ノーマライゼーションの理念と歴史

ノーマライゼーションは北欧で生まれた理念で、誰もが地域で普通に暮らす権利を持つという考え方です。

しかし、初めて耳にした方には理解が困難に思えるかもしれません。

ここでは、ノーマライゼーションの理念と歴史について、具体的に解説します。

理念

ノーマライゼーションとは障害の有無に関わらず、誰もが社会の一員として活動に参加し、自立して生活を営める環境を目指すことです。

ノーマライゼーションの実現のために、政府は障害者福祉サービスの提供体制を充実させるように動いています。

2003年に施行された支援費制度では、行政主導ではなく、利用者が自らサービスを選択し事業者と直接契約する仕組みが導入されました。

これは障害者の自己決定を尊重し、サービス事業者との対等な関係を確立するための制度です。

支援費制度の施行により、サービスの利用者が増加し、地域生活を送るための支援が大きく進展しました。

政府は社会参加の推進として障害者へ情報提供するほか、福祉サービスの援助や社会生活力向上のための支援、全国障害者スポーツ大会の開催などに取り組んでいます。

始まりと歴史

ノーマライゼーションの理念は、1959年デンマーク法策定の過程で生み出されました。

19世紀から20世紀前半にかけて、スウェーデンでは障害者施設が造られていきましたが、その一方で不衛生な環境や虐待が横行する劣悪な状態でした。

当時の障害者は社会的排除の対象となっており、医師や専門家でさえ非人間的で差別的対応をとっていました。

しかし、徐々に障害者の社会的不平等の解消を求める運動が大きくなり、1946年にノーマライゼーションの原理を説く報告書が提出されます。

その後1959年に、福祉の発展に貢献したバンク・ミケルセンも関わるデンマーク法の前文に、ノーマライゼーションの理念が明記されました。

この概念は隣国スウェーデンにも伝わり、全員就学の制度化や居住環境の質的改善などを実現した援助法につながっています。

日本では、1981年の国際障害者年をきっかけにノーマライゼーションが注目されるようになりました。

1996年には、障害者が自分で意思を実現し自己決定を行うことを目指した、ノーマライゼーション7か年戦略が政府によって策定されました。

また、2006年4月に障害者自立支援法で障害の種別に関わらずサービスを受けられるよう一元化されたほか、自治体や大手企業でもサービスや雇用形態が見直されつつあります。

