介護事故報告書とは
介護事故報告書とは、介護現場で生じたトラブルや事故を行政に報告するために作成する書類です。
介護保険のサービス事業者は介護保険法に基づく運営基準により、サービス提供の際に発生した事故について、速やかに報告する義務があります。
報告先は、保険者である市町村や利用者の家族、利用者に関係する居宅介護支援事業者です。
事故報告の範囲は以下のとおりです。
- サービス提供による死亡や負傷事故
- 従業者による法令違反や不祥事
- 感染症や食中毒が発生もしくは疑われる場合
- 管理者が報告義務があると判断した場合
いずれの場合も事業所内で起こった事故に関して、事故発生から時間をおかずに市町村の介護保険課に直接連絡した後、事故報告書を提出する必要があります。
報告自体は5日以内に行い、原因分析と再発防止の対策を検討する義務があり、事故報告書は記載が完了したら速やかに提出しなくてはいけません。
介護事故報告書の目的
介護事故報告書は提出の義務があり、記載する目的があります。報告書は事故の責任を追求するためのものではありません。
記載して終わりではなく、職場全体の安全性や状況の改善のために重要です。
ここでは、介護事故報告書の3つの目的を明示して、具体的に解説します。
事故の再発防止
介護現場で事故が発生したら、状況や原因など詳細に分析して、再発防止に尽力しなくてはいけません。
介護施設では、安全性の高い介護を実施することを求められます。高齢化社会においては、介護現場に対する要望はさらに大きくなるでしょう。
しかし介護施設の種類によってケアを実施する職種や環境が異なるため、事故が発生した経緯や要因などは、介護現場特有のものである可能性があります。
事故が発生した際の状況を記録に残して客観的に分析し、対策を検討することで、再び同じ事故が起きないように努力することが重要です。
職員の把握と周知
事故の報告は、職員一人ひとりが事故の内容を把握し、知ることが目的の一つです。
介護現場ではさまざまな職員が利用者に接します。発生した事故を全員で共有しなければ、異なる人物が同じ事故を起こしてしまうかもしれません。
カンファレンスを開いて事故報告書を見ながら全員で共有し、原因を正しく分析して防止対策を話し合いながら、その内容も報告書に記載します。
事故報告書を後で読んだとしても、原因や対策が書き込まれているため、介護職員だけでなく他職種にも周知が可能です。
事故の隠蔽を防ぐ
事故報告書には、事故の隠蔽を防ぐ目的もあります。行政から報告を義務づけられており、報告しなければ減算や指定の効力停止などの罰則があるのが、理由の一つです。
さらに、家族へ説明をするときの材料になるほか、もし訴訟になった際は従業員を守る役割もあります。
事故報告書は利用者の命と尊厳だけでなく、従業員も守り、サービスをよりよいものにするために必要な文書です。
介護事故報告書の書き方
介護事故報告書には、事故の再発防止や職員への周知などの目的があります。目的を達成するためには、報告書の基本的な構成に沿って記載することが必要です。
ここでは、報告書の内容をわかりやすく伝えるための書き方を解説します。
事故の状況
介護事故報告書は、まず事故の状況を記します。
状況の程度として病院を受診、または施設で応急処置をしたか、病院に入院もしくは死亡だったのかも明確にします。もし死亡した際は、日付の明記も必要です。
事業所や対象者の概要
事業所や対象者の概要も記載しなくてはいけません。法人や事業所名、サービス種別や事業所の所在地を書き入れます。
対象者は氏名や年齢などの個人情報だけでなく、認知症患者や高齢者の日常生活自立度、要介護度やサービス提供開始日まで詳細に記載するのが重要です。
事故の概要
次に事故の概要として、発生日時や場所、事故の種別を記載します。事故の種別は、転倒や転落、誤嚥や医療処置関連などです。
時間は事故が発生しやすい時間帯、場所はどのような危険因子が潜んでいるかを分析する大事な要素です。
事故発生時の様子
事故発生時の様子や事故内容の詳細は、客観的にわかりやすい言葉で、できるだけ具体的に書きます。図や写真を挿入するのもよい方法です。
事故発生を察知したときの環境や様子、発生したときの利用者の状態、現場の状況を書き記します。
発生したときにどのような対応をしたのかも書かなくてはいけません。受診したとしたら方法や受診先の病院名、診断名や診断内容、検査の詳細などが必要です。
分析や事故防止対策の検討にとても重要な項目なので、しっかり記載しましょう。
事故発生後の対応
