介護現場の暑さ対策はどうする?

介護職員と利用者双方にとって、暑さ対策は安全なケアや業務効率の維持に直結します。
2025年6月から、厚生労働省が定める指針に基づき、現場における熱中症対策が法的に義務化されました。義務化により求められる主な内容は、以下のとおりです。
- エアコン・冷房設備の整備
- 室温・湿度管理の記録
- 職員の定期的な休憩・水分補給の時間確保
- 熱中症リスクを知らせる掲示や研修
介護施設も当然対象となり、適切な環境整備を怠ると、行政指導や責任問題に発展する恐れもあります。
そのため、介護現場の暑さ対策は、現場全体で意識的に取り組むことが重要です。
介護現場で暑さを感じる原因

施設内外の温度上昇は、以下のような環境要因と人の動きによって起こります。
- 機器の発熱
- 換気不足
- 屋外作業
さらに、フロア内や屋外での介助時には、体力を大きく消耗します。介護現場で暑さを感じる原因を知り、改善できる点を見つけましょう。
屋内での原因
介護施設では、利用者の体調維持を優先し、室温を高めに設定することがあります。高齢者は、体温調整機能の低下により暑さを感じにくいためです。
その結果、室温や湿度が高くなることが多く、蒸し暑さを感じやすくなります。
窓や扉を閉め切ったままにしておくと、空気が室内に留まり湿度と室温がさらに上昇します。特に、日当たりのよい南向きの部屋や窓際は、太陽光の熱が伝わりやすく熱気がこもりやすい場所です。
屋内で暑さを感じるのは、利用者に合わせた温度調整や換気不足などで室内環境が変化し、体感温度が上がることが原因です。
屋外での原因
屋外では、直射日光を受けることで、体表面の温度が瞬時に上昇します。特に移動時や散歩中は、顔や首筋に強い日差しが当たり続けるため、熱中症リスクが高まります。
アスファルトやコンクリートからの照り返しも、屋外で体感温度が上昇する原因の一つです。
塗装面は日中に高温となり、太陽などの熱をコンクリートが吸収し蓄えた後、周囲に放出します。そのため、日陰が少ない通路や駐車場では、より暑さを感じやすくなります。
介護現場で見直すべき暑さ対策

介護現場での暑さ対策は、以下4つの視点から見直すことが大切です。
- 室温管理の徹底
- 冷房機器の活用
- 服装の見直し
- 施設全体の暑さマネジメント体制
ここでは、すぐに始められる改善策を紹介します。管理者や現場全体で取り組む姿勢も重要です。
室温管理の徹底
管理の目安は、室温は26〜28度、湿度は70%以下です。この条件を保つには、エアコンの定期的な点検やフィルターの掃除が欠かせません。
窓からの日差しを遮る遮光・遮熱カーテンやブラインド、遮熱フィルムなどを使用することで室内温度の上昇を防ぎ、冷房の負担を軽減できます。
湿度がこもると体感温度が上がりやすいため、エアコン運転中でも10〜15分おきに窓やドアを数分間開放し、室内の熱気を排出しましょう。
換気扇と窓を同時に使うことで、室内の空気を排出し外気を取り込み、効率よく空気を循環させることができます。
冷房機器の活用

エアコンだけでなく、サーキュレーターや天井扇風機を併用し部屋全体の空気を循環させることで、室内の温度ムラをなくして効率的に空間を冷やせます。
快適な室内環境を維持するためには、室温のこまめな調整が不可欠です。
壁掛け型のリモコンは、スタッフが迅速に確認できるよう目につきやすい位置に配置し、利用者の体調や日差しによる室温の変化に応じて、こまめに調整しましょう。
服装の見直し
服装はリネンやメッシュ、ドライ素材などさらりとした着心地を保ち、涼しく感じる素材を選びましょう。
リネンは、繊維構造による高い通気性と、優れた吸水性・速乾性があります。熱伝導性が高いため、体温を効率的に逃がしてくれる効果もあり、天然素材特有の清涼感が特徴です。
メッシュは、網目状の構造により風通しがよいため、通気性と速乾性がある素材です。ただし、吸水性はそれほど高くありません。
それを解決するのが、ポリエステルなどの吸水性を高める化学繊維で作られているドライメッシュです。
ドライ素材は吸汗速乾性に優れた素材で、汗をかくシーンに適しています。機能性があり、軽くて動きやすく洗濯などのお手入れも簡単です。
色は白やベージュなど熱を吸収しにくいものを選び、制服指定がある場合は、ひんやりとした感覚がある接触冷感インナーを活用するのも効果的です。
施設全体の暑さマネジメント体制

