通所介護のサービス実施記録票

サービス実施記録票とは、通所介護事業所が利用者に提供したサービスの内容や時間、利用者の状態などを記録する書類です。
単なる業務日誌ではなく、介護報酬の請求根拠・職員間の情報共有・ケアマネジャーとの連携という3つの目的を持ちます。
サービス実施記録票の目的
1つ目は介護報酬の請求根拠です。
介護給付費を受け取るには、法令に基づいた適切なサービスを提供した証拠が必要であり、記載漏れや誤りがあると不正請求と判断されるケースもあります。
2つ目は職員間の情報共有です。
デイサービスでは常に同じ職員が同じ利用者を担当するとは限りません。記録を通じて利用者の状態や希望を共有することで、誰が担当しても適切な支援を続けられます。
3つ目はケアマネジャーとの情報共有です。
担当ケアマネジャーは記録内容から利用者の状態変化を確認し、必要に応じてケアプランの変更を検討します。記録の質が、そのままケアの質に直結します。
記録が重要な理由

サービス実施記録票の作成と保存は、指定居宅サービスなどの事業の人員、設備および運営に関する基準(厚生省令第37号)第19条によって事業者に義務付けられています。
記録が不十分だったり内容が実態と異なっていたりする場合、運営指導での指摘だけでなく、介護報酬の返還を命じられるリスクもあります。
日頃から正確な記録を積み重ねることが、事業所と職員自身を守ることにつながります。
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記録作成が求められる背景
通所介護の記録業務が重視される背景には、介護サービスの透明性・説明責任に対する社会的な要請の高まりがあります。
介護保険制度では公費と保険料から介護給付費が支払われるため、適切なサービスが本当に提供されているかを客観的に確認できる記録の整備が強く求められています。
また多職種連携が推進されるなかで、看護師・ケアマネジャー・医師・理学療法士など介護職以外の専門職が記録を参照する機会も増えています。
誰が読んでも正確に伝わる記録を書く力は、介護職の基本スキルといえるでしょう。
なお、サービス実施記録票の保存期間は、サービスが完結した日から2年間です。
自治体によっては独自の保存期間を定めているケースもあるため、所管の市区町村に確認しておきましょう。
通所介護のサービス実施記録票に記載する基本項目

サービス実施記録票に統一様式はなく、各事業所が独自に作成できます。
ただし、運営基準を踏まえて以下の項目を記載するのが一般的です。
利用日・サービス提供時間
利用日や送迎時間、利用時間(事業所での滞在時間)を正確に記載します。
この時間の記録は加算の算定根拠にも直結するため、曖昧な記載は避けなければなりません。
例えば3時間以上のサービス提供を前提とした加算を算定している場合、記録上の時間が3時間に満たないと加算の返還を求められる可能性があります。
送迎の出発や到着時刻も含め、実際の時間を正確に残しましょう。
提供したサービスの内容
その日に提供したサービスの内容を具体的に記載します。
記録すべき主な項目は以下のとおりです。
- バイタル(体温・血圧・脈拍の数値)
- 入浴(個浴・機械浴の別、介助の範囲、皮膚状態など)
- 食事(食事形態、主食・副食の摂取量、水分摂取量など)
- 排泄(排尿・排便の回数、リハビリパンツ使用の有無など)
- 活動(体操・レクリエーション・機能訓練の内容と参加状況)
「レクに参加した」だけでなく、[計画目標『他者交流の促進』に対し、カラオケレクで隣席の利用者に自ら声をかける場面があった]
というように、ケアの目的と実績を結びつけた記録を意識しましょう。
利用者の心身の状況

利用者のその日の体調や表情、気分や訴えなど、心身の状態を記録します。
バイタルの数値だけでなく、来所時から顔色が優れず、「昨夜はあまり眠れなかった」と話されるなど、普段との変化を具体的に記述することが大切です。「いつもと変わりなし」という記載だけでは、後から状態変化の経緯が追えなくなります。
通所介護のサービス実施記録の書き方のコツ

ここでは、現場で特に意識したい3つのコツを解説します。
客観的な事実のみを記述する
記録で重要なのは、観察した事実を書くことです。
楽しそうにされていたは主観的な印象ですが、笑顔がみられ、隣席の利用者に自ら声をかける場面があったと書き換えれば客観的な事実として伝わります。
よくある主観表現と言い換えの例を確認しておきましょう。
- 「楽しそうにされていた」→「笑顔がみられた、自ら発言する場面があった」
- 「不機嫌になった」→「顔をしかめた、返答がなかった」
- 「食欲がなさそうだった」→「昼食を3割程度しか摂取されなかった」
利用者の言葉は「」(カギ括弧)を使って発言をそのまま記載するのが基本です。
「膝が痛い」と訴えあり、という記載にすることで、利用者の訴えと職員の観察が明確に区別されます。
専門用語・略語・NGワードを避ける
サービス実施記録票は利用者本人やご家族も確認できる書類です。
現場でよく使われるNGワードとその言い換えを確認しておきましょう。
- 「徘徊」→「歩き回る、居室外を歩かれる」
- 「勝手に〜される」→「自発的に〜される」
- 「食介」→「食事介助」/「PT」→「理学療法士」
- 「傾眠」→「うとうとされる様子がみられた」
- 「ADL」→「日常生活動作」
また、医師の診断を受けていない段階で病名を記載することも禁止です。
肺炎と思われるではなく、咳と発熱がみられた。骨折したのではなく、足の痛みを訴えられたと、観察した事実のみを記述することが原則です。
第三者が読んでも理解できる表現を選ぶ
ほかのスタッフ・ケアマネジャー・運営指導の担当者など、さまざまな立場の方が読む可能性があることを常に意識しましょう。
そのうえで「5W1H」を意識した記述が力を発揮します。
- 悪い例:入浴介助を実施した
- よい例:14:00より個浴にて入浴介助を実施。洗身・洗髪は職員が全介助。湯温38度、皮膚に発赤や傷なし。入浴後、麦茶100mLの水分補給を促す
少し・たくさんなどの曖昧な表現を避け、昼食8割摂取・血圧135/80mmHgのように具体的な数字で記載することが基本です。
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通所介護のサービス実施記録の例文
現場でよく記録する4つの場面について、具体的な例文を紹介します。
「書き方のイメージがわかない」という方はそのまま参考にしてみてください。
入浴介助の記録例

