食事介助の基本対応

食事介助の基本対応は、姿勢調整や介助方法、食べ方の変更などさまざまです。高齢者の方の食事は、誤嚥をしないように工夫をすることが大切です。

介助される方は何かしらの理由で、自力で食事を食べられないため筋力が衰えていたり、飲み込みにくかったりする可能性があります。

命を守るためにも、必要な調整を行い安全に食事をとる必要があります。

食事中の姿勢を整える

基本対応の1つ目は食事中の姿勢を整えることです。食事中に食べ物が気管に入ることを防ぐために、顔の向きや体の姿勢を調整して少し前かがみになるようにすると飲み込みやすくなります。

食事中の姿勢はテーブルのときとベッドのときで変化するので注意が必要です。まず、テーブルで食事をするときの基本姿勢を紹介します。

• 椅子や車いすに深く座る
• 軽く前傾して、顎を軽く引く
• テーブルをみぞおち位の高さに設定
• 体とテーブルの間には拳1個分の隙間をあける
• 足の裏は床にしっかりつける

　

肘や膝は90度に曲がるくらいに設定することがおすすめです。背筋はしっかり伸ばして座れるように工夫をするとよいでしょう。

次にベッドで食べる際の姿勢を紹介します。

• 背もたれは45～60度に調整
• 膝は軽く曲がった状態
• 足はずり下がらないように足の裏にクッションを設置させる
• 首が後ろに反らないように頭をクッションを入れて調整する

　

顎が上がる姿勢は、誤嚥しやすくなってしまうので、どの場面でもできる限り顎を引いて食事をするようにしましょう。

利用者の斜め前から介助する

2つ目の基本対応は、利用者の斜め前から介助することです。食事を介助する際は自分で手を伸ばせる方から、まったく自分では食べられない方まで、対象はさまざまなので本人の自立度や食べる力に合わせて介助方法を変えていきます。

食事介助のポイントは以下のようになっています。

• 利用者の斜め前から介助をする
• 介助を行うときは適度に声をかけ、相手に安心感を与える
• 一口量はティースプーン一杯分
• スプーンを口のなかに入れすぎない
• しっかり飲み込めているか確認する

　

介助される方が、麻痺がある場合はベットの上や車いすで介助を行い、口元に麻痺がある場合は麻痺がない方から食べ物が入るように調整して介助を行うとよいでしょう。

水分を多く含むものからバランスよく食べてもらう

基本対応の3つ目は水分を多く含むものからバランスよく食べてもらうことです。固形物ばかり詰め込んでしまうと、窒息や誤嚥のリスクが高くなります。

水分を多く含むものから、交互にバランスよく食べることで、口のなかの固形物の送り込みや飲み込みやすさにつながります。

次の1口を入れるときに、口のなかのものがまだ残っているようであれば、再度水分を多く含むものや水分のみを口に入れて食べ物を除去するとよいでしょう。

食事介助のスプーンの入れ方テクニック

食事介助のスプーンの入れ方テクニックは、大きく分けて3つのステップです。

• スプーンを下唇に当てる
• スプーンの前半分を口のなかに入れる
• スプーンを水平に引く

　