施設全体の暑さマネジメント体制を構築するには、以下の項目を実施することが重要です。
- 全体会議での暑さ対策共有
- 温湿度計の設置
- 勤務前後の体調チェック
熱中症対策情報の共有やエアコンの適切な運用、換気方法、休憩の取り方など施設全体で統一したルールを定めます。
各フロアや熱中症リスクの高い場所(浴室や脱衣所など)に、温湿度計を設置することも有効です。
職員の勤務開始時と終了時に、体調(だるさ・めまい・吐き気など)に異常がないかを確認します。体調不良を訴える場合は無理をさせず、休憩や早退を促すなどの対応を行います。
職員の安全と利用者の健康を第一に考え、環境管理を徹底している職場で働きたい方もいるでしょう。
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介護現場でおすすめの熱中症対策

介護現場では、以下の熱中症対策がおすすめです。
- 冷却グッズの活用
- こまめな水分と塩分補給
- 定期的な休憩時間の確保
ここでは、日常的に取り入れられる対策を、介護現場特有の工夫と合わせて紹介します。無理なく続けられる熱中症対策を見つけましょう。
冷却グッズの活用
熱中症リスクを減らし安全性と作業効率を高めるため、冷却グッズを活用しましょう。具体的には、以下のグッズがおすすめです。
- 冷感タオル・スプレー
- 保冷剤
- ネッククーラー(バッテリー式)
- 冷却ベスト
体温を効果的に下げるためには、首や脇の下、太ももの付け根などを冷やすのがおすすめです。保冷剤を使用するときは、肌に直接触れないようにタオルを巻いて対策しましょう。
冷却グッズを選ぶときのポイントは、冷却効果と持続時間です。冷やすのは手間がかかり、日傘なども場合によっては片手がふさがるため、業務に支障をきたすことも考えられます。
介護の現場では力仕事が多いため、着用・装着するだけで効果があるなどの使いやすさも考慮しましょう。状況に応じて、アイテムを使い分けるとより効果が期待できます。
こまめな水分と塩分補給
汗をかくことで水分や塩分が失われやすく、短時間でも体温調整機能が追いつかなくなり、暑さを強く感じる原因となります。
喉の渇きを感じる状態は、身体が脱水状態に傾き始めているサインであるため、喉が渇く前に飲みましょう。特に、高齢者は喉の渇きを感じにくいです。
スポーツドリンクや経口補水液で水分を補給し、塩分を含むタブレットの併用もおすすめです。
定期的な休憩時間の確保

忙しくても5分の休憩時間を確保することが、事故防止につながります。
忙しいと休憩を忘れてしまったり、取りづらいと感じることもあるため、管理者が積極的に休憩を促すことが大切です。
休憩時間をスケジュールに組み込んだり、ほかのスタッフと連携して交替で休憩できる体制を整えたりすることで、スタッフ全員が無理なく体調を維持できます。
必要なときに休憩を取るには、コミュニケーションをとりやすい職場がおすすめです。
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介護の場面別暑さ対策と注意点

介護現場では、主に以下のような場面で暑さ対策が必要になります。
- 入浴介助
- 外出や送迎
- 訪問介護
ここでは、それぞれの場面に応じた対策を紹介します。利用者の安全確保を第一にした工夫をしながら、担当業務に合った対策を実践しましょう。
入浴介助の場合
高温多湿な浴室や脱衣所では、汗が止まらず体力も奪われがちになります。利用者の安全確保には、細やかな気配りや体力が求められ、想像以上にエネルギーを消耗します。
入浴介助を始める前に、飲み物を携帯しこまめに水分補給をしましょう。浴室や脱衣所は湿度が高く、熱気がこもりやすい場所です。
脱衣所に冷房や送風機を設置したり、浴室換気扇を付けて室温・湿度を管理したりすることが重要です。
暑さで体温が上がりすぎないよう、介助前後に保冷剤で身体を冷やすなどの工夫をし、湯温は通常より低めに設定しましょう。
入浴時間を、午前中など涼しい時間に合わせて調整することもおすすめです。
外出や送迎の場合
外出や送迎は、日差しが強い時間帯(11〜16時)を避け、早朝や夕方に行いましょう。
移動ルートは日陰の多い場所を選び、空調機能を備えた服や帽子の活用、凍らせたペットボトルを持ち歩くのもおすすめです。
送迎開始直後は車内が特に暑くなっているため、車内の温度管理も徹底しましょう。
- 車が動き出したら窓を全開にする
- 外気を取り込むモードでエアコンを付ける
- 5分くらい走行したら窓を閉めて循環するモードでエアコンを使う
上記の方法で、車内の温度をできるだけ早く下げることができます。
訪問介護の場合

