介護分野でよく出る「居宅」と「自宅」

介護保険制度で使われる言葉のなかには、私たちが普段の日常会話では使わない言葉や、少し違う意味合いで使われるものもあります。

居宅と自宅という言葉の使い分けも、そういった介護保険制度で使われる専門用語の存在が、その基準を難しくしています。

しかし心配はいりません。居宅という聞きなれない言葉の意味を理解し、自宅との区別のポイントがわかれば、前向きに転職活動を進めるきっかけになることでしょう。

「居宅」の基本的な意味

まずは、居宅という言葉から整理しましょう。介護の現場でよく耳にする居宅という言葉は、主に介護保険制度で使用される専門用語です。

この言葉は生活の拠点となる場所を指します。ここで注意したいのは、居宅イコール自宅ではないということです。

介護保険制度における居宅とは、自宅だけでなく、それに準じる施設を含んだ広い意味合いで使われている言葉だからです。

具体的には、本人の家である自宅はもちろん、サービス付き高齢者向け住宅・有料老人ホーム・ケアハウスなども居宅に含まれます。

老人ホームのような施設も居宅だというと違和感があるかもしれませんが、それが介護保険制度上の区分です。

「自宅」とはどう違うのか

自宅という言葉は、介護保険制度のうえでも私たちが普段使うときと同じ意味で使われ、本人が住んでいる自分の家を指します。

自宅という言葉は、居宅という大きな括りの中のひとつだと考えれば、関係がイメージしやすいかもしれません。

つまり居宅という言葉は、自宅に加え老人ホームやグループホームなどの居住系の施設も含む、広い範囲を指すととらえればよいでしょう。

転職の際の面接で居宅サービスについて聞かれても、このポイントを押さえていれば心配はいりません。

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「居宅」と「自宅」の違いを理解するポイント

介護の現場では、利用者の生活の場所を示す場合、制度上の範囲を意味する居宅という言葉を使うのが一般的です。この言葉は頻繁に使われるとても重要なものなので、定義づけを確認しておきましょう。

介護保険制度における「居宅」

介護保険制度では、居宅とは制度の利用者が生活の拠点としているすべての場所を意味します。

具体的には、自宅やそれに準ずる場所（高齢者向け住宅・グループホームなど）を指し、そこで受けるサービスはどれも居宅サービスと呼ばれます。

制度上の必要書類やケアプランの記載、そして現場の会話でも居宅という言葉が多く出てくるので、定義を明確にしておきましょう。

生活の場としての「自宅」

一方の自宅は、あくまで日常的な意味で、自分が住んでいる家を指す言葉です。介護の仕事の現場でも、介護保険制度とは関係ない一般的な会話のなかでは、自宅という言葉も使われることがあるでしょう。

制度の書類や正式な連絡事項などでは居宅という言葉を使い、日常的な会話では 自宅を使うこともあるととらえればよいでしょう。

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居宅サービスとは？

居宅という言葉の意味が理解できたところで、次は居宅サービスという言葉を押さえておきましょう。

これは介護業界で頻繁に耳にする言葉なので、未経験者としては最初に覚えておきたい用語のひとつです。介護業界で重要といわれる、ほかの言葉と関連付けながら解説します。

居宅介護支援（ケアマネジャーの役割

居宅介護支援とは、介護サービスの計画（ケアプラン）を立て、サービス提供事業者との連絡や調整を行うサービスです。

この業務を行うのがケアマネジャー（介護支援専門員）です。ケアマネジャーは利用者や家族の希望を聞き取り、心身の状況を踏まえたケアプランを作成し、各サービス事業所と調整する重要な役割を負っています。

ケアマネージャーは介護の司令塔と呼ばれ、介護業界で働くと、ケアマネジャーの仕事の重要性を感じることでしょう。

訪問介護（ホームヘルプサービス）

訪問介護は、ホームヘルパーが利用者の居宅を訪問して行う介護サービスです。サービスの内容は、身体介護と生活援助のふたつに大きく分類されます。

身体介護には入浴介助・排泄介助・食事介助などがあり、生活援助で提供されるのは、掃除・洗濯・調理・買い物などのサービスです。

サービスの内容や頻度は、要介護度や本人の希望などを総合的に考慮して、ケアマネージャーが決定します。

訪問看護・訪問リハビリ

訪問看護は、看護師が居宅を訪問して医療的なケアを行うサービスです。基本的な健康チェックや服薬管理を行いながら、点滴や褥瘡（床ずれなど）の処置など、資格を持っていないと行えない医療行為が必要な場合に利用されます。

訪問リハビリは、理学療法士や作業療法士が利用者の居宅を訪問し、リハビリテーションを行うサービスです。運動機能の維持回復や日常生活の自立を助けることを目的としています。