入浴の記録では、介助の種類(個浴・機械浴の別)、介助の範囲、皮膚状態の観察結果を中心に記載します。
【記録例】
13:45、個浴にて入浴を実施。湯温38度。洗体・洗髪は職員が全介助。
入浴中、「気持ちいい」と笑顔で話される。皮膚に発赤・傷なし。下肢に軽度の浮腫がみられたため、看護師に報告済み。入浴後、麦茶100mLの水分補給を促す。
湯温・介助範囲・皮膚観察・水分補給まで一連の流れが記載されています。浮腫の発見と報告の事実を残しておくことで、状態変化のトレースが可能になります。
食事介助の記録例

食事の記録では、食事形態・摂取量・水分量・食事中の様子を記載します。
【記録例】
12:00、昼食。食形態は刻み食。主食(軟飯)・副食ともに約7割摂取。
「今日はあまりお腹が空かない」と話されるも、職員の声かけで摂取量が増える。むせ込みなし。昼食時に水分150mL摂取。食後の口腔ケアを実施(全介助)。
利用者の発言と摂取量の数値で客観的に記録しています。むせの有無は誤嚥リスク管理の観点から欠かせない記載項目です。
レクリエーション記録例

レクリエーションの記録では、活動の内容・参加状況・利用者の反応を記載します。
ケアプランの目標と関連付けて書くと、さらに内容が伝わりやすくなります。
【記録例】
14:00〜14:45、午後のカラオケレクリエーションに参加。
隣席の利用者に自ら話しかけ、「この曲、昔よく歌ったよ」と笑顔で会話される場面がみられた。声量は小さいながらも最後まで歌われる。活動中、疲労感の訴えなし。
実際に観察できた行動と発言内容を記録することで、ケアプランの『他者交流促進』という目標に対する具体的な成果が伝わります。
体調変化・特記事項の記録例

体調変化が生じた際は、発見時刻・症状・バイタル値・対応の経過・家族への報告を時系列で記録します。
【記録例】
15:20、活動中に顔色不良がみられる。「少し気分が悪い」と訴えました。
バイタル測定:血圧152/92mmHg、脈拍88回/分、体温36.7度。安静を促し、リクライニング椅子にて臥床。看護師および管理者に報告。
15:40、「楽になった」と話され、顔色が改善。
再計測:血圧137/84mmHg、脈拍80回/分。水分補給(麦茶100mL)を促す。
16:10、帰宅時も状態安定。送迎スタッフへ申し送り。ご家族に本日の経過を口頭で報告し、念のためかかりつけ医への受診をおすすめする。ご家族より了承を得る。連絡ノートへも記載済み。
時刻・数値・対応・報告先を時系列で残すことで、「いつ・誰が・どう対応したか」が第三者にも明確に伝わります。
病名は使わず、観察事実のみを記述している点がポイントです。
通所介護のサービス実施記録を書く際の注意点

実地指導で頻繁に指摘されるポイントをチェックリスト代わりに確認しておきましょう。
- 速やかに記入する:サービス提供中または終了後にメモを取り、その日のうちに記録を完成させましょう。
- 訂正は一本線+サイン+日付:修正液・修正テープの使用は禁止です。誤箇所に一本線を引き、訂正者のサインと日付を記載します。
- 記録者名を必ず記載する:複数の職員が担当する場合でも、各記録に担当者名を入れましょう。
- ケアプランとの整合性を確認する:計画のサービスが提供できなかった場合は、その理由と代替の対応も記録しておきましょう。
- 個人情報は適切に管理する:施錠できる場所で保管し、閲覧できる職員を限定するなど、個人情報保護法に基づいた管理が必要です。
- 保存期間は2年間(自治体により異なる):運営基準上は完結の日から2年間ですが、自治体によって異なるケースもあるため、所管の市区町村への確認をおすすめします。
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通所介護の記録業務を効率化する方法

記録業務は大切ですが、時間がかかりすぎると利用者と向き合う時間が削られてしまいます。
ここでは、質を落とさず効率化するための具体的な方法を2つ紹介します。
定型文・例文集の活用
よく使う表現を定型文・例文集として事業所内で共有することで、記録時間を大幅に短縮できます。以下のような定型文を用意しておくと便利です。
- 入浴系:「〇〇浴にて入浴実施。皮膚に異常なし。入浴後、水分補給を促す。」
- 食事系:「食形態:〇〇。主食〇割・副食〇割摂取。むせ込みなし。水分〇mL摂取。」
- レクリエーション系:「〇〇レクに参加。他利用者と笑顔で交流される場面みられた。」
定型文を使う場合も、利用者ごとの状態や特記事項は必ず追記してください。
全員が同じ記録になっていると、実地指導の際に「サービスが形式的にしか提供されていないのではないか」と疑われる可能性があるため注意が必要です。
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