ノーマライゼーションの8つの原理

ノーマライゼーションの8つの原理は、1969年にスウェーデンのベンクト・ニィリエによって成文化されました。

8つの原理は人間としての権利を具体的に示していますが、実際にどう実現すればよいか疑問に思う方もいるでしょう。

ここでは、8つの原理を紹介しながら介護現場でどのように反映されるのか、具体的に説明します。

1日のノーマルなリズム

1日のノーマルなリズムとは、障害があっても健常者と同様に、当然の生活リズムを送ることです。

これは利用者が自分のペースで生活することを意味し、介助者の都合によって生活リズムが崩れることは、ノーマライゼーションの理念から外れています。

充実した生活を送るには、基本的な1日の生活が保障されることが重要です。

1週間のノーマルなリズム

1週間のノーマルなリズムとは、仕事や学校に行って、休日にはリフレッシュする時間を確保できる権利です。

介護現場では毎日の食事や入浴に加え、一人時間を確保してゆっくり休むなど、健常者と同じようにメリハリのある生活リズムを送ることが保障されます。

1年間のノーマルなリズム

1年間のノーマルなリズムとは、年間を通じてイベントやスポーツ、仕事などを楽しむことです。

例えば、春にはお花見、夏には海水浴といった季節のイベントを障害があったとしても楽しめる権利を保障します。

介護現場では、日常生活の支援だけでなく、季節を感じられるイベントを定期的に開催することも重要です。

ライフサイクルにおけるノーマルな発達経験

ライフサイクルにおけるノーマルな発達経験とは、障害者も健常者も同じように、さまざまな経験を経て成長していく過程を指します。

幼少期の遊び、成長してから体験する恋愛や余暇活動などを障害があったとしても経験していくことで、経験豊富で知的な人間になるでしょう。

介護現場では、レクリエーションや園芸作業など、個人の希望に沿って自主的に参加する機会を設けることが重要です。

ノーマルな個人の尊厳と自己決定権

ノーマルな個人の尊厳と自己決定権とは、障害の有無に関わらず、誰もが自尊心をもって自分の意思で物事を決められる権利です。

大人になったときに、自分の居場所や仕事などを自分自身で選択することは、生きていくうえで欠かせません。

自分の意思を決定して自ら選択したことを、職員や家族が理解して受け入れられる環境づくりが大切です。

ノーマルな性的関係

ノーマルな性的関係とは、障害をもっていたとしても恋愛感情を持ち結婚もできることを指します。

障害があるからといって、恋愛や結婚を諦める必要はありません。双方の同意があれば健常者と同様に結ばれる権利が保障されています。

介護現場でも夫婦での時間を大切にしたり、配偶者を亡くした方が新しいパートナーを見つけたりできる環境が重要です。

ノーマルな経済水準とそれを得る権利

ノーマルな経済水準とそれを得る権利とは、障害の有無に関係なく誰でも平均的な経済水準を達成するために、公的財政援助を受けられる権利です。

障害者は必要に応じて障害者年金の受給を受けることで、経済的安定を図ることができます。

得た収入は、施設にいても生活や余暇活動のために自由に使える権利があります。

ノーマルな環境形態と水準

ノーマルな環境形態と水準とは、居住を含めた生活環境を自己決定できる権利です。

障害者だからといって施設に入る必要はなく、一般住宅での生活を選択することも可能です。

本人や家族の状況と希望を優先し、一般住宅での生活や施設での生活、どちらも選択できる権利が保障されています。

ノーマライゼーションに基づく介護士の役割

ノーマライゼーションは、介護現場で利用者を尊重して支援するために重要な理念です。

しかし、理念の重要性が理解できても、介護士として具体的に何をすべきか知りたい方もいるでしょう。

介護士は個人を大切にする仕事であり、役割は理念と直結しています。ここでは、ノーマライゼーションに基づく介護士の役割を、具体的に説明します。

利用者の尊厳を守る

介護士にとって、利用者の介護をしっかり行うことと同様に重要なのは、利用者の尊厳を守ることです。

ノーマライゼーションの理念では、障害の有無に関わらず誰であっても人権と意思決定が保障されます。

障害を理由に自尊心を傷つけたり行動を強要したりすることは、ノーマライゼーションに反する行為です。

どのような障害をもっていたとしても、利用者の意思や希望を尊重して、ケアを行わなくてはいけません。

個別のケアをする

介護士は利用者一人ひとりにあわせたケアを行うことが必要です。

ノーマライゼーションは、障害をもっていても健常者同様の通常の生活を送ることを提唱しており、個別のケアを丁寧に行うことはその理念に沿っています。

