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仕事・働き方

2025.9.13

介護福祉士は医療的ケアを行える?医療的ケアを行うための条件と認められている行為を解説

介護福祉士として働くなかで、医療的ケアが必要な場面に直面することも増えてきました。超高齢社会を迎えた今、介護現場での医療的ケアのニーズは高まる一方です。

しかしどこまでが介護福祉士の業務範囲なのか、医療行為との線引きはどうなっているのか、といった疑問を抱く方も少なくないでしょう。

特に喀痰吸引や経管栄養などのケアは、一定の条件を満たせば介護福祉士が対応可能です。

本記事では、介護福祉士が行える医療的ケアの内容や条件、医療行為との違いなどを詳しく解説します。

この記事を最後までお読みいただき、現場での理解と実践に役立てましょう。

介護福祉士は医療的ケアを行える?

あごに手を当てて考える男女の介護士

介護福祉士が行える医療的ケアには、喀痰吸引や経管栄養などの行為があります。これらは医療職だけでなく、研修を受けた介護福祉士が実施できるよう法整備が進んでいます。

高齢者の増加とともに、医療的ケアが日常的に必要な利用者も多く、介護福祉士が対応できることの意義はとても大きいといえるでしょう。

ただし、医療的ケアは誰でも行えるわけではありません。厚生労働省が定めた喀痰吸引等研修の修了や、認定特定行為業務従事者としての登録、そして医師の指示のもとであることが必須です。

また、介護施設や在宅介護の現場において、緊急時の対応や安全確保にも十分な注意が求められます。制度を正しく理解し、実施に向けた準備を進めることが大切です。

医療的ケアと医療行為の違い

指を立てる笑顔の女性

介護福祉士は、法的な条件を満たすことで特定の医療的ケアを行うことが可能です。医療的ケアと医療行為は混同されがちですが、その定義は明確に異なります

この違いを理解することは、介護福祉士が適切なケアを提供し、法的リスクを回避するうえでとても重要です。

​​具体的にそれぞれの内容を見ていきましょう。

医療的ケアとは

医療的ケアとは、喀痰吸引や経管栄養といった、ある程度簡易かつ日常的に必要とされる処置を指します。

かつては医療職が担当していた行為ですが、高齢化により需要が増加し、介護職にも一部の対応が認められるようになりました。

対象となるケアには、利用者の生命維持や生活の質に関わる行為が含まれます。

このような医療的ケアを介護福祉士が行うためには、厚生労働省が定める喀痰吸引等研修を修了し、認定特定行為業務従事者として登録していることが必要です。

また、就業する事業所が登録特定行為事業者であることも条件です。これらの要件を満たしたうえで、医師や看護師の指示のもと、安全性を確保した実施が求められます。

医療行為とは

医療行為とは、医師や看護師などの医療職のみが法的に許可されている行為を指します。例えば、注射・点滴・投薬・手術・診断などが含まれます。

高度な知識と技術、そして責任が求められる行為です。これらは原則として、介護福祉士を含む介護職が行うことはできません。

一見、日常のケアに似た行為でも、医療判断が必要な場合や身体への侵襲を伴う処置は医療行為に該当することがあります。

そのため、業務範囲を超えた処置を行わないよう、正しい知識を持って区別することが必要です。また、医療行為を誤って実施した場合、法的責任を問われる可能性もあります。

介護現場では、医療行為に該当するか否かを判断する際には上司や看護師と連携し、安全性を第一に考える姿勢が大切です。

介護福祉士ができる医療的ケア

OKサインをする介護職員

2011年の社会福祉士および介護福祉士法改正により、一定の研修を修了した介護福祉士は、特定の医療的ケアを実施できるようになりました。

介護福祉士に認められている医療的ケアは、主に喀痰吸引と経管栄養の2種類です。ここでは、どのようなケアが含まれるか見ていきましょう。

喀痰吸引

喀痰吸引は、利用者の呼吸を確保するために、気道内に溜まった痰を吸引する医療ケアです。この行為は、利用者の呼吸状態を直接的に改善し、肺炎などの合併症を予防するためにとても重要です。

介護福祉士が喀痰吸引を行うには、専門的な研修を受け、安全性が高く衛生的に実施するための知識と技術を習得している必要があります。

具体的には、口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部の吸引が認められており、それぞれの部位に応じた適切な手技が求められます。

実施前には医師の指示を確認し、利用者の状態を慎重に観察しながら行うことが、安全性を重視したケアの提供に不可欠です。

経管栄養

食事

経管栄養は、口から食事を摂ることが難しい利用者に対し、チューブを通じて栄養剤を胃や腸に直接注入する医療的ケアです。

このケアは、利用者の栄養状態を維持し、全身の健康を保つうえで欠かせません。介護福祉士が経管栄養を行う場合、胃ろうや腸ろう、経鼻経管栄養など注入経路に応じた知識と技術が必要です。