事故発生後の対応も大切な項目です。家族への連絡はいつ誰に連絡したのかを明記し、自治体や警察に連絡した場合は、それも記載します。
合わせて本人や家族、関係先などに追加対応が必要な場合はその旨を記載して、連絡漏れを防止することが大切です。
発生原因の分析
事故の詳細を書いたら、発生原因の分析を行います。本人要因や職員要因、環境要因の分析が必要です。
本人要因や職員要因はどのような行動が事故に至ったか、事故に至った要因は何かを細かく分析します。環境要因は事故が発生したときどのような環境だったのかを考えます。
各要因がそれぞれどのように発生したのか分析することで、再発を防ぐための対策が明確になるでしょう。
再発防止の検討
事故の詳細や原因を分析した後は、再発防止のための対策を検討します。内容は、対応の手順変更や環境変更、再発防止策の評価時期や結果など詳細に記載します。
取り除くことのできない原因があるときは、取り除ける原因に対して現実的な対策を考えることが必要です。
また、効果が十分でなかった対策は再検討して実行し直しますが、それでも同じ事故が発生することもあります。
その際は完全に原因を取り除けないとしても、取り除く方法を考え直した方がよい場合もあります。
いざ介護事故報告書を作成するときに、事故に対して焦りや動揺があって冷静に書けないのではと不安に思う方もいるかもしれません。
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介護事故報告書の現場で使いやすい例文
介護事故報告書に書くべき内容はおおむね決まっています。しかし、実際にどう書けば伝わるのかわからない、という方もいるでしょう。
ここでは、介護事故報告書の現場で使いやすい例文を紹介し、発生頻度の高い転倒事故と誤嚥事故を例に解説します。
≪転倒事故≫
発生状況:◯◯のとき◯◯していたところ、バランスを崩して転倒。◯◯を下にして倒れているところを発見した。
声をかけると「◯◯」と訴えあり(声をかけても反応なし)
事件発生後の対応:発生後すぐに声をかけ、安全を確認した。看護師に連絡して状態を確認してもらったところ、◯◯に痛みが生じている。
主治医に連絡し、念のため近隣病院を受診することになった。
発生原因の分析:本人要因→歩行が不安定だったが、自立歩行を希望していた。
介護者要因→◯◯という状況で、十分な見守りができなかった。
環境要因→廊下が狭く、複数人で歩行するには歩きにくかった。
再発防止策:◯◯様の歩行訓練を楽しみながらできるように工夫する。廊下の混雑を避ける対策を検討し、歩行が不安定な利用者の見守り強化を行う。
≪誤嚥事故≫
発生状況:◯◯の時間に◯◯を提供。◯◯様が◯◯を口にしたとき、激しくむせこみ、顔色が青白くなった。
事故発生後の対応:すぐに声かけして、呼吸を整えるように促してから背部タッピングを行った。看護師に報告して吸引の準備をし、主治医には電話で状況を説明した。
呼吸が落ち着き、救急搬送は不要となったが、引き続き経過観察が必要となる。家族には電話で状況説明を行った。
発生原因の分析:本人要因→◯◯様は嚥下障害があって食べやすい食事形態に調整していた。
介護者要因→◯◯様の嚥下状態に合わせた形態のものを出せていなかった。配慮が足りず、職員間の申し送りが不十分だった可能性もある。
環境要因→提供した◯◯は嚥下機能が低下している方にはリスクが高い。
再発防止策:ご利用者ごとの嚥下機能や食事形態、注意点についてリストを作成し、全職員で共有と確認を徹底する。
嚥下障害の方への提供方法を明確化するとともに、嚥下に関する職員向け研修を実施する。
なぜそのような予防策を提示したのかわかるように、各項目でしっかり明確に状況を説明することが重要です。
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介護事故報告書を上げる場合の注意点
介護事故報告書は目的や構成を明確にするとともに、記載する際の注意点も把握する必要があります。
報告書は対策を検討するものなので、記載した本人や職員だけでなく、第三者が読んでも理解しやすいようにわかりやすく書かなくてはいけません。
ここでは、介護事故報告書を通じて事故を伝えるための注意点を解説します。
事故の詳細をわかりやすく書く
事故の詳細は、簡潔にわかりやすく書く必要があります。
簡単な絵や写真などを記載することもありますが、報告書はおおむね文章なので、できるだけ状況が伝わりやすいように心がけます。
例えば、トイレで転倒したという文章だけでは、詳細がわかりません。トイレの入り口付近で身体の左側を下にして倒れていた、というような具体的な説明が必要です。