どのような障害をもっているかは人それぞれです。すべての障害者が同じ支援を受けるわけではなく、個別の問題や希望を考慮して支援計画を立てる必要があります。

利用者の背景や要望にあわせて支援することで、利用者の意思を尊重しながら、一人ひとりが精神的に安定して暮らせる環境をつくることができます。

自立した生活ができるようにサポートする

介護士は、ノーマライゼーションの理念に基づき、利用者が障害があっても自立した生活を送れるよう支援する必要があります。

通常の生活を送ることを目指して、利用者が支援を受けながら地域や社会とつながり、生き生きと生活できるよう支援することが重要です。

地域のイベントへの参加や希望者の再就職など、一人ひとりが自分の価値を高める活動を希望に応じて支援します。

利用者が明るく生命力にあふれた生活を送れることは、利用者自身の生活の質をあげるだけでなく、介護の質をあげることにもつながります。

介護現場では、利用者の尊厳を守り、自立を支援する姿勢が求められます。
しかし、対応方法は理解できても「自分にできるだろうか」と不安を抱く方も少なくありません。

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介護現場におけるノーマライゼーションの実践例

介護現場では、利用者の尊厳や生活を守るために、ノーマライゼーションの理念に基づいて支援を行う必要があります。

ノーマライゼーションの必要性を理解すると、現場ではどのように実践しているのか、気になる方もいるでしょう。

ここでは、日々の業務のなかでノーマライゼーションを自然に取り入れている実践例を紹介します。

ユニットケア

ユニットケアとは、一人の職員が10人程度の少人数の利用者を担当し、個別ケアを行うことです。

2000年4月施行の介護保険制度では、認知症高齢者グループホームが保険給付サービスの一つとして位置付けられました。

この制度をきっかけに、施設でも在宅介護に近い環境での生活を目指し、個別ケアを行うユニット型施設への支援が進展しました。

ユニットケアは、生活する範囲や人数を抑えることで一人ひとりの気持ちや希望に向き合い、個性や自尊心を大切にすることで信頼関係を築くことが可能です。

また、人数が少ないため利用者同士でも関わりが深くなり、一つの家庭のような環境で生活できます。

適切なユニットケアにより、一人ひとりの個性や生活リズムに応じたケアを提供できます。

ユニットケアは、個人の尊厳を守って自己決定を重要視するノーマライゼーションの理念に沿った取り組みといえるでしょう。

着用する服を利用者に選んでもらう

着用する服の選択も、ノーマライゼーションの理念に基づく支援の一つです。

施設では、利用者が着る服を家族や職員が選んでしまうことがあります。しかし、利用者にも気分や好みで服を選びたい気持ちがあるかもしれません。

障害があってもおしゃれをしたい気持ちは健常者と同様であることが研究で明らかになっています。

好きな服を着ることは、利用者の自己決定を支えるだけでなく、満足感や安心感につながります。

利用者が介護者や職員に遠慮して意見を言えない場合があるため、希望を聞き取る努力や信頼関係の構築により、発言しやすい環境を作ることが重要です。

食器を自宅で使うものと同じにする

食器を自宅で使うものと同じにすることは、自己決定と通常の生活を重視するノーマライゼーションに基づく支援です。

利用者は施設での生活に少なからず不安を抱き、生活意欲をなくしてしまうことがあります。

自宅と同じ食器を使用することで、通常の生活に近づき、安心感を高める効果が期待できます。

また生活意欲が低くなると食欲も低下する可能性がありますが、慣れた食器を使うことは満足感や活動性を促し、食欲を維持することができるでしょう。

施設でも通常の生活を送れるよう、利用者一人ひとりの物品や環境を整えることが重要です。

ノーマライゼーションの理念に沿った支援というと、難しい対応を想像するかもしれませんが、関わり方や生活用品の調整など普段の生活で実施することができます。

大事なのは、利用者の希望を取り入れながら自立した生活に近づくように支援することです。

しかし、実際の現場で適切に対応できるか不安に思う方もいるでしょう。

私たちハッシュタグ転職介護は、求職者との信頼関係を大切にし、長期的なキャリア形成を共に考えるパートナーであり続けます。
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介護現場におけるノーマライゼーションの課題

