特別養護老人ホームの従来型とユニット型の特徴

特別養護老人ホームで働く前に、まずは従来型とユニット型それぞれの基本的な特徴を把握しておくことが重要です。この理解があることで、実際の職場環境や働き方をイメージしやすくなるでしょう。

従来型の特徴

従来型の特別養護老人ホームは、効率的な介護サービスの提供を重視した施設形態です。大きな特徴は、多床室（相部屋）が中心の住環境で、4人部屋が主流です。

住環境の面では、利用者が共同で使用する大きな食堂や機能訓練室があり、多くの利用者が一度に集まることができる構造です。プライベート空間は限られ、居室を共有するため、集団生活の要素が強くなります。

人員配置については、介護職員と看護職員を合わせて利用者3人につき一人以上の配置が基準となっています。従来型では、多くの利用者を効率的にケアできるよう設計されており、職員の連携やチームワークが欠かせません。

ケアの提供方法では、決められたスケジュールに沿って、まとまった人数の利用者に対して同時にサービスを提供するスタイルが一般的です。食事や入浴、レクリエーションも集団で行われることが多く、効率性を重視したケアが特徴です。

ユニット型の特徴

ユニット型の特別養護老人ホームは個別ケアを重視し、家庭的な環境での生活を実現する施設形態です。大きな特徴は、10人以下の小グループ（ユニット）単位でケアを提供する点です。

住環境については基本的に個室が提供され、各ユニットには共同生活室（リビング）が設置されています。利用者は自分の個室を持ちながら、同じユニットのメンバーと共同生活室で交流を図ることができる構造です。

人員配置では、各ユニットに専任のユニットリーダーが配置され、利用者との継続的な関係性を重視したケアが提供されます。職員は担当ユニットの利用者を理解し、一人ひとりの生活リズムや好みに合わせてサービスを提供することが大切です。

ケアの方法は、利用者の個別性を尊重し、その方らしい生活を支援することに重点が置かれています。食事や入浴のタイミングも、可能な限り利用者の希望に合わせて調整され、柔軟で個別性の高いケアが行われます。

特別養護老人ホームの従来型とユニット型の違い

従来型とユニット型では、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。住環境や人員配置・ケアの方法など働く職員にとって重要な要素を詳しく比較してみましょう。

住環境

住環境は、利用者の生活の質と職員の働きやすさの双方に大きく影響する重要な要素です。従来型では、4人部屋が基本となっており、プライバシーの確保には限りがあるでしょう。

一方で、大きな共用スペースがあるため、多くの利用者が一度に集まってレクリエーションを楽しむことができます。

ユニット型では、個室が基本となっており、利用者一人ひとりのプライバシーがしっかりと守られています。各個室の面積は10.65平方メートル以上と定められており、利用者は使い慣れた家具を持ち込むことも可能です。

各ユニットには共同生活室があり、家庭的な雰囲気のなかで利用者同士が交流できます。

職員の働く環境としては、従来型では広い範囲を移動しながら多くの利用者をケアすることになります。ユニット型では、担当するユニット内での業務が中心となるため、より集中的にケアを提供することが可能です。

人員配置基準

人員配置基準は、職員の働きやすさと業務負担に直結する重要な要素です。従来型とユニット型は、基本的な配置基準は同様ですが、実際の働き方には大きな違いがあります。

従来型は、介護職員と看護職員を合わせて利用者3人に対し1人以上の配置が定められています。夜勤は、利用者25人以下なら1人以上、26〜50人なら2人以上の配置が必要です。職員は施設全体の利用者を担当するため、幅広い知識と対応力が必要です。

ユニット型では、同じ配置基準に加えて、各ユニットに常勤のユニットリーダーを配置することが義務付けられています。ユニットリーダーには、ユニットケア研修を受講した職員を配置することが推奨されており、専門性の高いケアが期待されます。

夜勤はユニット単位での対応となるため、従来型に比べ少人数で業務を行うケースが多いようです。

ケアの提供方法

ケアの提供方法の違いは、職員の日常業務に大きな影響を与える要素の一つです。従来型は効率性を重視した集団ケアが中心となります。

従来型の場合、食事・入浴・レクリエーションなどは、決められた時間に多くの利用者が一斉に参加する形式が一般的です。職員は短時間で多くの利用者にサービスを提供するため、手際よく効率的に作業を進めることが求められます。

