介護におけるICF(国際生活機能分類)とは

ICFは、健康状態と生活機能を体系的に分類する国際的な共通言語です。2001年にWHOで採択され、医療・福祉・介護の現場で広く活用されています。
ICFの目的は、利用者の全体像を把握し、多職種間で情報を共有することです。健康状態を構成する6つの要素から成り立ち、それぞれの要素が相互に影響し合う関係性を重視します。
ICF の定義と背景
ICFの正式名称はInternational Classification of Functioning, Disability and Healthで、日本語では国際生活機能分類と訳されます。1980年に発表されたICIDH(国際障害分類)の改訂版として、2001年5月のWHO総会で採択されたものです。
ICFは健康に関する共通言語を確立し、保健医療従事者・研究者・政策立案者など、さまざまな利用者間のコミュニケーションを改善することを目的としています。
ICD(国際疾病分類)の補助的な役割を果たし、健康状況と健康関連状況を記述する統一的な概念的枠組みです。
ICF の6大分類
ICFは健康状態・生活機能・背景因子の3つの大きな枠組みで構成されます。生活機能は心身機能と身体構造・活動・参加の3つに分かれ、背景因子は環境因子・個人因子の2つです。これらに健康状態を加えた合計6つの分類が、ICFの基本構造です。
各分類は約1,500項目のカテゴリに細分化され、アルファベットと数字を組み合わせたコードで表現されます。この分類により、利用者の状態を多角的かつ客観的に把握できるようになります。
介護領域における ICF 活用の意義

介護領域でICFを活用することで、利用者の全体像を多角的に理解することが可能です。従来の医学モデルは病気や障害に焦点を当てていたのに対し、ICFは生活機能というプラスの側面も重視します。
環境因子や個人因子を含めた包括的な評価により、利用者の強みを引き出す支援が可能です。多職種間で共通の言語を使うことで、情報共有がスムーズになり、チームケアの質が向上します。
ICFを用いたアセスメントは、ケアプラン作成やモニタリングにおいても効果的に機能し、利用者のQOL向上に貢献します。
ICIDHとの違い
ICIDHは国際障害分類と呼ばれ、1980年にWHOが定義した分類です。ICIDHでは機能障害・能力障害・社会的不利という一方向の因果関係で障害をとらえます。一方、ICFは各要素が相互に影響し合う双方向の関係性を重視する点が特徴です。
ICIDHがマイナス面(障害)に注目しているのに対し、ICFは生活機能というプラス面からも評価します。また、ICIDHは障害のある方が対象でしたが、ICFはすべての方を対象とした分類です。
評価点とコードの見方

ICFでは、分類コードと評価点を組み合わせて個人の状態を表現します。分類コードは先頭のアルファベットで心身機能(b)・身体構造(s)・活動と参加(d)・環境因子(e)のいずれかを示し、続く数字で詳細を表す仕組みです。
評価点は0から4までの数値で障害の程度を示し、0が問題なし・1が軽度・2が中程度・3が重度・4が完全な問題を意味します。
例えばb730.2は、筋力機能に中程度の問題があることを表すコードです。この標準化された記録方法により、誰が見ても利用者の状態を正確に理解できます。
ICF の6分類別「健康状態」に関する書き方

健康状態は、利用者が抱えている病気や怪我、変調などのことです。具体的には診断名や疾病の状態を記載し、利用者の医療的な背景を明確にします。健康状態には、慢性疾患・急性の体調不良・肥満・高血圧による変化なども含まれる要素です。
書き方は主治医の診断名や通院頻度、服用中の薬剤を具体的に記入し、複数の病気がある場合はすべて記載します。例えば2型糖尿病で週1回通院、インスリン注射の実施などを詳細に書き出すことが重要です。
健康状態はほかの5つの分類に影響を与える中心的な要素であるため、正確な情報収集と記録が求められます。
主治医や看護師から得た医療情報を丁寧に記録し、定期的に更新することで、利用者の状態変化に応じた適切なケア計画の立案につながります。
また、体調の変化や新たな症状についても随時追記し、多職種間で共有できる記録を心がけることが大切です。
ICFの健康状態を正確に把握することは、適切なケア提供の第一歩です。ハッシュタグ転職介護では、ICFを活用した質の高い介護を実践できる職場を多数ご紹介しています。
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ICF の6分類別「生活機能モデル」に関する書き方