介護現場におけるノーマライゼーションは、概念が徐々に浸透しているものの、依然として課題があります。

まず、個別的尊重とノーマライゼーションの両立です。個別的尊重とは、同じ障害をもっていたとしても活動や生活の面では異なる存在として尊重される考え方です。

介護現場では、同じような生活リズムでも、利用者はそれぞれ異なる活動をしています。

ノーマライゼーションの理念では、障害者自身の尊厳や意思決定、自立した生活を重要視しています。

すべての利用者に個別的尊重とノーマライゼーションの理念を両立した支援を行うには、対応する職員の人数も確保せねばならず、介護現場の人手不足が大きな問題です。

また、法律でノーマライゼーションが明記されているものの、社会での認知度はまだ低い状況です。

ノーマライゼーションの概念を知らず、障害者への差別や偏見を抱いている方も少なくないでしょう。

障害者に対する偏見や誤解は根強く、容易に認識を変えることはできません。啓発活動や情報提供によって認知度をあげる努力が続けられています。

さらに、政府によって活動が行われているものの、支援制度は十分ではありません。

政府や地方自治体などが協働して障害者の生活全般にわたる支援が求められており、総合的なアプローチが必要です。

福祉制度や支援サービスの充実、地域社会に展開される支援ネットワークの構築が望まれます。

理念に沿った支援が理想ですが、人手不足や制度上の制限など、理想と現実がかけ離れているのが現状です。

しかし、介護現場では利用者の尊厳を守るために理想を追求し、一人ひとりの介護士が果たす役割は非常に大きくなります。
そのため、「現場の課題を踏まえて本当にやっていけるのか」と不安を感じる方も少なくありません。

ハッシュタグ転職介護では、就職前から求職者の悩みや相談に丁寧に対応できる体制を整えており、密なコミュニケーションを通じて的確なアドバイスを提供します。

介護未経験での転職に不安がある方や、現場でスキルを発揮できるか迷っている方も、ぜひご相談ください。
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介護職員初任者研修で学べるノーマライゼーションの内容

介護職員初任者研修では、介護現場で知識やスキルを活かせるようにノーマライゼーションの概念を学びます。

ノーマライゼーションは介護職員として業務に従事し、基本姿勢を築くために重要です。

利用者が社会の一員として尊重されることを学び、利用者の尊厳を守る信念を習得します。

また身体状態や生活背景を考慮して、利用者一人ひとりのニーズに応じたケアを行う基礎を学習するのも大切です。

利用者が施設でもできるだけ自立した生活が送れるように支援するため、環境を整えるスキルも身につけます。

利用者の尊厳や個別ケアの提供、生活支援は介護の基本姿勢であり、実践的なスキル習得にも役立ちます。

ノーマライゼーションは国家資格試験に出題されるだけでなく、現場での対応力にもつながるため、学習と習得が必要な分野です。

現場では、生活のリズムを整えたり家族との関係を深めたりするほか、尊厳を守り自己決定を行えるよう支援できるようになります。

また利用者が趣味や地域活動に参加し、他者と交流することで社会的なつながりをもてるよう工夫するスキルも大切です。

初任者研修では、ノーマライゼーションの理念や実践方法を学び、介護現場が未経験でも安心感をもって知識を身につける環境がより整っています。

しかし、未経験の現場で本当に知識やスキルを発揮できるのか、不安に思う方も多いでしょう。

ハッシュタグ転職介護では、求職者一人ひとりの悩みや不安を丁寧にヒアリングし、適切なアドバイスやフォローを行える体制を整えています。

介護現場に興味はあるけれど自信が持てない方、研修で得た知識を現場でしっかり活かしたい方も、ぜひ私たちにご相談ください。
あなたが安心感を持ってスタートを切れるよう、適切な職場環境を一緒に見つけます。

ノーマライゼーションの理念を理解して介護現場で役立てよう

ノーマライゼーションは介護現場では重要な理念です。

介護士は利用者の尊厳を守り、利用者が自分の選択や判断を行って自立した生活を送れるよう、環境を整えるスキルが求められます。

生活リズムを整え、障害をもっていても健常者と同じように生活することは当然の権利であり、利用者の権利を守ることも介護士の重要な責務です。

ノーマライゼーションの理解が、利用者に対してよいケアにつながり、介護職としてのやりがいや誇りももちながら業務にあたることができます。

しかし、現場でノーマライゼーションの理念に沿った適切な利用者支援ができるか不安に思う方もいるでしょう。

私たちハッシュタグ転職介護は、求職者をキャリアパートナーとして就職する前から支援し、就職後のフォローも重視しています。

求職者と密なコミュニケーションをとることで適切に職場を提案できるほか、就職後は定期的なヒアリングで悩みやキャリアの相談を受けてアドバイスできる体制をとっています。

介護業界に転職する際の悩みや迷いも打ち明けられる環境であり、未経験の方のお役に立てるでしょう。

介護業界への転職に不安がある方、業務にノーマライゼーションの理念を活かせるかどうか迷っている方は、ぜひハッシュタグ転職介護にご相談ください。