通所サービスとの違い

居宅サービスとよく比較されるのが通所サービスです。通所リハビリやデイケア、デイサービスなどの言葉をよく耳にします。

違いはシンプルで、居宅サービスが利用者の居宅でサービスを受けるのに対し、通所サービスは利用者が施設に通ってサービスを受けることです。

自宅で受けられる介護サービス

居宅と自宅の違いは理解したものの、実際に自宅で受けられるサービスがわからないという方はいるのではないでしょうか。自宅で受けられる介護サービスはいくつかあります。

ここからは、居宅の中のひとつである自宅で受けられる介護サービスを整理していきましょう。

訪問介護サービスの具体例

自宅で受けられる介護サービスとして代表的なのが訪問介護です。身体介護と生活援助のそれぞれについて詳しくまとめました。

身体介護のなかで行われる、直接的な日常生活の支援は以下のとおりです。

• 食事介助：食事の補助や嚥下（飲み込み）の確認
• 入浴介助・清拭：自宅浴室での入浴や、身体を拭いて清潔を保つ
• 排泄介助：トイレへの誘導やオムツ交換
• 服薬介助：服薬の声かけや服薬確認
• 身体整容・洗面：洗顔や整髪などの清潔保持
• 衣服着脱：着替えが困難な方への支援
• 体位変換：床ずれ防止のための寝返りなどの支援
• 移動・移乗の介助：ベッドから車椅子への移動など

　

身体介護のなかには、以下のような見守りや軽度の支援もあります。

• 歩行付き添い：転倒を防ぐための付き添い歩行
• 認知症の方への支援：食事や水分摂取を促す声かけや誘導
• 入浴や更衣時の見守り：自立を促しながら安全確保のための見守り

　

次に、生活援助の主な内容は以下のとおりです。

• 掃除：居室の掃除・整理整頓
• 洗濯：洗う・干す・たたむ
• 調理：食事の準備・調理・片付け

　

このように介護を必要としている方に対して、その方が困っている部分を補うことで、日常生活全般を支えるのが訪問介護です。

自宅での福祉用具レンタル・住宅改修

介護保険でできることは身体介護や生活援助だけではありません。生活の不便を解消するための福祉用具のレンタルも含まれます。さらに、定められた予算内での住宅改修も補助の対象になります。

詳しくは以下のとおりです。

• 福祉用具レンタル：車いす・歩行器・介護用ベッド・置き型の手すりなど
• 住宅改修：手すりの取り付け、段差の解消、滑りにくい床材への変更など

　

けがを防止したり不便を解消したりするために、自宅を安全に暮らせる環境にする支援が用意されています。

「居宅」と「施設」の違いも押さえておこう

ここでさらに一歩進んで、居宅と施設の違いを整理しておきましょう。居宅という言葉の意味する範囲が広いことにより、今度は居宅と施設の区別がわかりにくくなっていると思います。

居宅と施設の違いを理解することで、それぞれのサービスが制度上どのように区別されているかが明確になるでしょう。

居宅サービスと施設サービスの線引き

居宅サービスと施設サービスを明確に分けるのは、施設に入所しているかどうかです。これは、生活の基盤をどこに置いているかがポイントになります。

居宅サービスが、利用者が自宅や自宅に準ずる場所で生活を続けながら受けるサービスであるのに対し、施設サービスは介護保険施設に入所して受けるサービスです。

自宅に準ずる場所には、サービス付き高齢者向け住宅・有料老人ホーム・ケアハウスなどの施設も含まれますが、そこで受けるサービスが必ずしも施設サービスというわけではありません。

そういった施設で受けるサービスも、生活の基盤を自宅に置いている場合は、居宅サービスという区分になるのです。

一方で、施設に入所する場合は、その時点から生活の基盤が施設に移ることになります。食事・入浴・医療的ケアまで、日常生活がすべて施設内で完結することが、施設サービスという区分になる理由です。

このように、居宅サービスと施設サービスは明確に区分され、利用の方法や費用にも大きな違いが出てきます。

施設入所の場合の費用・制度の違い

施設サービスは居宅サービスよりも包括的で、24時間体制で生活全般の援助をしてもらうことになり、医療との連携も強化されるのが特徴です。

本人や家族だけでは足りない部分を補ってもらう居宅サービスに比べ、施設サービスでは家族の負担はだいぶ少なくなり、安心感も得られます。

しかし、施設サービスは食費や居住費が加算されるため、その分費用がかかります。施設ごとにサービス内容や費用が大きく異なるため、入所前によく確認することが必要です。

居宅サービスと施設サービスの違いは制度上の区分だけでなく、利用する本人や家族の生活面に大きく影響します。それぞれの立場に立って、ベストな方法を慎重に検討する必要があるでしょう。