ユニット型では、個別ケアが基本となり、利用者一人ひとりの状態に応じた細やかな対応が求められます。職員は担当するユニットの利用者を継続的に観察し、体調変化や心理状態の把握に努めることが重要です。

職員は担当するユニットの利用者との深い関係性を築き、日常的なコミュニケーションを通じて信頼関係を構築することが主な役割です。

また、ユニット型では利用者が家事などの日常生活に参加することも重視され、職員はそのサポートも重要な業務の一つです。

認知症ケアのしやすさ

認知症ケアでは、環境の安定性と継続的な関係性がとても重要です。この点において、従来型とユニット型では大きな違いがあります。

従来型は多くの利用者が共同生活を送るため、認知症の方には環境が複雑になりやすい特徴がありますが、共用スペースで人の出入りが多く、職員が入れ替わるため、混乱を招きやすい環境です。一方で、活気のある環境は刺激となり、社会性の維持に役立つ側面もあります。

ユニット型では、少人数グループでの生活により、静かで落ち着いた環境です。同じ職員が継続的にケアを行うため、認知症の方にとって安心感のある関係性を築きやすくなります。馴染みの職員やユニットメンバーとの関係により、不安や混乱を軽減することが可能です。

職員の立場からは、ユニット型では担当する利用者の認知症の症状や状態の変化をより詳細に把握できるため、適切な対応を取りやすくなります。

プライバシーや生活の自由度

プライバシーと生活の自由度は、利用者の尊厳を守るうえで重要であり、職員の働き方にも大きく影響します。

従来型は、4人部屋での共同生活が基本のため、プライバシーの確保には限界があります。利用者の着替えや休息時間なども、ほかの利用者の存在を考慮して配慮することが必要です。しかし、ほかの利用者との交流が自然に生まれやすく、社会性の維持には適した環境といえます。

ユニット型は、個室が基本のため、利用者のプライバシーを十分に守ることが可能です。自分の部屋で自由に過ごすことができ、家族や友人の面会なども、ほかの利用者に気を使うことなく行えます。生活の自由度も高く、起床や就寝の時間も、個人のペースに合わせて調整することが可能です。

職員にとってユニット型は個別対応の機会が多く、丁寧なケアを提供できる一方で、一人ひとりの対応に時間と労力がかかります。

従来型の特別養護老人ホームで働くメリット

従来型の特別養護老人ホームで働くことには、どのようなメリットがあるのでしょうか。チームワークや相談しやすさや複数人での夜勤体制など、特に介護業界未経験の方や新人職員にとって魅力的で安心感のある、働きやすい点を中心にして詳しく解説していきます。

ほかの職員に相談しやすい

従来型のメリットの一つは、チームワークを活かした働き方ができることです。多くの職員が同じフロアで業務を行うため、困ったことがあれば、その場で先輩職員や同僚に相談できます。

特に介護業界未経験の方や新人職員にとって、すぐに相談できる環境はとても心強いものです。利用者の急変時や判断に迷う場面でも、経験豊富な職員から即座にアドバイスを受けられるため、安心感をもって業務に取り組めます。

また、従来型では看護師・機能訓練指導員・生活相談員などの多職種の職員が同じ空間で働くため、専門知識や技術を学ぶ機会が豊富にあります。日常の業務を通じて、さまざまな職種の専門性に触れ、介護職としてスキルアップを図ることが可能です。

さらに、職員同士の情報共有が活発なため、利用者の状態変化や家族の要望などを見逃すリスクが低くなります。

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夜勤も複数の介護職員で対応できる

夜勤業務は、介護職にとって重要な業務の一つですが、初めて経験する方にとっては不安も大きいものです。従来型では、夜勤を複数の職員で対応することが一般的なため、安心感があります。

従来型では、夜勤時に複数の職員が配置されるケースが多く、未経験者でも安心感をもって業務に取り組むことができます。このため、一人で夜勤を担当することが不安な方でも、同僚と一緒に業務を行うことが可能です。

