社会福祉士とは

社会福祉士は身体的や精神的、経済的に困難を抱える方々の相談に応じ、適切な福祉サービスにつなげる社会福祉の専門家です。1987年に制定された社会福祉士および介護福祉士法に基づく国家資格で、ソーシャルワーカーとも呼ばれています。

介護福祉士が直接的な身体介護を行うのに対し、社会福祉士は主に相談業務の担当です。高齢者施設では生活相談員、病院では医療ソーシャルワーカー、学校ではスクールソーシャルワーカーとして活躍しています。

社会福祉士は、名称独占資格のため、資格を持たない方は社会福祉士を名乗ることができません。しかし、相談援助業務自体は無資格でも行えるため、専門性の証明として資格の価値が高く評価されています。

2025年3月末時点で社会福祉士の登録者数は315,589人となっており、毎年約1万人の新規登録者が誕生しています。高齢化社会の進展とともに、社会福祉士の重要性はますます高まっている状況です。

社会福祉士の仕事内容

社会福祉士の仕事は、困難を抱える方々の生活支援が中心です。業務内容は職場によって異なりますが、主要な業務は4つの分野に分類されます。

相談業務では身体的や精神的、経済的な問題を抱える方やその家族からの相談を受け、どのような支援が必要かを判断します。利用者の状況を的確に把握し、適切な福祉サービスや制度の提案が求められる専門性の高い業務です。

連携調整業務では医療機関や行政機関、教育機関など関係する組織との連携を図ります。利用者が必要なサービスを受けられるよう調整を行い、多職種間での情報共有やサービス提供の橋渡し役が仕事の一つです。

援助業務では利用者が自立した生活を送れるよう、専門的な知識と技術を用いて的確な援助や助言を行います。利用者の能力や意欲を引き出し、問題解決に向けたサポートを提供するでしょう。

記録管理業務では相談内容の記録作成、サービス利用状況の管理、関係機関への報告書作成など、事務的な業務も担当します。正確な記録は継続的な支援やほかの専門職との連携に欠かせません。

社会福祉士の収入はどれくらい？

厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、ベースアップ等支援加算を取得している事業所で勤務している常勤の社会福祉士の平均月収は352,560円、年収換算で約4,230,000円です。

出典：厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」

ここでは、社会福祉士の収入を、さらに詳しく解説します。

職種別の平均

社会福祉士は、働く分野によって収入に大きな違いがあり、職場選びが収入に直結する重要な要素となっています。職場別平均年収は、以下のとおりです。

• 保護観察所や地方更生保護委員会：6,380,000円（国家公務員）
• 都道府県や政令市、中核市：5,210,000円（地方公務員）
• 市区町村：4,360,000円（地方公務員）
• 高齢者福祉関係：約4,000,000円
• 障害者福祉関係：約4,000,000円
• 医療関係：約3,800,000円
• 学校教育関係：3,060,000円

　

続いて、役職別平均年収は、以下のとおりです。

• 経営者：5,490,000円
• 施設長：約5,000,000円
• 主任：4,950,000円
• 一般職員：3,000,000円台後半

　

行政機関勤務の社会福祉士は4,360,000〜6,380,000円で分布しており、特に公務員として働く場合は高収入が期待できます。管理職への昇進は収入アップの方法です。

年代別の平均

社会福祉士は年齢とともに収入が上昇する傾向です。「令和2年度社会福祉士就労状況調査結果」による年代別収入データを紹介します。年代別平均年収は、以下が目安です。

• 20代前半：2,800,000円
• 20代後半：3,200,000円
• 30代前半：3,600,000円
• 30代後半：4,000,000円
• 40代前半：4,500,000円
• 40代後半：4,700,000円
• 50代前半：5,200,000円（ピーク）
• 50代後半：5,000,000円

　

50代前半で収入のピークを迎える背景には、この時期に管理職に就く方が多く、責任のある立場での高い評価が収入に反映されていることがあります。勤続年数を重ねることで着実な収入向上が期待できる職業です。

男女別の平均

社会福祉士の男女別収入には差が見られます。「令和2年度社会福祉士就労状況調査結果」によると男性社会福祉士の平均年収は4,730,000円、女性は3,650,000円となっており、約1,080,000円の差があります。