転職者が理解しておくべき専門用語

居宅と自宅の違い以外にも、介護業界への転職活動の際、あらかじめ知っておいた方がよい専門用語がいくつかあります。そのなかでも、面接で好印象を持ってもらうために必要なものを挙げました。

介護保険制度に関する用語には以下のようなものがあります。

• 要介護認定：介護サービスを利用するために必要な審査で要支援1・2・要介護1〜5までの区分がある
• ケアプラン：介護サービスの利用計画書でケアマネジャー（介護支援専門員）が作成する
• 居宅サービス／施設サービス：在宅や生活の場で受ける介護と入所して受ける介護に区分される

　

サービス・施設に関する用語は次のとおりです。

• 特養（特別養護老人ホーム）：要介護3以上の方が入れる入所施設で生活の場となる
• 老健（介護老人保健施設）：医療とリハビリを重視し自宅への復帰を目指す施設を指す
• デイサービス（通所介護）：日帰りで利用するサービスで入浴・食事・リハビリを提供する
• ショートステイ（短期入所生活介護）：数日間施設に泊まるサービスで家族の介護負担軽減などに利用できる
• グループホーム：認知症高齢者が少人数で共同生活を送る施設を指す

　

人や職種に関する用語の代表的なものはこちらです。

• ケアマネジャー：介護保険サービスの計画（ケアプラン）を立てる専門職
• 介護福祉士：国家資格を持つ介護の専門職
• 生活相談員：施設と利用者・家族の間をつなぐ相談役

　

介護業界ではカタカナの用語や略称なども多く使われます。まずは、よく聞く言葉の意味から押さえていくのがポイントです。

それぞれの意味を理解して違いを整理しておくことで、面接の場に限らず、仕事の現場でもスムーズなコミュニケーションが取れるでしょう。

就職の面接も、その業界によって質問の内容は大きく変わります。不安の解消には、業界に詳しい専門家に相談するのがよいでしょう。

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介護転職で役立つ「居宅」と「自宅」の知識

転職活動の時点で介護業界の用語をすべて理解している必要はありません。しかし、用語の理解は面接での強い武器になります。

居宅と自宅という言葉の意味をきっかけに、重要な用語を解説してきました。ここではもう一歩踏み込んで、面接対策も確認しておきましょう。

ケアマネジャーとの連携でよく使う用語

介護施設の職員がケアマネジャーとやり取りする際は、専門用語を押さえておくと会話がスムーズになります。特に報告・連絡・相談の場面でよく使うものを整理しました。

介護保険制度に関するものは以下のとおりです。

• 要介護度： 利用者が要支援1・2・要介護1〜5のどの区分にあるか
• ケアプラン：利用者がどのようなサービスをどのくらい使うかをまとめた計画書
• モニタリング：サービス実施状況の定期的な確認

　

現場の記録や報告関連の用語には次のようなものがあります。

• アセスメント： 利用者の心身状況や生活環境などを把握し、課題を整理する
• インシデント・アクシデント： 事故に近いことや実際に起きた事故
• バイタルサイン： 体温・血圧・脈拍・呼吸などの基本情報

　

さらに、利用者の状態を示すADL（日常生活動作）・IADL（手段的日常生活動作）や、QOL（生活の質）などの略語も憶えておくとよいでしょう。

面接で聞かれる可能性がある質問例

業界未経験の場合でも、面接では介護に関する質問をされることがあります。聞かれる可能性の高いものを挙げました。

• 居宅サービスと施設サービスの違いを説明できますか
• 訪問介護と通所介護の違いは何ですか
• 介護保険で自宅改修ができるのはどのようなケースですか

　

未経験でも、こうした質問に答えられれば大きなアピールポイントになります。最低限の用語を理解し、サービスの違いを説明できるようにしておいた方がよいでしょう。

面接対策には業界を問わず共通のものがあり、礼儀作法や受け答えの基本的なルールを押さえておくのは必須です。そのうえで、業界特有の対策も忘れてはいけません。

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「居宅」と「自宅」の違いを理解して介護の現場に活かそう

居宅と自宅の違い、そして居宅と施設の違いを整理することで、関連する介護サービスの理解が深まったのではないでしょうか。

転職を考えるあなたにとって、この知識は大きな武器になります。「用語がわからなくて不安」な状態から、「これなら大丈夫」と自信を持てるようになったのではないでしょうか。

介護は、利用者の生活を支えるやりがいのある職業です。居宅と自宅の違いを理解したことは、転職に向けた一歩を踏み出せたことになります。

もしさらに詳しく学びたい場合は、転職支援サービスや介護業界のセミナーを活用するのもおすすめです。

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