支援を提案する仕事はAIにうまくできるとは考えられません。

精神保健福祉士の現場の需要について詳しく知りたい方は、ぜひハッシュタグ転職介護の支援を受けてみてはいかがでしょうか。さまざまな医療機関や一般企業の経営者と強力なコネクションを有する私たちは、医療・福祉業界に特化した専門知識とネットワークを活かして、精度の高いマッチングを実現し、あなたに適切な職場を提供します。

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精神保健福祉士のスキルアップ方法

資格を取得した精神保健福祉士がスキルアップを目指す方法は次のとおりです。

• スーパービジョンの活用
• 専門研修の参加
• 多資格の取得

　

スーパービジョンは業務における日々の迷いや戸惑いを振り返り、気付きや学びを言語化する実践の場です。原点に立ち返り、精神保健福祉士の在り方や価値、理念を学ぶうえで有効といえます。

知識やスキルを効率的に伸ばすためには、外部機関や公的団体が実施する専門研修の積極的な参加も効果的です。講義の受講にとどまらず学会の発表や講師の役割を経験することで、専門的な知見の幅を広げられます。

関連資格の取得もキャリアパスの拡大につながる有力な方法です。特に社会福祉士の場合は精神保健衛生士の実務経験がある方は、一部試験の免除や要請施設の履修科目の免除の恩恵が受けられます。

資格の取得によって、精神に問題を抱える方だけでなく生活に困難を抱く方の支援に従事できます。ほかにも、介護福祉士や公認心理士も精神保健福祉士のダブルライセンスに選ばれやすい資格です。

精神保健福祉士として働きやすい職場を探す

精神保健福祉士は需要の増加が見込まれる将来有望な仕事です。なるためには実務経験ルート・養成施設ルート・福祉系大学ルートのいずれかの受験資格を満たした後、国家試験に合格する必要があります。

「せっかく資格を取得しても働きにくい職場だったらどうしよう」と不安を抱く方はいるでしょう。入職後のミスマッチを防ぐためには、転職先の入念なリサーチが必要です。医療・福祉業界に特化した人材紹介会社や転職エージェントの活用がおすすめです。

プロの視点から勤務形態や福利厚生、残業時間、サポート体制の有無など多様な観点から適切な転職先の紹介を受けられます。

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