食べ物をスプーンに載せて、急に口のなかに入れようとしても口が開かなかったり、嫌がって食べようとしなかったりする可能性があります。

介助される側が安心感を持って食べられるように、ステップをしっかり踏んで丁寧に関わることが大切です。

スプーンを下唇に当てる

食事介助のスプーンの入れ方テクニック1つ目は、スプーンを下唇に当てることです。介助が必要な方のなかには、スプーンが近づいたことに気付けない方もいます。

また近づいてきたものが食べ物なのかどうかも認識できずに、口を開けられない場合もあります。

そういった方にスプーンを下唇に当てると、食べ物が口元にあることを認識させることが可能です。

介助される側が驚いたり、痛みを感じることがないようにスプーンを当てるときは優しく当てるようにしましょう。

スプーンの前半分を口のなかに入れる

食事介助のスプーンの入れ方テクニック2つ目は、スプーンの前半分を口のなかに入れることです。

スプーンをすべて口のなかに入れてしまうと、一口の量が大きくなってしまい窒息や誤嚥のリスクが高くなります。

また奥まで無理やり入れてしまうと、気持ち悪くなってしまう方もいるので注意が必要です。

スプーンの前半分を口のなかに入れて、上唇で取り込んで、口のなかにしっかり食べ物が入っているのを確認するのも大切になります。

途中でスプーンを引き抜いてしまうと、口のなかに入らなかったり、うまくできないことで介助される側の方が嫌がってしまう可能性があるからです。

スプーンを水平に引く

食事介助のスプーンの入れ方テクニック3つ目は、スプーンを水平に引くことです。スプーンを引く方向が上でも下でも、その動きに合わせて顔が動いてしまいます。

特にスプーンを上方に引き上げてしまうと、介助される側も自然と顔が上向きになり飲み込みにくい姿勢になる可能性が高いです。

無理な姿勢は誤嚥や窒息のリスクが高くなるので、はじめの基本姿勢を保った状態で食べられるように、スプーンを引く際にも注意が必要になります。

食事介助をするうえで覚えておきたい自然な摂食嚥下のプロセス

自然な摂食嚥下のプロセスは5つのステップです。摂食嚥下は、食べ物を認識してから口に取り込み、咀嚼して咽頭・食道を通り胃へと送り込む一連の機能を指します。

摂食嚥下の5つのプロセスは以下のとおりです。

• 先行期：口に入れるまでの段階で何をどのように食べるか判断する時期
• 準備期：食べ物を取り込み咀嚼して飲み込みの準備をする時期
• 口腔期：食べ物を咽頭に送り込む時期
• 咽頭期：嚥下反射が生じて咽頭から食道へ送り込む時期
• 食道期：食べ物が胃に運ばれる時期

　

先行期は食べ物を目で見て認識し、口に運ぶまでの期間です。この時期は目で見た情報や嗅覚からの情報で食べ物と理解して唾液の分泌を促進させます。

準備期は、食べ物を口腔内に入れて咀嚼する期間です。食塊を飲み込みやすい形態に変化させる機能で、これが不十分だと誤嚥や窒息につながります。

口腔期は咀嚼した食塊を咽頭へ送り込む期間で、舌や頬の動きが大切です。舌の運動機能が低下している方は、この段階でつまずくことが多くなります。

咽頭期は短時間の間に食塊を咽頭から食道に送り込む期間です。反射が起こるので、脳卒中や加齢により、低下することがあります。

その場合は食事の形態を調整したり、姿勢を調整したりすることで安全性に注意しながら食事を楽しめる可能性が高まります。

摂食嚥下は、さまざまな機能の動きが協調して連動しています。食事介助をする際は、相手が食べ物を認識しているのか、食べ物が口のなかにしっかり入って送りこめているか確認します。

また喉元がしっかり動いているか確認し、嚥下反射後に咳が出ていないか、喉に引っかかっているような声が出ていないかを確認することも大切です。

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食事介助で誤嚥を防ぐコツ

食事介助で誤嚥を防ぐコツは3つです。食事を介助される方が気を付けたいのは、誤嚥や窒息などがあります。

食事を自分で食べられない方は、噛む力や飲み込む力が弱くなっている可能性が高いので誤嚥しやすくなります。

姿勢や食べさせ方、食具などを調整して誤嚥を予防することが大切です。3つのコツは以下のとおりです。

• 小さく浅いスプーンを使用する
• スプーンに乗せる量に注意する
• 目や耳で飲み込みを確認する

　

