訪問介護事業所には苦情窓口を設置する義務がある?

訪問介護におけるクレームと聞くと「ヘルパーが責任を負うのでは?」「介護職は辛い職業だ」と感じる方もいるでしょう。
しかし、訪問介護事業所には苦情窓口を設置する義務があるため、ヘルパー一人が責任を負うことはありません。
また、市町村も相談窓口を設置しています。行政と事業所が協力しながら、介護に関するクレームに対応することが求められています。
そのため、未経験でもサポート体制の整った環境であれば、安心感を持って対応できるでしょう。
訪問介護事業所へのクレーム事例

この章では、訪問介護事業所でのクレーム事例として以下の5点を紹介します。
- ヘルパーの介護技術の不足
- 介護中の事故
- 物の紛失
- サービス内容への不満
- 利用料金への不満
発生しやすいクレームをあらかじめ知っておくと、トラブルを避けたり、スムーズに解決に結びつけたりすることができます。
ヘルパーの介護技術の不足
ヘルパーの介護技術が不足していると、クレームにつながります。
介助時に利用者の身体を乱暴に扱い、痛みや不快感を与えたり、声がけが不足して不安な思いをさせたりすることが挙げられるでしょう。
また、家族や医師からの指示が適切に引き継がれず、共有されていないためにクレームにつながることもあります。
介護技術の不足は、クレームだけでなく大きな事故につながる可能性もあります。
「この程度で大丈夫だろう」と過信せず、資格を取得するなどして日々スキルアップを目指す必要があるでしょう。
事業所側も定期的な研修を実施するなどして、ヘルパーのスキル向上を手助けする必要があります。
ヘルパーのマナーや態度の悪さ
爪が長い、利用者の話を聞かないなど、ヘルパーのマナーや態度の悪さがクレームにつながることもあります。
「このぐらいは大丈夫だろう」「バレなければ大丈夫」と思わずに、事業所のルールや接遇マナーを守って業務に取り組むことが重要です。
また、利用者に対する言葉遣いにも注意が必要です。作業に集中するあまり利用者に向き合わないと、ふとした一言や態度で傷つけてしまうこともあるでしょう。
サービスを継続してもらうためにも、利用者の声や様子に気を配ることが重要です。
介護中の事故

介護中の事故もクレームにつながります。利用者の転倒や怪我があった場合、利用者はもちろん家族から心配の連絡が入ることがあります。
謝罪対応だけでなく、場合によっては入院費や治療費の支払いが求められることもあるでしょう。また、自治体への苦情申し立てがあった場合、自治体から事業所に対し指導が入ることもあります。
介護中に事故が発生すると、ヘルパーも焦るでしょう。しかし、隠したり誤魔化したりせず、指摘が入る前に申告し謝罪することが重要です。
「怒られるのが怖い」と対応を先延ばしにすると、事態が大きくなることもあります。
物の紛失
あってはならないことですが、物品の紛失や盗難もクレームにつながります。
「ヘルパーさんが盗んだかも」と利用者が感じた時点でクレームが入ることもあるため、疑われるような言動は避け、利用者の私物管理は厳重に行う必要があります。
また、消耗品の減りが早いことで、クレームにつながることもあるでしょう。「気付かれないだろう」と思っても、利用者はよく見ているため注意が必要です。
サービス内容への不満
ケアの内容や事業所の管理体制への不満がクレームにつながることもあります。
例えば、ヘルパーが毎回遅刻してくるために、介護の時間が短くなっているケースが挙げられるでしょう。
ほかにも、正当な要望にも関わらず実際のサービスに反映されなかったり、事前の説明と異なるケアが行われたりする場合もクレームにつながります。
請求や支払いに関する不手際もサービス内容への不満につながることがあり、事業者側も利用者や家族の方との接し方に注意する必要があります。ケア以外もサービスの一環だと認識しておくことが重要でしょう。
利用料金への不満