夜勤中に利用者の急変や緊急事態が発生した場合も、複数の職員がいることで適切な対応を取ることができます。一人が利用者の対応をしている間に、もう一人が救急車の手配や家族への連絡を行うなど、役割分担をして効率的に対応することが可能です。

また、夜勤業務に慣れるまでの間は経験豊富な職員と一緒に業務を行うことで、実践的なスキルを身につけることができます。巡回のタイミングや記録の書き方、緊急時の対応方法など、現場でしか学べない知識や技術を習得できるでしょう。

従来型の特別養護老人ホームで働くデメリット

従来型の特別養護老人ホームにはさまざまなメリットがある一方で、働く上で注意すべきデメリットも複数存在するのも実情です。これらすべての特徴を事前に正しく理解しておくことで、自分の価値観に合った理想的な働き方を選択するための重要な判断材料となるでしょう。

多くの利用者を受け持つのが大変

従来型の大きなデメリットの一つは、担当する利用者数が多いことです。ユニット型と比較して、一人の職員が関わる利用者の数が多くなるため、業務負担が大きくなる傾向があります。

介護サービス情報公表システムによると、従来型施設では職員一人あたり担当する利用者数はおよそ2.5人とされています。そのため、多くの利用者の状態や個性を把握することが求められます。しかし、利用者一人ひとりの変化に気付いたり、個別のニーズに応じたりするのは難しくなります。

また、多くの利用者を短時間で効率的にケアする必要があるため、常に時間に追われる感覚を持ちやすくなります。業務量が多く、一つ一つのケアに十分な時間をかけることが困難な状況が生じやすいでしょう。

新人職員にとっては、覚えなければならない利用者の名前や特徴、必要なケアの内容が多いため、慣れるまでに時間がかかる場合もあります。

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施設や設備が古い場合がある

従来型の特別養護老人ホームは、建設年数が古い施設が多いということが特徴です。これは、ユニット型が推奨されるようになったのが最近であることに関係しています。

古い施設では、設備が老朽化していることがあり、介護ロボットやリフトなどの新しい設備が導入されていない場合が多いです。このため、職員の身体的負担が増える可能性があります。

また、バリアフリー設計が十分でない施設もあり、車椅子での移動が困難な箇所や段差が多い場合もあります。職員にとっては、利用者の移動介助により多くの注意と労力が必要になる場合があるでしょう。

さらに、職員の休憩室や更衣室などの福利厚生設備が不十分で、快適に働けない場合もあります。エアコンの効きが弱い、Wi-Fi環境が未整備など、現代の職場に期待される設備が不足しているケースも多いです。

ユニット型の特別養護老人ホームで働くメリット

ユニット型の特別養護老人ホームで働くことには、従来型とは異なる魅力的なメリットがあります。特に、利用者との深い関係性を重視したい方にとって適した環境といえるでしょう。

一人ひとりに寄り添ったケアができる

ユニット型のメリットは、利用者一人ひとりに対して個別性の高いケアを提供できることです。担当するユニットの利用者数は10人以下と限られているため、一人ひとりの性格や好み、生活歴を深く理解できます。

利用者の細かな変化にも気付きやすく、体調や心理的な状態の変化を早期に発見できるでしょう。これにより、より適切で質の高いケアを提供できます。

また、利用者の個別ニーズに合わせたケアプランを立てやすく、その方らしい生活を支援できます。食事の好みや入浴の希望時間、趣味活動への参加など、利用者の意向を尊重した柔軟なサービス提供が可能です。

さらに、ユニット型では利用者が家事などの日常生活動作に参加することが重視されているため、職員は利用者の能力を活かしたケアを提供できます。これにより、利用者の尊厳を保持し、生きがいや達成感を得られる支援を行えるでしょう。

信頼関係を築きやすい

ユニット型では、同じ職員が継続的に同じユニットの利用者をケアするため、信頼関係を築きやすい環境があります。毎日の関わりを通じて、利用者との間に深い絆を築けるでしょう。

利用者から名前を覚えてもらい、「ありがとう」という感謝の言葉を受ける機会も多いです。介護職のやりがいの一つである利用者の笑顔を身近に感じることができ、仕事への満足度の向上につながります。