ここでは、誤嚥を防ぐコツについて詳しく紹介していきます。

小さく浅いスプーンを使用する

誤嚥を防ぐ1つ目のコツは小さく浅いスプーンを使用することです。大きいスプーンを使用すると、一口量が増えてしまいます。

そうすると口のなかに取り込めなかったり、のどに送りこめなかったりする可能性が高くなり、誤嚥や窒息につながります。

小さく浅いスプーンを使用することは、口のなかに取り込みやすくするのはもちろん、一口の量が小さくなるので誤嚥や窒息予防可能です。

スプーンに乗せる量に注意する

誤嚥を防ぐ2つ目のコツは、スプーンに乗せる量に注意することです。先ほど述べたとおり、一口の量は誤嚥や窒息予防に必要なので、スプーンに乗せる量は多すぎないように調整することが大切です。

あまり少なすぎても取り込みにくく、介助される方が食べ物と認識できない可能性が高くなります。

介助される方の体の大きさや、どの程度自分でできるかによって、噛む力や飲み込みの力が変わってくるのでその方に合った適切な一口量の調整が大切です。

目や耳で飲み込みを確認する

誤嚥を防ぐ3つ目のコツは目や耳で飲み込みを確認することです。飲み込みをする際は、喉元が上がるので目で見て確認ができます。

また、ごくんと音がするので耳でも確認することができます。聴診器を持っている方は、喉元に聴診器を当てて聞いてみるのもよいでしょう。

飲み込んだ後に声を出してもらい、ガラガラ声になっていないかどうかも確認が必要です。ガラガラ声になっている場合は、喉元に食べ物が引っかかっている可能性があるので咳払いを促すとよいでしょう。

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食事介助を行う際の注意点

食事介助を行う際の注意点は3つです。食事介助は介助される側が食べやすいように、かつ安心感を持って食事ができることが大切です。

そのためには、以下の3つの注意点を念頭に置いておくとよいでしょう。

• 立ったまま介助しない
• 急かさない
• 食事時間を長くしすぎない

　

それぞれの注意点について詳しく説明していきます。

立ったまま介助しない

1つ目の注意点は、立ったまま介助しないことです。食事介助をする方は、介助される方と同じ目線になるように椅子に座って行います。

介助をする方が立ったまま行うと、介助される方は視線が上方に向くので顎が上に上がってしまいます。

上に上がってしまうと、誤嚥や窒息のリスクが高くなるので、できるだけ顎を引いて食べる姿勢を保てるように対面で行うことが大切です。

また、介助する方が立ったままだと、介助される側が相手の表情や様子が見えないことから不安に感じてしまうこともあります。

安心感を持って、食事の時間を楽しめるように工夫が必要です。

急かさない

2つ目の注意点は、急かさないことです。急いで食べさせようとすると、窒息や誤嚥のリスクが高くなります。

何らかの理由で食事を自分で食べられない方は、筋力が低下していたり、食べ物を認知できなかったりします。

その場合、食べ物を噛むのも飲み込むのも時間がかかってしまう可能性が高いです。そのため、必要な時間をしっかり確保し、本人のペースで食べられるように声掛けや一口量の調整を行っていくとよいでしょう。

また急かされすぎると、介助される方も食べたい意欲が下がってしまうので、あまり急かしすぎず関わっていくことがおすすめです。

食事時間を長くしすぎない

3つ目の注意点は、食事時間を長くしすぎないことです。目安は30分程度としており、それ以上かかってしまうと、人によっては疲れや集中力の低下から食事の意欲がなくなってしまう可能性があります。

人によって食事への意欲を保ち続けられる時間は変わってくるので、自身が担当する方はどうなのか確認しておくとよいでしょう。

また、よく食べる方や元々あまり食に興味がない方などさまざまなので、そういった視点ももっておくとよいでしょう。

長くても1時間以内には食事を終了できるように支援を行うことがおすすめです。

食事介助のコツを覚えて、活躍したい方にはハッシュタグ転職介護がおすすめです。わたしたちは、人としっかり向き合う人材会社として求職者の本音を理解したうえで、支援を行っています。