訪問介護の利用料金への不満がクレームにつながることもあります。利用者やその家族が利用料金の内訳を知らなかったり、納得できなかったりする場合にクレームが発生しやすいです。
利用料金の内訳を事前に説明し、利用者や家族が納得したうえでサービスを提供することが望ましいでしょう。
特に、追加料金が必要なケースやサービス対象外の行為や作業について明示しておくことが大切です。
利用者からのクレームを防ぐためにはヘルパーの努力はもちろん、事業所側の体制も重要です。
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利用者からクレームを受けたときの対応手順

利用者からクレームを受けたときには、事業所のマニュアルに沿って素早く対応することが重要です。
特にファーストレスポンスは24時間以内に行うとよいでしょう。一般的なクレーム対応の手順は以下のとおりです。
- 相手の話を聞く
- 事実確認を行う
- 謝罪を行う
- 対策案や代替案を提示する
クレームの内容によっては慎重な判断が求められることもありますが、対応が遅れると利用者や家族の不安は時間経過とともに増します。
結論が出せない場合でも、こまめに連絡を取るといった工夫をするとよいでしょう。
相手の話を聞く
まずは利用者からの話をよく聞くことが重要です。利用者が冷静に話せるように、まずは担当ヘルパーのいない場で話を聞くとよいでしょう。
その際、利用者の話を遮らない、短絡的に解釈しないなどの注意を払う必要があります。
事実確認を行う
利用者からの話を聞いた後は、1週間以内を目処に事実確認を行います。
担当ヘルパーとの認識合わせや客観的な事実がわかる証拠などを確認しましょう。事実が判明するまでは、当事者を責めるような言説をしないよう注意が必要です。
法令違反や食中毒の発生など、被害が大きい場合には市区町村にも速やかに報告する必要があります。
謝罪を行う

事実確認の結果、ヘルパーや事業者側に非があった場合は誠心誠意謝罪をすることが重要です。
事態の経緯や反省ポイントを明確にしたうえで謝罪するとよいでしょう。とりあえず謝罪しておけばよいという態度は、利用者の不信感にもつながります。
事実確認に時間がかかる場合やクレームの温度感が高い場合には、「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」や「お手数をおかけしてしまい申し訳ございません」など、相手の不満や怒りを抑えるための謝罪も効果的です。
対応策や代替案を提示する
謝罪とともに対応策や代替案を提示することも欠かせません。ヘルパー本人の資質やケアレスミスで片付けるのではなく、ミスや事故の原因をよく分析することが重要です。
同じ事象が発生しないよう対策を立てることで、今後のクレームを減らすことにもつながるでしょう。
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利用者からクレームを受けた場合の対処方法

利用者からクレームを受けた場合は、とにかく迅速に対応する必要があります。
「対応が大変だから後回しにしてしまおう」「怒られるのが怖いから秘密にしておこう」といった対応をすると、より事態が深刻になる可能性もあります。
まずは、事実関係を確認したうえで上司や責任者に速やかに報告しましょう。その際、事態を過小評価せず、客観的にありのままを伝えることが重要です。
報告が完了したら事業所の方針に沿って謝罪といった対応を行います。事務的な対応ではなく、利用者の気持ちに寄り添い、対応策や代替案を提案することでスムーズな解決につながるでしょう。
クレームを受けた後の対処法はもちろん、クレームを受けないようスキルアップすることが重要です。
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クレームのなかには理不尽なものもある?

クレームのなかには正当なものもありますが、なかには介護職員からすると理不尽に感じるものもあるでしょう。この章では、以下の3パターンを紹介します。
- サービスの範囲を超えた要求をする
- 不当に金銭を要求する
- 職員を怒鳴りつける
特に理不尽なクレームに関しては、介護職員一人で抱え込まず事業所内で共有したり、役職者に対応を依頼したりと周囲を頼るとよいでしょう。
サービスの範囲を超えた要求をする
サービス範囲外の要求はクレームの一つです。特別待遇を求めたり、介護職の対応範囲外の作業を求めたりといったことが、介護現場では発生しやすい傾向です。
例えば、担当制でないにも関わらず「毎回同じ介護士に対応してほしい」と要求したり、医師の指示がない投薬やリハビリを要求したりなどの行為が挙げられるでしょう。
一度対応してしまうと、ほかの利用者からの不公平感につながったり、特別待遇が常態化してしまったりと影響が大きくなります。
できないことはあらかじめ利用者と家族に伝えておく、対応できないことはきっぱり断ることが重要です。
判断に迷う場合や断り切れない場合は、一度持ち帰って上司や責任者に指示を仰ぐのもよいでしょう。
不当に金銭を要求する