また、利用者の家族との関係性も築きやすく、家族の要望や心配事を直接聞く機会が多くなります。家族からの信頼を得ることで、よりよいケアを提供するための情報やサポートを得られるでしょう。

継続的な関係性により、利用者の小さな変化や好みの変化にも敏感に気付けます。これにより、予防的なケアや早期対応が可能になり、利用者の健康維持や生活の質向上に貢献することができます。

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施設や設備が新しい場合が多い

ユニット型の特別養護老人ホームは、近年建設された新しい施設が多いことが特徴です。これは、ユニット型の推進が政策的に進められてきたことに関係しています。

新しい施設では、新しい介護設備が導入されていることが多いです。職員の身体的負担を軽減する機械浴設備や電動ベッド、介護ロボットなどが活用されています。これにより、より安全で効率的なケアを提供できます。

また、バリアフリー設計が徹底されており、車椅子での移動がスムーズに行える構造となっています。職員にとっても働きやすい環境が整い、腰痛予防の設備や動線の工夫が施されている場合も多いです。

さらに、職員の福利厚生施設が充実している傾向があり、快適な休憩室・更衣室・職員食堂などが整備されている場合もあります。Wi-Fi環境や冷暖房設備も整備されており、快適に働ける環境となっています。

ユニット型の特別養護老人ホームで働くデメリット

ユニット型の特別養護老人ホームにも、働く上で注意すべき構造的なデメリットが複数存在します。これらの重要な課題を事前に十分理解して、自分の性格や価値観、希望する働き方にユニット型が本当に適しているかどうかを慎重に判断することが重要です。

休みづらい

ユニット型の大きなデメリットの一つは、休暇を取りづらいことです。各ユニットに配置される職員数が限られているため、一人が休むと、ほかの職員の負担が増えてしまいます。

特に、ユニットリーダーなどの責任ある立場の職員は担当するユニットの利用者との継続的な関係性が重視されるため、長期間の休暇を取ることが難しい場合があります。急な体調不良や家族の都合で休む必要がある際も、代替職員の確保が困難になる場合があります。

また、シフト調整の自由度も低くなりがちです。ユニット内での職員数が少ないため、希望する日に休暇を取ることが難しい場合があります。連休を取りたい場合や、冠婚葬祭などの重要な行事への参加が困難になることもあるでしょう。

さらに、職員の研修参加についてもユニットを離れることでケアの継続性に影響が出るため、参加が難しくなることもあります。

呼び出しが重なると大変

ユニット型では、各ユニットで対応できる職員数が限られているため、緊急事態が複数同時に発生した場合の対応が困難になることがあります。

夜勤時間帯は特に職員数が少ないため、複数の利用者から同時にナースコールがあった場合、すべてに迅速に対応するのは困難です。一人の利用者の緊急対応をしている間に、ほかの利用者の対応が遅れてしまうリスクもあるでしょう。

また、ユニット内で利用者の体調急変や転倒などの事故が発生した場合、ほかのユニットからの応援を得るまでに時間がかかる場合があります。特に認知症の症状により行動が不安定になった利用者への対応は、一人の職員では十分に対応できない場合もあります。

さらに、職員一人ひとりの責任が重くなる傾向があり、判断を迫られる場面も多いです。従来型のように多くの職員がいる環境と比較して、相談相手が限られているため、プレッシャーを感じる場面も多いでしょう。

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従来型とユニット型の違いを知って自分に合った働き方を見つけよう

ここまで、従来型とユニット型それぞれのメリットとデメリットを解説してきました。どちらがよいかは、あなたの性格・価値観・希望する働き方によって決まります。

効率的で安定したケアを提供したい方やチームワークを重視する方には従来型が向いています。一方で、利用者との深い関係性を深めたい方や、個別ケアに専念したい方にはユニット型が適しているでしょう。

介護職への転職を成功させるためには、事前の職場見学がとても重要です。実際の職場の雰囲気や設備、職員の働き方を直接確認し、面接時には従来型とユニット型の違いを理解していることを伝えると効果的です。

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