この差が生じる主な要因は、管理職に就く割合や勤続年数、雇用形態の違いです。女性の場合、子育てなどのライフイベントにより非常勤での就業を選択する方も多く、平均収入に影響を与えています。

しかし、正規職員として継続的に働けば、男女間の収入差は縮小する傾向にあります。

雇用形態別

正規職員として働く社会福祉士は、安定した昇給と充実した福利厚生を期待できるでしょう。2020年度調査では正規職員が81.6%を占めており、雇用形態による収入格差が明確に現れています。

正規職員では3,000,000円以上4,000,000円未満の層が25.9%と多いです。4,000,000円以上5,000,000円未満が約20%、5,000,000円以上が約25%となっています。

正規職員の約半数が平均年収を上回る収入を得ており、経験と実績を積むことで高収入を実現できる可能性が高いです。

一方で契約職員では2,000,000円以上3,000,000円未満が32.2%となり、平均年収を上回る割合は約10%にとどまっています。雇用形態の選択が収入に大きく影響するでしょう。

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社会福祉士の収入がよい理由

社会福祉士が福祉業界のなかでも高い収入を得られる理由を、5つの主要な要因から詳しく解説します。

専門知識とスキルが求められるから

社会福祉士は高度な専門性を要求される職業です。社会福祉制度や相談援助技術、関係法令やケースワーク技術など、幅広い専門知識を習得する必要があります。

利用者の複雑な問題を分析し、適切な解決策を提案するには、単なる経験だけでなく体系的な専門知識が不可欠です。このような高い専門性が評価され、ほかの福祉職種よりも高い給与設定となっています。

国家資格のため

社会福祉士は厚生労働省が認定する国家資格であり、社会的信頼性と権威性が高く評価されています。民間資格と比較して、その価値が急激に下がることは考えにくく、長期的な職業安定性です。

国家資格保有者として専門性の証明が明確なことから、雇用者側も適切な処遇を提供する傾向があります。また、国家資格でもあることで転職時にも有利になり、よりよい条件の職場を選択しやすいのも特徴です。

需要が増加しており給与の高い職場が増えているから

超高齢社会の進展により、社会福祉士の需要は年々増加しています。特に高齢者福祉分野では人材不足が深刻となっており、人材確保のために給与水準を引き上げる事業所が増加しています。

厚生労働省の障害福祉分野の最近の動向によると、障害福祉サービスの利用者数は2017年10月の110万人から2021年10月には137.4万人と、4年間で27.4万人の増加です。このような需要の高まりに対して供給が追いついていない状況により、売り手市場となっているのが現状です。

資格手当があるから

多くの福祉や医療事業所では、社会福祉士資格に対する資格手当が設定されています。公益財団法人社会福祉振興・試験センターの調査によると、資格手当がある社会福祉士の割合は37.4%です。

平均的な資格手当は月額10,000円前後となっており、事業所によってはより高額な手当を支給するケースもあります。

資格手当は基本給とは別に支給されるため、年収ベースでは大きな差となって現れます。また昇格や昇進の際にも、国家資格保有者として優遇される傾向です。

キャリアアップの可能性が高いから

社会福祉士は多様なキャリアパスが用意されている職業です。現場での相談業務から始まり、主任や施設長、管理者へと段階的にキャリアアップが期待できます。

また実務経験を積むことでほかの資格の受験資格を得られるほか、認定社会福祉士などの上位資格も取得可能です。特にケアマネジャー（介護支援専門員）は社会福祉士として5年以上の実務経験があれば受験可能で、大幅な収入向上が期待できる資格です。

精神保健福祉士とのダブルライセンスも人気で、専門領域の拡大により就職先の選択肢が大幅に広がるでしょう。

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社会福祉士で高収入を得るためには

社会福祉士として高収入を目指すための具体的な戦略として、4つの方法を詳しく解説します。

役職に就く

管理職や役職に就くことが、収入アップの方法です。施設長や主任などの役職者は、一般職員より大幅に高い収入を得ています。

役職に就くためには現場での実績やリーダーシップ、マネジメント能力の向上が必要です。日頃から積極的に業務に取り組み、周囲からの信頼を得ることが大切です。また部下の指導や施設運営に関する知識も身につけておくことが求められます。