生活機能モデルは、心身機能と身体構造・活動・参加の3つの要素から構成されます。記載する際は、できないことだけでなく、できることにも注目することが重要です。
プラス面とマイナス面の両方を記載することで、利用者の強みを活かした支援計画が立てやすくなります。各要素は相互に影響し合うため、全体のバランスを意識した記録が重要です。
心身機能と身体構造に関する書き方
心身機能は、手足の動きや視覚・聴覚、精神状態などの生理的・心理的機能を指します。身体構造は関節・靭帯・内臓・皮膚などの解剖学的な部位のことです。書き方は、関節可動域や筋力、心肺機能などの評価結果を具体的に記載します。
リハビリスタッフは測定値を、看護師であれば皮膚の状態や精神状態を記録します。プラス面とマイナス面を分けて記載すると、全体像を把握することが可能です。
例えば右手の握力は低下しているが、左手は十分な力があるなど、できることとできないことを明確にします。この記録により、利用者の残存機能を活かした支援をすることが可能です。
活動に関する書き方

活動とは食事・着替え・入浴などの日常生活動作や、料理と洗濯などの手段的日常生活動作を指します。仕事・家事・趣味・スポーツなども活動に含みます。
書き方のポイントは、どの程度自身でできるのかを具体的に記載することです。能力(できる活動)と実行状況(している活動)を分けて評価します。
例えば料理をする能力はあるが、現在は家族が作っているため実行していないといったことを記録します。
動作の自立度や介助の程度を明確にすることで、適切な支援内容を検討することが可能です。福祉用具の使用状況についても記載すると、より正確な評価につながります。
参加に関する書き方
参加とは、地域や家庭のなかでの役割を果たすことを指します。家事の役割・地域行事への参加・趣味のクラブ活動・友人との交流などが含まれる要素です。書き方は、社会的なできごとへの関わりや、コミュニティでの立場を記載します。
例えば自治会の役員として活動している、月に一度の囲碁クラブに参加しているなど具体的に書くことが大切です。入院中の場合でも隣のベッドの方と自ら話している、車いすで中庭へ散歩に行くなど、周囲との関わりを記録します。
参加の項目を充実させることで、利用者の社会性や生きがいを支える支援計画が立てやすくなり、QOL向上につながります。
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ICF の6分類別「背景因子」に関する書き方

背景因子は、利用者を取り巻く環境や個人の特性を表す要素です。環境因子と個人因子の2つから構成され、生活機能に影響を与えます。背景因子を丁寧に記録することで、利用者の生活環境や個性を踏まえた支援が可能になります。
環境因子が阻害因子となっている場合は改善が可能です。促進因子として機能している場合はさらに強化できます。
環境因子に関する書き方
環境因子は物的環境・人的環境・社会制度的環境の3つに分けて記載します。物的環境には住宅の構造・周辺の道路・交通機関・福祉用具などです。
人的環境には家族・友人・近隣住民・職場の同僚などとの関係性を記録します。社会制度的環境には医療保険・介護保険などの制度の利用状況を書きます。
書き方のポイントは、それぞれの環境が利用者の生活機能を促進しているのか、それとも阻害しているのかを明確にすることです。
例えば、自宅に段差が多く外出を躊躇している(阻害因子)、家族の協力が得られる(促進因子)といった具体的な内容を記載します。
個人因子に関する書き方
個人因子には年齢・性別・BMI・学歴・職歴・ライフスタイル・価値観・モチベーションなどを記載します。個人因子は現時点ではICFで詳細な分類が定められていないため、ケアプラン作成時に考慮すべき情報として自由に記録する項目です。
書き方は、利用者の個性や背景を具体的に書き出します。例えば、ガーデニングが趣味で植物の世話を楽しみにしている、几帳面な性格で計画的に物事を進めたいなどの記述することが適切です。
過去の職業経験や趣味は、介護計画に活かせる重要な情報となります。個人因子の理解は、利用者の価値観に沿った支援の基盤です。
介護現場での ICF 活用の流れ

介護現場でICFを活用する流れはアセスメント・ケアプラン作成・モニタリングおよび評価の3つの段階に分けられます。それぞれの段階でICFの視点を取り入れることで、利用者の全体像を把握し、効果的な支援の提供が可能です。
ICFは机上の理論ではなく、実際のケアプロセスで活用される実践的なツールです。アセスメント段階では利用者の状態を6つの分類で整理し、ケアプラン作成時にはその情報をもとに目標を設定します。
モニタリングおよび評価では、定期的にICFの各項目を見直し、支援の効果を確認することが重要です。この一連の流れにより、根拠に基づいた質の高いケアが実現します。
アセスメント段階での ICF 利用プロセス
アセスメント段階では、利用者の健康状態・心身機能・活動・参加・環境因子・個人因子の6つの分類に沿って情報を収集します。医師・看護師・リハビリスタッフ・介護職など多職種が関わり、それぞれの専門的な視点からの評価が必要です。
ICFのコードと評価点を用いることで、利用者の状態を客観的に記録できます。アセスメントでは、できないことだけでなく、できることや強みも積極的に書き出すことが重要です。
各要素がどのように影響し合っているかを分析し、全体像を把握することが求められます。この段階での丁寧な情報収集が、その後のケアプラン作成の土台です。
ケアプラン作成時に ICF を反映させる方法