クレーム自体に正当性があったとしても、不当に金銭を要求する行為は理不尽なクレームとなります。
もちろん、物品の紛失や破損があった場合は、事業所側が損害賠償を支払わなくてはいけないケースもあります。
しかし、以下のケースは不当な金銭要求にあたるでしょう。
- 金銭での解決が妥当でない場合にも金銭を要求する
- 法外な慰謝料を請求する
- 脅迫や暴力を使って金銭を要求する
金銭が絡むため一人で判断せず、まずは事業所に相談しましょう。また、事業所側も慌てて対応する前に、法律に詳しいスタッフや外部機関に相談することが重要です。
職員を怒鳴りつける
職員を怒鳴りつけることは正当なクレームではなく、カスタマーハラスメントにあたります。
1対1で対応せず、録音や録画で証拠を残しておくことが重要です。職員のストレスや職場環境の不満にも直結するため、早めに解決する必要があるでしょう。
ほかにも、暴言や暴力、長時間にわたって職員を拘束する行為もカスタマーハラスメントにあたります。
「自分が起こしたミスだから仕方がない」と思わずに上司や責任者に報告するようにしましょう。
クレームを防ぐための対策

クレームのなかには理不尽に思えるものもありますが、スキルアップや少しの工夫でクレームを未然に防ぐことも可能です。
この章では、クレームを防ぐためのポイントとして以下の3点を紹介します。
- 利用者とのコミュニケーションに力を入れる
- 職員の介護スキルを向上させる
- 接遇マナーの講習を行う
クレームを防ぐための対策を実施することで、職員が安心感をもって働ける職場を作ることにつながるでしょう。
利用者とのコミュニケーションに力を入れる
ヘルパーと利用者の間でしっかりとコミュニケーションを取ることで、クレームを防ぐことができます。
普段からこまめなコミュニケーションを心がけることで、利用者の不安や不満を早めに察知することができるでしょう。
また、ヘルパー同士やヘルパーと事業所のコミュニケーションも重要です。利用者に関する情報の共有や適切な引き継ぎによって、クレームを防止できる可能性があります。
職員の介護スキルを向上させる
職員の介護スキル向上もクレームを防ぐことにつながります。特に、介護スキル不足による事故やミスを防ぐために、職員のスキル向上が効果的です。
また、職員個人がスキルアップすることも重要ですが、事業所側も職員のスキルアップを支援するために資格奨励金を出したり研修会を開催したりなどの工夫もよいでしょう。
接遇マナーの講習を行う

接遇マナーの講習を行うことも、クレームを防ぐための対策になります。介護職の場合は以下の5点が接遇マナーの5原則です。
- 挨拶や声がけ
- 身だしなみ
- 言葉遣い
- 表情や笑顔
- 態度や聴く姿勢
接遇マナーを守ることはクレームを防ぐだけでなく、利用者の尊厳を守ることにもつながります。
事業所全体で取り組むためにも事業所内で講習会を開いたり、研修のための費用を事業所が負担したりするとよいでしょう。
介護職では、介護の技術はもちろんコミュニケーション能力など日々の自己研鑽が重要になります。
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クレームへの対処方法を知って業務に役立てよう

介護職は、利用者やその家族と密接にコミュニケーションを取る必要があります。サービス業にもあたるため、ときにはクレームを受けることもあるでしょう。
なかには、正当なクレームだけでなく、理不尽なクレームを受けることもあるかもしれません。
一人で抱え込むと、仕事への意欲が下がったりストレスが過剰になったりするなど、デメリットも大きい傾向があります。
同僚や上司、責任者などに相談し、事業所全体でクレーム対応を行うことが望ましいです。
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