介護職の新人が放置されやすい現場の実情

介護職の仕事は、主に利用者の身の回りの介助で、利用者に清潔に生活していただくために必要な食事・入浴・排泄の介助をしているだけで1日の大半が終わります。こうした日常業務のほかにレクリエーションの実施やイベントの準備、定期的に開かれるカンファレンスの出席といった仕事が山積しています。

福祉の世界は公的な費用も投入されているので、介護計画の作成や日常の介護記録といった書類業務も介護職の負担になっているのが現状です。通常業務だけでもたくさんの仕事を抱えているなかで、新人教育にまで手が回っていないのです。

また、利用者の中には持病を抱える方も多く、看病や受診への付き添いをしていると、あっという間に時間が過ぎて業務が遅れてしまいます。アクシデントが起きた際には、残業や休憩時間の削減で時間を確保せざるを得ません。

目の前の利用者が優先になってしまうので、何をしてよいかわからない新人は教育されないまま放置されてしまいます。新人教育の仕組み自体が整っていない職場もあり、教える立場の職員も教育を受けずに働いてきたのでその状況が続いています。

新人は教育されないまま放置されてしまうことで自責の念を抱えてしまいますが、決して新人が悪いのではありません。教育される前に新人を放置してしまう職場環境に問題があります。

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放置されてしまうことで起こる問題

何をしてよいのかわからない新人が現場で放置されると、さまざまな問題が起こります。よくわからないまま仕事をすると現場のチームワークを乱す可能性があるため、新人はむやみに動けません。

介護職には、介護職員初任者研修や介護福祉士といった資格を持って入職する新人もいますが、利用者のADLがわからないと実際の介護はできません。利用者のことがわかっていない状態で介助に入ると、怪我につながる危険性が高いからです。

高い介護スキルを持っていても、発揮する場が与えられないと使うことはできないので、放置された新人が離職したいほど辛い気持ちになるのは当然です。

人手不足を解消できず、教育体制を確立できない現場では悪循環が発生します。

仕事の進め方がわからず不安になる

介護職の1日のスケジュールは利用者が生活するペースに沿って決められています。

利用者によってADLが異なるので、スムーズにすべての利用者の介助に入れるように、順番にも気を配ってスケジュールを立てています。

スケジュールを教えてもらえず、利用者のADLもわからない状態では、介助に入ると怪我の危険性が高いため、経験のある職員でも仕事を進められません。

そういった状態が続くと新人の不安が増してしまい、その気持ちが利用者にも伝わってしまいます。

モチベーションの低下や離職の原因になる

仕事を覚えたいと思っていても、放置される日々が続けばモチベーションは下がってしまいます。自分から仕事に取り組もうとしても、教育が不十分なため失敗や注意を受けることが増え、働く意欲を保てません。

介護現場で新人が放置されてしまうのは、現場環境の問題であり、決して新人自身の資質の問題ではありません。放置が新人の離職につながり、その結果、人員不足が解消されないまま、また新たな新人を迎えるという悪循環が生まれます。

利用者へのケアの質が下がる

人手不足が解消されない状態では、利用者に対して十分なケアをすることはできません。介護職の負担が解消されていない状態が続くと、疲労からベテランも離職してしまい悪循環になります。

介護職の忙しさは利用者にも伝わり、精神状態に影響を及ぼします。特に認知症の利用者は、適切な対応がなければ問題行動につながるでしょう。新人を教育せずに放置することは、職場全体に大きな悪影響を及ぼすため、組織的な課題として施設側が新人教育への意識を高めていく必要があります。

新人が放置されやすい職場の特徴

教育体制が整った介護現場はたくさんあるので、どの職場でも新人を放置しているわけではありません。人材不足の介護業界にとって入職してくれた新人は貴重な戦力で、大切に育てたい存在だからです。

人員を確保したい施設にとって教育制度を整えることは求職者へのアピールになるので、多くの施設も積極的に指導体制を充実させています。病院が母体となっている施設では、看護師のプリセプター制度を取り入れている場合があり、企業が運営する施設では福祉以外の研修制度も充実している場合があります。

周囲が新人教育に力を入れている中、教育体制が整わない職場にはどのような特徴があるのでしょうか。

マニュアルや研修制度が不十分

介護職に限らずどのような仕事にも新人を育成するためのマニュアルが存在し、1~2年をかけて定期的に評価する体制が作られています。
新人を放置するような職場ではマニュアルが不十分であったり、そもそも存在しなかったりします。

また、未経験の新人には充実した研修制度があるかどうかも重要なポイントです。資格を持たずに未経験で働き始めた場合、研修は実際に介護業務に入る前の大切な練習の場になります。

練習の機会がないままいきなり現場に立たされると、新人は何をしてよいかわからず不安になりモチベーションの低下につながります。

研修体制の有無はしっかり確認しておきたいポイントです。

指導担当者が明確に決まっていない

新人には、介護関係の資格を持つ正規職員が指導担当者としてつく必要があり、これは新人が介護職の経験者であっても同じです。しかし教育体制が整っていない職場では、指導担当者が不在であったり、勤務時間の少ないパート職員が担当したりする場合があります。