発見時の利用者の反応も記載しておくと、当時の状況が第三者にも理解しやすくなります。
再発防止策をあいまいにしない
介護事故報告書を書くときは、再発防止策をあいまいにしないことも重要です。事故の原因は一つとは限らず、多数の要因が重なっていることがあります。
客観的な事実に基づいて、さまざまな視点から多角的に分析し、推測も含めて原因をしっかり考えます。
原因の分析をしたら要因それぞれに対応した対策を検討して、事故の原因を排除したり被害を抑えたりできるように、尽力することが必要です。
考えた対策が現実的に実施できるか、事故防止に効果的かどうかを検討することが大切です。
職員全員で事故防止に取り組めるように、他職種とも話し合い、共有し合えるようにしましょう。
個人情報の記載には注意する
介護事故報告書には、利用者や家族の個人情報が記載されるため、管理には十分注意しなくてはいけません。
報告書に必要な情報のみ記載して不要な情報は書かないようにすること、氏名や住所など個人を特定できる情報は厳しく管理することが必要です。
また、施設の職員間で情報共有するときも、個人情報が漏洩しない体制を整えることが大切です。
介護現場では、報告書を丁寧に書くことも重要ですが、注意点にしっかり気をつけて二度と事故を起こさないようにすることに尽力しなくてはいけません。
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介護事故報告書をきれいに仕上げるポイント
介護事故報告書は、第三者が読んでもわかりやすく書くことが必要だと説明しました。
具体的に読みやすい報告書はどのようなものか、書くときのスキルは必要なのか、悩んでいる方もいるかもしれません。
ここでは、どのような点に気をつければ報告書をきれいに仕上げられるのか、ポイントを整理して紹介します。
5W1Hを意識して書く
介護事故報告書は、5W1Hを意識して書くと状況が伝わりやすく、わかりやすい報告書ができあがります。
5W1Hの詳細は以下のとおりです。
- When(いつ)
- Where(どこで)
- Who(誰が)
- What(何を)
- Why(なぜ)
- How(どのように)
5W1Hを押さえて書くことで伝えるべき基本情報が伝わりやすいだけでなく、内容や構成を組み立てやすいため書きやすくなります。
客観的に記載する
報告書の内容は、客観的に記載しておくことも重要です。個人の意見や感情を書くのではなく、誰が見ても理解できるように、事実に基づいた内容にします。
例えば、「〜だと思う」「〜と考えられる」という書き方は、個人の考えであり事実ではありません。
事故の分析や考察は、事実を踏まえてから他職種とも話し合いましょう。そのためにも事実をはっきり記述しておくことが大切です。
誰が見てもわかりやすい表現を使う
介護現場には専門用語がありますが、介護事故報告書を書くときは専門用語や略語は避けて、誰が見てもわかりやすい表現を使います。
簡潔な言葉を使い、文章は時系列に沿って整理します。必要に応じて箇条書きにするのも、わかりやすくするために大事な対応です。
介護事故報告書は、施設内の職員だけではなく、行政や利用者の家族などが目を通す可能性もあります。外部の人々が読むことを考慮して、理解しやすい表現を心がけましょう。
介護事故報告書は、客観的事実と分析と対策という読みやすい構成で作られており、わかりやすくするポイントを押さえて書くことが大事です。
しかし、事故に遭遇して冷静に対応せねばならないことに限界を感じる方もいるかもしれません。
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介護事故報告書を書いて意識的に再発防止に取り組む
介護事故報告書は、事故やトラブルが発生した際に作成する文書です。行政への提出が義務づけられており、施設内だけでなく利用者の家族、居宅介護支援事業者などが目を通すこともあります。
報告書は事故を終わらせるためのものではなく、次につなげるための前向きな取り組みです。記録することで、職場全体の成長を促すことができます。
この文書は重要な役割を持つため、事故の状況や対応だけでなく、事実と分析内容を明確に記載しなくてはいけません。
事故を再度発生させないよう対策をはっきり示しておくことが重要です。私たちハッシュタグ転職介護では、求職者のキャリア相談から選考対策、入社後のフォローまで行います。
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