ケアプラン作成時には、アセスメントで収集したICFの情報をもとに、利用者の生活課題を明確にします。生活機能のなかで改善が必要な項目や、環境因子で調整可能な部分を特定し、具体的な目標の設定が大切です。
例えば活動の項目で歩行が困難な場合、環境因子として歩行補助具を導入する計画を立てます。ICFの相互作用モデルを活用することで、一つの要素を改善することがほかの要素にもよい影響を与える可能性を見出せる利点です。
ケアプランには、長期目標と短期目標を設定し、どの分類の項目にアプローチするのかを明確にします。ICFを反映させることで、根拠のある計画の立案が可能です。
モニタリング・評価時に使う ICF 指標
モニタリング・評価時には、ケアプランに基づいた支援の効果をICFの指標を用いて確認します。定期的に6つの分類の状態を再評価し、目標達成度の測定が重要です。評価点の変化を追うことで、改善の程度を客観的に把握できます。
例えば、筋力機能の評価点が3(重度)から2(中程度)に改善した場合、リハビリの効果が出ていると判断が可能です。また、環境因子の調整によって活動や参加が改善したかどうかも確認します。
評価の結果をもとに、ケアプランの見直しや修正を行うことが大切です。ICFを用いた継続的なモニタリングにより、PDCAサイクルを回しながら質の高い支援を提供できます。
ICFを活用した介護は、これからの時代にとても重要です。ハッシュタグ転職介護では、専門知識を身につけて利用者に質の高いケアを提供したい方を全力でサポートします。
ICFを取り入れた先進的な介護施設や、研修制度が充実した職場を多数ご紹介します。未経験からでも学びながら成長できる環境です。
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ICF を活用した具体的な事例

ICFを実際の介護現場で活用することで、利用者の生活機能が大きく改善した事例が数多く報告されています。ここでは構造・機能を起点とした事例と、活動・参加を重視した事例の2つをご紹介します。
ICFの視点を取り入れることで、単に身体機能の回復を目指すだけでなく、利用者が望む生活を実現する包括的な支援が可能です。
事例を通じて、ICFの各要素がどのように関連し合い、どのように改善につながったかを具体的に理解できます。これらの事例は、ICFの実践的な活用方法を学ぶうえで役立つ内容となります。
構造と機能を起点とした改善支援事例

80歳女性のAさんは、特別養護老人ホームに入所中です。5年前に脳梗塞を発症し、左方麻痺の後遺症があり運動麻痺が顕著な状態です。現在は車いす中心の生活を送っています。
ICFアセスメントでは、以下の情報を収集します。
- 健康状態:脳梗塞後遺症
- 心身機能:左片麻痺と運動麻痺
- 活動:車いすでの移動
- 参加:何かしらで社会と関わりたいという希望
- 環境因子:施設入所中
- 個人因子:社会参加への意欲
ケアプランは、できることに着目し、車いすを活用した活動の拡大を計画するものです。環境因子の調整と本人の意欲を活かすことで、施設内での役割や交流の機会を増やすことを目指します。
この事例では、身体機能の制限があっても、環境調整と本人の意欲により参加を促進できることが示されています。
活動・参加を重視したリハビリ支援事例
82歳男性のBさんは、自宅で生活していますが、加齢に伴う身体機能の低下が見られる状況です。
ICFアセスメントでは、以下の情報を収集します。
- 心身機能:筋力低下と関節可動域の制限
- 活動:歩行能力の低下と日常生活動作に一部介助が必要
- 参加:地域活動への参加減少
- 環境因子:自宅に段差がある
- 個人因子:ガーデニングが趣味で植物の世話を楽しみにしている
ケアプランでは、本人の趣味であるガーデニングに類似した活動を取り入れることを提案します。デイサービスでの園芸プログラムへの参加や、自宅での簡単な植物の世話など、手を動かす活動を中心に計画を立てる内容です。
結果、本人の興味に合った活動により意欲が向上し、デイサービスへの参加も積極的になります。この事例では、個人因子を重視したアプローチの有効性が示されています。
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ICFは介護の質を高める強力なツールですが、初めて学ぶ方にとっては難しく感じることもあります。実際の現場で経験を積みながら学ぶことで、徐々に理解が深まり、自然に活用できるようになります。
多くの介護施設では、研修制度や先輩職員によるサポート体制が整っており、未経験からでも無理なくスタートが可能です。介護職としてのキャリアを考える際、ICFを取り入れた質の高いケアを実践できる環境で働くことは大切です。
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