介護業界における「2040年問題」とは

2040年問題とは、日本の人口に占める高齢者の割合がピークを迎える現象を指します。団塊ジュニア世代が65歳を迎えることで、高齢者人口が急増すると予測されています。
簡単にいえば高齢者人口がピークを迎え、社会保障費が増大する問題です。要介護者が多くなれば、その分介護職員も必要になります。
2040年に高齢者人口がピークを迎える
2040年問題とは、日本の人口に占める高齢者の割合がピークを迎える現象です。2040年には団塊ジュニア世代が65歳を迎えて、高齢者人口が増大するためです。
また、少子化の影響で生産年齢人口も減少すると予測されています。2045年には2015年と比べて約28%減少すると推計されています。
生産年齢人口が減り、高齢者が増加するので2040年には今まで以上に介護ニーズは大きくなるのが課題です。
要介護認定者数の増加予測
高齢者の増加に伴い、要介護者認定者数もピークを迎えると見られているのも2040年問題の一つの側面です。年齢が上がるほど、要介護者認定の割合も高くなります。
2021年の調査によると、85歳以上の要介護認定率は約6割に達しています。そして2045年には2015年と比較して、85歳以上の人口が約2倍に増加するという推計も出ているほどです。
さらに認知症の高齢者数がピークに達するのも2040年問題の一つです。認知症高齢者は2040年には8,000,000人にのぼると見られています。
社会保障費の増大による影響
高齢者が増加し、要介護認定者数も増大すれば社会保障費の負担が大きくなるのも2040年問題の課題の一つです。社会保障費を対GDPで見ると、2018年度は21.5%でした。
2018年時点の推計で、2025年度には21.7〜21.8%になると見られています。2040年度には23.4〜24.0%と右肩上がりで増大します。
一方で社会保障費を主に負担する生産年齢人口は減少傾向です。社会保障費の財政状況が深刻となり、十分な介護サービスを提供できない恐れも出てきています。
2025年問題と2040年問題の関係

介護業界では2040年問題のほかにも、2025年問題も指摘されています。2025年問題と2040年問題の違いがわからない方もいるでしょう。
ここでは2025年問題とはどのようなものなのか、見ていきましょう。2025年問題と2040年問題の間には、密接なつながりがあることも見えてきます。
団塊の世代が75歳以上になるタイミング
日本は他国と比べても圧倒的なスピードで高齢化が進んでいます。2025年には、そのスピードがさらに加速すると見られています。
なぜなら2025年以降は、いわゆる団塊の世代が75歳以上になるためです。2025年の75歳以上の後期高齢者人口は、21,500,000人を超える見込みです。
2024年2月時点での後期高齢者人口は、約20,320,000人でした。1年で1,000,000人以上後期高齢者人口が増えるわけです。
医療と介護の需要が同時に拡大

2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になります。後期高齢者になると病気になりやすく、要介護者も増えると考えられます。
高齢者人口が急増すれば、介護や医療の需要も一気に高まるのも2025年問題の抱える課題です。社会保障費が増大してしまいます。
さらに、要介護の状態になれば、家族が介護するケースも少なくないでしょう。つまり、家族の介護負担の増大も2025年問題の一つです。
2025年問題の延長線上にある2040年問題
2025年問題と2040年問題には違いがあるものの、関連性も見られます。2025年問題の延長線上に、2040年問題があるという構造です。
2025年問題と2040年問題に共通しているのは、高齢化が進む点にあります。2025年に団塊の世代が後期高齢者になって、高齢化が急激に進みます。
そして高齢化のピークを迎えるのが、2040年です。高齢化が進み、医療や介護サービスへの需要が大きくなり、どう対応するかが今後の課題です。
2040年問題の具体的な問題点