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食事介助で困ったときの対処法

食事介助を行うとさまざまな困った場面に遭遇することはありますが、今回は3つの場合を想定して解説を行っていきます。

• 口を開けてくれない場合
• 飲み込みが悪い場合
• 認知症による拒否反応がある場合

　

それぞれの場面についての対処法を念頭に置き、実際の場面で活かせるように、参考にしてみてください。

口を開けてくれない場合

1つ目は口を開けてくれない場合です。食事介助で、口を開けてくれない原因は3つあります。

• 自分の意思で開けない
• 意思疎通ができず開けられない
• 口を開けたくても開けられない

　

自分の意思で開けない場合は、今食べたくないという気持ちの現れなので、なぜ食べたくないのかを確認する必要があります。

また、メニューが嫌な場合もあるのでまずは食べられるものから、提供しておくとよいでしょう。あまりにも食べない場合は、少量本人の好きなものを交えるなど工夫を検討してみるのも1つです。

意思疎通ができず開けられない場合は、声掛けをしても何を言われているのか分からず、食べ物が近づいてきている認識もないため口が開けられません。

その場合は視覚や触覚など、別の感覚を使うとよいでしょう。視覚であれば食べ物を視界に入るように設置して、声掛けを行い近づけると口が開く場合もあります。

触覚であればスプーンを下唇に当てて、食事が近づいてきたという合図を送ると、自然に口を開けられる場合もあります。

それぞれの原因によって対応方法も変わってくるので、確認してみるとよいでしょう。

飲み込みが悪い場合

2つ目は飲み込みが悪い場合です。介助される方は、飲み込みの力が弱く食事中にむせたり、喉に残ったりすることがあります。

そういった方の介助は、特に誤嚥に注意しなければなりません。対処法は、姿勢を整えること・喉元の音を確認すること・飲み込んだ後の音声を確認することの3点です。

まず、椅子に座るよりもリクライニング姿勢のほうが飲み込みやすいです。リクライニング姿勢に調整するときは、頭に枕を当てて顎を引くような姿勢にするとよいでしょう。

また聴診器を使って喉元の音を確認したり、飲み込んだ後にむせがないか、声がガラガラ声になっていないか確認することも大切です。

飲み込んだ後に、あまりにもむせていることが多い場合は、食事の形を変えたり姿勢を調整することがおすすめになります。

認知症による拒否反応がある場合

3つ目は認知症による拒否反応がある場合です。この場合は、近づいてくるものが食事と認識していない可能性が高いです。

つまり何が近づいてくるか分からない、また食べ物と分かったとしても食べ方が分からないなどが原因として考えられます。

まず何が近づいてくるか分からない場合は、提供する食事を目の前に置いて、声掛けをしながら介助を行うとよいでしょう。

声掛けの内容は、「これは味噌汁ですよ」「これは魚ですよ」と近づけながら食べ物の名前を伝えて理解を促すとよいでしょう。

次に食べ方が分からない場合は、食器の数を減らして今何を食べるのか分かりやすくし、一緒に食べられる場合は食べる様子を見せて伝えることがおすすめです。

また食堂のような周りに食べている方がたくさんいる場所でも食事をするのも、提供されている同じものを食べるんだなという意識が高まり、食事動作の理解につながる場合もあります。

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食事介助のスプーンの入れ方をマスターして頼れる介護士になろう

今回は食事介助のスプーンの入れ方についてご紹介しました。食事介助は介助される方の命を握る大切な仕事です。

誤嚥や窒息に気を付けるのはもちろん、介助される方が食事を楽しみ、信頼関係のもとで穏やかに過ごせるように関わる必要があります。

また、飲み込みが悪い方や食事自体を拒否する方は姿勢を調整したり、食べるものを見せたり聞かせるなどほかの感覚の刺激を取り入れて理解を促すとよいでしょう。

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