指導担当者はメインの業務である介護に加えて接遇やマナーなども教える必要があるので、常にそばにいて指導する必要があります。明確に指導担当者が決まっていないと、新人をどうバックアップしていくかを考える職員がいないので指導体制が整いません。

また、指導担当者が適切な指導をしているかどうかを管理職が評価する仕組みも必要になります。

ベテラン職員が忙しく新人に余裕がない

新人教育が行き届かない施設では、指導を担うベテラン職員自身が業務を抱えすぎており、教育にまで手が回っていません。本来なら新人を育てることで状況は改善しますが、教育には時間がかかるため、教えたくても時間を割けないのです。

ベテラン職員自身も教育を受けずに仕事をしてきたため、どのように指導すればよいのかわからない場合もあります。新人は努力して仕事を覚えても、「こんなに忙しくなるのか」と感じ、働き続ける意欲を失って離職につながることもあります。

新人教育すらできないほどベテラン職員が忙しい職場は避けたいところですが、実際の環境は入社してみないとわからず、不安を感じてしまうのではないでしょうか。

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放置されても新人ができる工夫

新人が教育を受けられず放置されるのは、新人の責任ではなく、施設側の教育体制が整っていないからです。このような状況では、別の環境を探したくなるのは当然です。

しかし、また職場を探すことは大変なので転職を考える前にやれることをやってみましょう。ベテラン職員も、新人の頃は、誰も教えてくれない中で工夫して仕事を覚えてきました。

教育体制のない職場で放置されている状況を変えるには、自ら仕事を覚えるしかありません。つらい環境ですが、まずは工夫して仕事を覚えましょう。

積極的に質問して学ぶ姿勢を見せる

教えてもらえないからといって、何もしないで立っているだけでは、先輩職員からも利用者からも信頼は得られません。先輩職員の動きを見ながら、次に何をすべきか、どこに何があるのかを都度質問し、教わったことは必ずメモを取ります。

メモした内容は休憩中や空き時間にまとめて、次からは同じ内容を質問しなくても動けるように見返します。

また忙しい施設では職員と利用者のコミュニケーションに時間が取れないので、新人の間に利用者と積極的に会話をしましょう。時間をかけて利用者の信頼を得ておくと、業務に入る際もスムーズに進みます。

自分でできる範囲の勉強を進める

【介護職員初任者神奈川】

未経験で介護の仕事を始めた方は、独学で介護技術を身に着けることもできます。わかりやすくておすすめなのは、介護職員初任者研修の資格を取得することです。

通学で資格を取得することもできますが、社会人の場合は130時間のカリキュラムを通信と通学で組み合わせ、1〜3ヶ月程度で履修します。介護の仕事に必要な技術と知識を学べるほか、施設によっては資格保持者として毎月の資格手当が支給される場合もあります。

お金と時間をかけなくても、介護技術に関する本を読んだり自治体で開催されている在宅介護中の家族向けの介護講座に参加することも勉強です。福祉系の大学や専門学校のワークショップに参加すると、現場経験の豊富な教員からさまざまな情報を得ることができます。

また、仕事中に手が空いた時間を利用して利用者の情報を読むことも大切な勉強です。施設に入居するときにはあらゆる書類が必要になり、そのなかには利用者の個人情報が含まれています。

先輩職員の動きは利用者の1日の流れに沿っていて無駄がありません。しかし介護の現場では、体調の変化や利用者同士のトラブル、予定変更など、予測できない出来事が常に起こりやすい状況です。

先輩職員の動きを観察して学ぶ

先輩職員の動きは利用者の1日の流れに沿っていて無駄がありませんが、利用者は人間なので介護の現場はいつもとは違うことが常に起こりやすい状態です。体調の変化や利用者同士のトラブル、予定の変更など起こることはさまざまで予測することは困難です。

先輩職員の動きをよく観察し、日常の動きとイレギュラーな対応の違いを見極められるようにしましょう。

業務の流れがわかると、わからないことを質問するタイミングも理解できるようになります。先輩職員のキャラクターも分析できるので、観察のなかで聞きやすい人を見つけてどんどん質問していきましょう。

本来、新人教育は施設側が行うべきものです。それを自分から過度に負担しなくてはならない職場に不安を感じるのは当然のことです。こうした不安要素は、できれば入職前に知っておきたい方は多いでしょう。

ハッシュタグ転職介護では、医療や介護に特化した専門アドバイザーが、長く安心感を持って働き続けられる職場探しをしっかりサポートします。未経験や無資格の方でも安心感を持ってスタートできるよう、入社後のフォロー体制も整っています。

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上手に相談する方法

教育を受けられない状況を改善するためには、改善できる立場の人に現状を知ってもらう必要があります。上司も忙しさのあまり、新人が教育を受けられていない現状を把握していない可能性があります。