2040年問題は、「自分には関係ない」と思っている方もいるでしょう。しかし高齢者や要介護者の問題にとどまりません。
2040年問題は、日本全体に影響を及ぼす可能性のある問題です。2040年代には具体的にどのような問題があるか、見ていきましょう。
社会保障給付と負担の見直しの必要性
2040年問題を克服するための対策は、国を挙げて進められています。そのなかで注目されているのが、全世代型社会保障です。
従来、社会保障の給付を受けるのは高齢者がメインでした。一方社会保障費を負担するのは、現役世代が中心です。
今後高齢者が増え、現役世代は減少傾向が続きます。そこで年齢に関係なく、すべての世代でその能力に応じた負担のできる仕組みが必要です。
また高齢者であれば、給付が受けられる一律の仕組みも見直します。必要な方に必要なだけ給付されるようなシステムです。
医療介護人員の不足

2040年問題で高齢者人口がピークに達すれば、医療や介護への需要も増大します。すると問題になるのが、医療や介護の世界での人材不足です。
厚生労働省職業安定局が発表した雇用政策研究会の2019年の報告書によると、医療・福祉分野の就業者数は、2040年には960,000人不足する見込みです。
介護人材の不足も顕著になると見られています。2015年の報告で、2025年には約300,000人もの介護人材が不足するという推測が出ていました。
2040年には高齢者人口も増加するので、介護の人材不足問題はより深刻なものになっているでしょう。
労働人口の減少による経済の縮小
2040年問題は、何も介護の世界だけにとどまる問題ではありません。少子高齢化によって、現役世代の人口が減少します。
2024年の高齢社会白書によると、65歳以上に対する現役世代の割合は2040年には1.6人です。2030年は1.9人なので、生産人口の不足が進行しています。
特に医療や運輸、建設、教育における労働力不足が深刻になると予測されています。
介護業界では労働力不足が続いており、今後も高い需要が見込まれています。売り手市場の今こそ、納得できる条件で働ける職場を見つけるチャンスです。
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2040年問題に対する国が打ち出す対策

2040年問題が立ちはだかるなかで、国も無策で手をこまねいているわけではありません。2克服に向けて、国ではいくつかの方針を打ち出しています。
介護人材が定着し、離職しないための待遇改善はじめ施策をすでにいくつか出しています。ここでは、どのような対策を講じるのか、見ていきましょう。
介護職員の処遇改善
2040年問題への対応として、国が推進しているのが介護職員の待遇改善です。待遇を改善することで、人材の定着を促し、離職を防ぎます。
例えば介護報酬改定での処遇改善対策です。2024年度には介護報酬の改定率は、プラス1.59%になりました。
また2024年度の介護事業所の賃上げ率は、平均2.52%でした。このように賃金の引き上げをはじめ、介護職員の働きやすい環境づくりが行われています。
外国人材の受け入れ環境の整備
少子高齢化で現役世代が減少し、介護職員の人材不足が2040年問題の課題の一つです。国内で人材確保できなければ、外国から人材を受け入れる方策も進められています。
例えば海外の教育機関との連携強化をはじめ、海外から介護人材の確保を推し進めている事業所への支援が検討されています。
このように外国人人材の積極的な受け入れも有効な人材不足対策の一つです。
多様な人材の確保・育成

要介護者が増加すれば、介護サービスに関するニーズも多様化すると考えられます。
また生産年齢人口が減少し人材不足が進むなかで、多様な働き方ができる環境を整備するのも対策の一環です。
例えば柔軟な勤務形態を容認するのも、施策の一つです。季節限定や短時間勤務、週休3日制の導入などでより多くの担い手を確保します。
離職防止・定着促進・生産性向上
2040年問題で介護職員を確保するため、離職防止し定着率を向上させることも打ち出しています。離職の要因の一つが、仕事量の多さです。
介護職員に過大な負担がかからないように、テクノロジーの導入を推進しています。例えば介護ロボットを導入し、介護職員の負担を解消します。
また、育児をしていると仕事を続けにくい場合があるでしょう。育児と仕事の両立を可能にするため、事業所内に保育施設を設置する取り組みも進められています。
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介護業界が2040年問題に向けて取り組むべき対策