栄養剤の種類や注入速度、体位の調整など細部にわたる配慮が求められ、利用者の状態や反応を常に観察しながら慎重に行う必要があります。

誤嚥や逆流、チューブの詰まりなどのリスクを避けるためにも、適切な知識と実践が求められます。

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介護士が医療的ケアを行えるようになった背景

介護士と車椅子の女性と高齢男性

介護福祉士が医療的ケアを担うようになった背景には、医療ニーズの拡大と介護現場の人材不足があります。

かつては病院や診療所で行われることが主だった医療処置が、在宅や介護施設でも必要とされるケースが増加し、それに伴い介護職の役割も拡大しました。

ここでは、これらの要因を詳しく解説します。

要介護者の増加

高齢化が進む日本では、要介護認定を受ける方の数が年々増加しています。多くの高齢者が複数の慢性疾患を抱え、医療と介護の両面からのサポートが必要です。

特に在宅や施設での生活を続けるには、日常的に医療的ケアが求められる場面が増えてきました。

こうした状況下で、日常的に痰の吸引や経管栄養といった医療的ケアが必要な方が増え、専門職である医師や看護師だけでは対応しきれない状況が生じました。

この医療ニーズの高まりが、介護福祉士が一定の条件のもとで医療的ケアを行えるようになった大きな要因の一つであり、利用者の生活を支えるうえで不可欠な存在となっています。

看護師不足

バツサインをする看護師

​​看護師不足は、日本の医療・介護現場における深刻な課題の一つです。特に在宅や介護施設では、医療的ケアが必要な利用者が増える一方で、看護師の確保が難しい状況が続いています。

このような背景から、介護の現場で必要な医療的ケアを、適切な研修を受けた介護福祉士が担うことの重要性が認識されるようになりました。

介護福祉士がこれらのケアを担うことで、看護師はより専門性の高い医療行為に専念できるようになり、利用者が必要なケアをタイムリーに受けられる体制が強化されます。

医療的ケアを実際に任されるとなると、不安を感じる方も 少なくないでしょう。

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介護福祉士が行える医療行為

指を立てる笑顔の介護職員

厳密には、介護福祉士が医療行為そのものを行うことは、医師法によって制限されています。

しかし日常生活の援助の一環として、医師の判断や指示を必要としない範囲で、医療に準ずる行為を行うことが厚生労働省によって示されています。

以下で示す項目は、医療行為ではないものとされており、介護福祉士が利用者の生活を支えるうえで欠かせないケアです。

具体的に、どのような行為が含まれるのか確認していきましょう。

爪切り

爪切りは日常生活における基本的なケアの一つですが、特に高齢者や糖尿病患者など、自分で爪を切ることが難しい方にとっては重要なケアです。通常は医療行為に該当しないものもです。

足の爪が伸びすぎると、靴に当たって痛みが生じたり巻き爪になったり、ひどい場合には感染症を引き起こすリスクもあります。

巻き爪や糖尿病などの疾患がある場合、爪切りは医療行為に該当します。

介護士が行える爪切りの条件は以下のとおりです。

  • 爪そのものに異常がない
  • 爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がない
  • 糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない
  •  

判断に迷った場合は、看護師に指示を仰ぐことが大切です。

口腔ケア

歯磨きの介助

口腔ケアは、単なる歯磨きにとどまらず、口腔内の清潔・虫歯や歯周病の予防・誤嚥性肺炎のリスク低減につながる重要な医療的ケアです。

介護福祉士が行う口腔ケアには、重度の歯周病等がない場合の歯ブラシやスポンジブラシを使った口腔内の清掃・義歯の洗浄・うがい補助などが含まれます。

また口腔内の観察を通じて、口臭や粘膜の状態、舌苔の有無などを確認し異常があれば医療職に報告することも重要な役割です。

利用者が快適な食生活を送るためにも、日常的な口腔ケアは欠かせません。

耳垢の除去

耳垢が溜まりすぎると、聞こえが悪くなったり、耳鳴りの原因になったりする場合があります。介護福祉士は、綿棒などを用いて、見える範囲の耳垢を優しく除去することができます。

ただし、耳の奥に無理に触れると鼓膜を傷つけたり、耳垢をさらに奥に押し込んでしまったりする危険性があるため注意が必要です。

安全性を優先し、痛みや不快感がないか利用者に確認しながら慎重に行うことが重要です。異常がある場合や、耳の奥の耳垢で除去が難しい場合は、速やかに医療職に相談します。