資格を取得する

関連資格の取得により、専門性の幅を広げ収入アップを図ることができます。特にケアマネジャー（介護支援専門員）は大幅な収入向上が期待できる資格です。

社会福祉士として5年以上の実務経験があれば受験資格を得られ、ケアプランの作成のような専門業務により高い評価を受けます。

認定社会福祉士や認定上級社会福祉士は、日本社会福祉士会が認定する上位資格で、専門性の証明として高く評価されます。精神保健福祉士とのダブルライセンスも効果的で、精神障害者への支援範囲を広げることで就職先の選択肢が大幅に増加するでしょう。

勤続年数を重ねる

多くの事業所では年功序列制度が残っており、勤続年数に応じた昇給制度です。転職を繰り返すより、一つの職場で長期的にキャリアを積むことで、安定した収入向上を見込めます。

勤続年数が長くなると基本給の上昇だけでなく、各種手当の充実や昇進の機会も増えてきます。また職場での信頼関係が築かれることで、より重要な業務を任されるようになり、収入面での評価も高くなる傾向です。

高収入が目指せる職場への転職

より高い収入を求める場合、収入水準の高い職場への転職が効果的です。公務員として働く場合は安定した高収入が期待できます。

例えば、市役所の福祉課や児童相談所などで働く社会福祉士は、公務員給与規定に基づいた安定した処遇です。大手社会福祉法人では充実した昇給制度があり、長期的なキャリア形成に適しています。

医療機関での医療ソーシャルワーカーや、社会福祉協議会での地域福祉専門員なども、高い収入を得られる職場です。社会福祉協議会とは、各自治体に設置された社会福祉の推進を目的とした非営利組織で、地域住民の福祉向上に向けたさまざまな活動を行っています。

転職を成功させるには、自分の経験やスキルを適切にアピールし、職場の特徴や求められる能力を理解することが大切です。

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社会福祉士の将来性

社会福祉士の将来性を客観的なデータと予測に基づいて解説します。

高齢化が進んでいるため需要は増加している

日本の高齢化は急速に進行しており、社会福祉士の需要は今後も拡大する見通しです。内閣府の「令和7年版高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者人口は3,624万人に達しており、高齢化率は29.3%となりました。

特に高齢者福祉分野では介護施設での生活相談員、地域包括支援センターでの専門員、在宅サービス事業所での相談員などの需要が高まっています。現在でも社会福祉士全体の約4割が高齢者福祉関係で働いており、この傾向は今後さらに強まる予想です。

また地域包括ケアシステムの構築でも、社会福祉士の専門性が重要な役割を果たすことが期待されています。多職種連携の要として、社会福祉士の存在はますます重要です。

AIやロボットに代替される可能性が低い

社会福祉士の仕事は人と人とのコミュニケーションが中心であり、AIやロボットによる代替が困難な職業とされています。

経済産業研究所の研究によると、高度な対人コミュニケーションスキルや倫理的判断を要する職業は、AI代替リスクが低いです。相談業務では利用者の複雑な感情や状況を理解し、共感的な対応が求められます。

また倫理的判断や創造的な問題解決能力など、人間特有の能力が不可欠です。複雑な感情の理解と共感や多様な価値観への配慮、倫理的ジレンマの解決、創造的な支援プランの立案などはAIでは代替が困難な領域です。

技術革新により効率化される部分もありますが、根幹となる相談援助業務は人間が担い続ける必要があり、職業としての安定性が保たれています。

社会福祉士は国家資格でもあることから、その価値や信頼性が急激に下がることは考えにくく、長期的なキャリアを築ける職業です。

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社会福祉士として高収入を目指すなら

社会福祉士は超高齢社会の社会のインフラとして不可欠な存在です。厚生労働省のデータによると、平均月収352,560円で年収約4,230,000円の水準は福祉業界では高く、国家資格としての安定性も備えています。

高収入を目指すには役職への昇進や関連資格の取得、勤続年数の蓄積、そして適切な職場選びが重要です。特に公務員や大手法人では、さらに高い収入を期待できる可能性があります。

安定した収入と将来性の高さ、多様なキャリアパスと社会貢献度の高さが、社会福祉士の大きな魅力でしょう。

将来性の面でも高齢化の進展により需要は増加し、AIに代替されにくい専門性を持つ職業として、長期的なキャリアを築けます。

社会福祉士として理想的なキャリアを実現するためには、自分の希望や適性に合った職場を見つけることが何より重要です。

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