そのため、教育を受けられない状況や自分なりの努力、今感じていることを伝え、改善をお願いしてみましょう。

孤立感を覚えても一人で抱え込まず、どんなことでも周囲に相談することが大切です。

直属の上司に状況を伝える

現場にはリーダーやユニットリーダー、現場責任者などと呼ばれる直属の上司がいるため、まずはその上司に相談しましょう。上司が夜勤続きでほとんどフロアにいない場合、夜勤の前後で面談の時間をいただけるように声を掛けるのがおすすめです。

どうしても直接会えない場合は、手紙を書いてロッカーなどに入れておきましょう。

忙しい上司に時間を取ってもらうのは申し訳ない気持ちになるかもしれませんが、現場の職員がスムーズに働けていないのは上司の責任でもあります。しっかり相談して現状を改善しましょう。

信頼できる先輩に声をかける

先輩職員に質問しながら仕事をしていると、気にかけて教えてくれる人が誰なのかが見えてきます。信頼できる先輩職員に相談すると、現状もよくわかってくれているのでスムーズに問題解決ができる可能性があります。

たとえパートや非正規雇用で仕事上の権限を持っていなくても、先輩職員は職場のことをよく知っています。まずは『誰に相談すべきか』を聞いてみましょう。信頼できる先輩が同じフロアにいなくても、孤立している状況であっても話せる相手がいれば、悩みを相談して発信することが大切です。

改善が難しい場合は職場変更も検討する

とはいえ、新人を放置するような職場に改善を検討してくれる上司や、信頼できる先輩職員がいるとは限りません。続けることが難しいと感じたら、転職や異動を視野に入れて職場を変えることも検討してください。

せっかく就職した職場から離れるのは残念に感じるかと思いますが、介護の世界では人材不足のため、どの職場も新人を欲しがっています。自分を育ててくれない環境から離れて、教育体制の整った職場に行くのも適切な判断です。

放置されない職場を選ぶためのポイント

一度合わない職場を選んでしまうと、転職の際に何を基準にして選べばよいのかわからなくなってしまいます。ここなら大丈夫だと思って働いた職場が新人を放置するような環境だと、なおさら自分の判断に自信が持てなくなります。

次は教育体制が整っている職場を選ぶことができるように、基準となるポイントを押さえておきましょう。転職を考え始めたら、自分がどのような職場で働きたいのか、考えをまとめておきましょう。

教育体制や研修制度を確認する

未経験者を採用する介護現場では、多くの新人に来てもらえるよう、教育体制や研修制度の充実をアピールしています。気になることは面接で積極的に質問し、不安を解消しましょう。

厚生労働省では介護職員向けに、1年目の新人から8年以上勤務している管理職まですべての職員に研修を推奨しています。

研修過程には、介護福祉士や防火管理者といった資格取得を支援する内容もあり、介護職はスキルアップしやすい仕事になりつつあります。

新人フォローの仕組みがあるかを調べる

新人は放置されるのではなく、決められた指導担当者のもとで手厚く教育されることが重要です。

指導担当者が夜勤などで不在の場合は、その評価を確認している別のベテラン職員が一時的に新人教育を担当します。

新人が仕事をどこまで覚えているのかを先輩職員が共有し、互いにフォローできているのが教育体制の整っている職場です。

研修制度の確認と合わせて新人をフォローする仕組みがどのようになっているのかも確認する必要があります。

面接の際に聞いたり、募集要項をよく確認したりしておきましょう。

職場の雰囲気や人間関係を見極める

働きたい職場の様子を知るには、面接とあわせて職場見学をさせてもらうとスムーズです。実際に働いている職員の雰囲気や利用者の生活の様子を見ることで、自分が働くイメージをより明確に持てます。

利用者の生活の場に入ることになるので、職場見学を希望する場合は面接と合わせて担当者に依頼してください。入浴の時間を避けるなど、利用者のプライバシーに配慮しやすい時間帯を設定してもらうことができます。

事前に依頼しても見学を断られた場合、職場の現状を見せたくない理由があるのかもしれません。なぜ見学をさせてもらえないのかを慎重に見極める必要があります。

転職サイトや口コミを活用する

転職先を自分だけで調査するのは難しいため、さまざまな視点から意見を集めることが大切です。ネット上の口コミには職員だけでなく利用者の家族からの意見も含まれており、施設が利用者にとってどのような場所かを知るための重要な情報源になります。

たくさんある職場のなかから自分に合う場所を探すのは時間がかかってしまいますが、そんなときに便利なのが転職サイトです。

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介護職の新人は放置されても成長できる環境を見つけよう

知らない環境で何も教えられないまま放置されてしまうと不安になってしまいますが、行動すれば状況を変えることができます。

頑張っても職場の状況が変わらないのであれば、転職という手段もあります。自分の心を守りながら人生を選択してください。

もちろん教育体制の整っていない職場はありますが、安心感を持って学ぶことができる職場を選ぶことができれば、必ず介護職として成長し、生活の質を高めることができます。

ハッシュタグ転職介護は、介護職の転職をサポートする人材紹介会社です。

入社後も定期的なヒアリングを実施しているので、転職した後でもご相談に応じます。

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