市販の器具を使用した浣腸

市販の器具を使用した浣腸は、利用者の便秘解消を目的として、介護福祉士が行うことができる医療的ケアの一つです。

これは、医師の判断や指示を必要としない範囲で、利用者の快適な排便を促すために実施されます。

市販されているグリセリン浣腸液と簡易的な注入器具を使用し、直腸に挿入して排便を促します。

実施するときは、利用者のプライバシーに配慮し、羞恥心を与えないよう細心の注意が必要です。また利用者の体調や排便状況を把握し、無理な使用は避け、異常があれば速やかに医療職に報告することが重要です。

自己導尿補助のためのカテーテル準備や体位保持

体位を変えようとする介護職員

自己導尿補助のためのカテーテル準備や体位保持は、自力で排尿が困難な方が自身でカテーテルを挿入して排尿する際に、介護福祉士がサポートできる医療的ケアです。

この行為は、医療行為と直接関わるものではなく、あくまで利用者が安全性が高く清潔に自己導尿を行えるよう補助することに重点が置かれます。

具体的には、カテーテルの準備や利用者がカテーテルを挿入しやすいような体位の保持、使用後の片付けなどが含まれます。

介護福祉士は、利用者の尊厳を守りながら自立支援の一環としてこれらの補助を行うことで、利用者のQOL向上に貢献することが可能です。

「医療的ケアの重要性はわかっているけれど、いざ任されるのは不安……」そんな声を多くの方からいただきます。

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介護福祉士が医療的ケアを行うための条件

勉強をする介護職員

介護福祉士が医療的ケアを行うためには、法に基づいた条件を満たす必要があります。これは、利用者の安全性を確保し、医療事故を未然に防ぐための重要な措置です。

ここでは、具体的にどのような条件が求められるのか見ていきましょう。これらの条件にしたがって進めることで、介護福祉士は自信を持って、利用者に必要なケアを提供できるようになります。

就業先が登録特定行為事業者である

介護福祉士が医療的ケアを行うためには、まずその就業先が登録特定行為事業者として都道府県知事の登録を受けている必要があります。

この登録は、事業所が医療的ケアを安全性に配慮して実施するための体制(指導医の配置・緊急時の対応マニュアル・職員への研修体制など)を整えていることを証明するものです。

登録を受けていない事業所では、介護福祉士が研修を修了していても医療的ケアを行うことはできません。

利用者の安全性を確保するうえで不可欠な条件であり、介護福祉士が医療的ケアに関わる際には、勤務先の登録状況を確認することが重要です。

喀痰吸引等研修を受講している

事務をする笑顔の女性

介護福祉士が医療的ケアである喀痰吸引や経管栄養を行うためには、厚生労働省が定める喀痰吸引等研修を受講していることが必須です。

この研修は、座学と実地研修で構成されており、医療的ケアに関する専門知識や技術・安全管理・感染症予防などについて深く学びます。

実地研修では医師や看護師の指導のもと、実際に喀痰吸引や経管栄養の手技を習得し、正確に実施できる能力を養います。

この研修を修了すると、介護福祉士は特定行為業務従事者としての認定を受けることができ、法的に医療的ケアを実施する資格を得ることが可能です。

研修後に認定特定行為業務従事者の認定を受ける

喀痰吸引等研修を無事に修了した介護福祉士は、それだけではただちに医療的ケアを行えるわけではありません。

研修修了後、都道府県に申請し、認定特定行為業務従事者としての認定を受ける必要があります。

この認定は、研修で得た知識と技術を公的に認められたことを意味し、登録特定行為事業者のもとで医師の指示に基づいて特定行為を実施する法的根拠となります。

認定を受けることで、介護福祉士は自信と責任を持って医療的ケアに携わることができ、利用者に安全性を重視した質の高いケアを提供することが可能です。

医師の指示のもと医療的ケアを行う

胸に手を当てる高齢者と男性の介護職員

介護福祉士が医療的ケアを行ううえで極めて重要な条件の一つは、医師の指示のもとであることです。

喀痰吸引や経管栄養などの特定行為は、利用者の病状や状態によってリスクが伴う場合があるため、医師の医学的判断と指示が不可欠です。

医師からの指示書や指示内容の記録に基づき、どのようなケアを・どのタイミングで・どのように行うのかを明確にしたうえで実施します。

また医療的ケア中に利用者の状態に変化があった場合は、速やかに医師や看護師に報告し、指示を仰ぐことが必要です。

医師との密な連携は、利用者の安全性を確保するうえでとても重要であり、介護福祉士の責任ある行動が求められるでしょう。

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知らず知らずのうちに法的に認められていない医療行為を行ってしまうリスクもあるため、職場でのマニュアル確認や定期的な研修への参加も大切です。

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