2040年問題に向けて、介護業界が取り組むべき対策もあります。今回は主に取り組むべき対策を見ていきましょう。
処遇改善や業務の効率化などで、より働きやすい環境の整備が求められています。
処遇改善と働きやすい環境づくり
介護職員の処遇改善をはじめ、働きやすい環境づくりは大きな課題です。国でも何度か待遇改善のための対策を実施してきました。
例えば2024年2月から5月にかけて、収入引き上げの措置を実施しました。2%程度、月額平均6,000円相当の引き上げです。
さらに、多様な働き方を推進するのも有効な施策の一つです。介護助手の採用や週休3日制の導入などが考えられます。
介護ロボットやICTの活用

介護職員の身体的な負担を改善するのも、離職防止につながります。例えば介護ロボットの導入です。
介護ロボットが要介護者の介助を行えば、介護職員の負担が軽減されます。少ない人員でも、必要な介助作業を補うことも可能です。
ほかにもICTの導入により、作業効率の改善を進めるのも施策の一つです。ネットワークやSaaSを活用すれば、その場で情報共有もできます。
業務効率・職場環境の改善
2040年問題対策として、業務や職場環境の見直しは避けて通れない課題です。具体的には無駄な作業の削減が挙げられます。
記録や情報共有などの事務作業は、ITツールを積極的に導入しましょう。インカムを導入すれば、その場でほかのスタッフとコミュニケーションが取れます。
業務の流れを見直すのも有効な施策です。無駄な作業が含まれていれば廃止し、簡易化できる作業はないか検討しましょう。
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2040年に向けて必要とされる人材像

介護職に興味があるけれども、自身に務まるのか不安に感じている方もいるでしょう。ここでは2040年問題に対応するための介護職員の理想像を見ていきます。
専門資格を持ち、ITに強い人材は2040年以降も重宝されるでしょう。またチームで介護にあたれるような人材も需要は高いはずです。
自分が介護の世界で活躍できる人材か、セルフチェックするためにも以下の情報を参考にしてください。
専門資格を持つ介護福祉士の重要性
介護の仕事をするためには、介護福祉士の資格を取得しておくとよいでしょう。介護福祉士に加えて、関連する資格を取得すればさらに重宝されます。

広範囲にわたって、専門知識やスキルを持っていることの証明になるためです。例えばケアマネジャーの資格はおすすめです。
ケアマネジャーになれば、要介護者のケアプランの作成が可能になります。5年以上の介護福祉士の実務経験があれば、受験資格が与えられます。
ICTやデータ活用に強い人材
2040年に向けて介護の世界で活躍するためには、デジタルに強いことも重要です。ほかの業種同様、介護でも進化したテクノロジーが今後必須になるためです。
ICTの活用により、その場でリアルタイムの情報共有ができます。インカムを装着し、要介護者の状態を逐一報告する事業所も出てくるでしょう。
さらにデータをデジタルデバイスで管理する事業所も今後増えると見られます。デジタルデバイスの基本的な使い方をマスターしておけば、効率的な作業も可能です。
チームワークと前向きな姿勢

介護の現場で求められるのは、チームワークです。ほかの介護職員と連携する場合もあれば、医師や看護師などほかの職種と協力する場合も考えられます。
一緒に助け合って介護に取り組む姿勢がなければ、要介護者によりよいサービスは提供できません。チームワークの意識を常に持って、仕事に当たりましょう。
また前向きに取り組む姿勢を持つ人材も、介護現場では求められます。未経験者の場合、はじめのうちはできないことの方が多いでしょう。
しかしできることから前向きに取り組んで、勉強してできることを増やしていく姿勢があれば、職場にも溶け込めるでしょう。
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介護業界で今後懸念されているのが、2040年問題です。高齢者人口がピークを迎え、介護の需要が高まると見られています。
未経験者でも、介護職員として働ける機会はあるでしょう。今後はデジタル技術の導入をはじめ、作業効率の向上も期待できます。
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