徒歩の場合は日傘、運転に支障が出ないよう自転車で移動する場合は帽子などアイテムを使い分け、ネッククーラーや手持ちの扇風機などを併用しましょう。
移動後に汗をかいた服をそのまま着ていると、汗が冷えて夏風邪などの原因となるため、冷え防止も重要です。念のため、汗を拭くためのタオルや替えのシャツなどを持参しましょう。
利用者の自宅の環境の確認も大切です。エアコンを使わない方に対する声かけや、換気・扇風機の活用を促しましょう。
訪問介護は通常一人で行うため、相談できる環境であるとよいでしょう。介護経験者の場合、即戦力として評価される可能性があります。
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介護現場で夏を快適に乗り切るポイント

介護現場で夏を快適に乗り切るには、以下を実践することが効果的で、職員の自己管理も大切です。
- 夏バテ予防効果のある食材を食べる
- 汗と紫外線の対策を行う
- 暑さに負けない身体を作る
ここでは、夏場を健康に過ごすためのコツを紹介します。暑さに強い体づくりとセルフケアを意識して取り組みましょう。
夏バテ予防効果のある食材を食べる
夏バテ予防には、汗で失われがちな水分やカリウム、疲労回復を助けるビタミンなどの栄養素を含む夏の野菜や果物がおすすめです。
身体の熱を下げたり、体内の水分量のバランスを整えてくれたりする効果が期待できます。具体的には、以下のような食材です。
- 野菜:トマト・レタス・きゅうり・なす・セロリ
- 果物:スイカ・パイナップル・レモン・柿・バナナ
スタミナをつけるには、ビタミンB1が豊富な豚肉と合わせてビタミンB1の吸収を高めるにんにくやニラ、玉ねぎを食べるのもよいでしょう。
食欲がないときには、消化に優しいそうめんに梅干しを加えたり、お酢を使ってさっぱりとした味付けにしたりすると食べやすく疲労回復効果もあります。
汗と紫外線の対策を行う
汗そのものは無臭ですが、菌が繁殖すると匂いが発生するため、汗を抑えることができる制汗剤の使用が有効です。
制汗剤にはさまざまな種類がありますが、肌に直接塗り込む液体のロールオンタイプや固形のスティックタイプは、特に汗を抑える効果が期待できます。
紫外線対策としては、日焼け止めを外出する30分前に塗るとベストなタイミングで効果が発揮されます。
サングラスやUVカットメガネで、眼から入ってくる紫外線をカットできるので積極的に活用しましょう。
暑さに負けない身体を作る

夜勤のある介護士は、体内時計の乱れによる睡眠不足や疲労感から、夏バテになりやすい傾向があります。
そのため、質のよい睡眠をとることが大切です。就寝前には、リラックス効果のあるハーブティーやホットミルクを飲んだり、軽いストレッチを取り入れたりするのが効果的です。
ただし、休日に長時間寝だめをするとかえって体内時計が狂ってしまい、身体がだるくなるなど逆効果になるので注意しましょう。
日頃から適度な運動で汗を流す習慣は、暑さに負けない身体を作るだけでなく、腰痛の予防にもつながります。運動がむずかしい場合は、足湯や半身浴などで発汗を促すのもよいでしょう。
働く時間が不規則だと生活リズムを整えるのが難しいという方は、夜勤がない職場で働くことが可能です。
介護業界には、正社員やパートのほか希望する曜日や時間帯に働ける登録ヘルパーなど、多様な雇用形態の選択肢があります。
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暑さ対策を徹底している介護現場で働こう

介護現場で夏を快適に乗り切るには、施設全体での暑さ対策や職員の自己管理が大切です。
室温管理を徹底し、水分補給や冷却グッズを活用して体温調整を行うだけでなく、生活習慣の改善など職員一人ひとりが健康を維持する意識も欠かせません。
入浴介助・外出・送迎・訪問介護など、それぞれの場面に応じた対策が必要です。
職場と個人の双方からのアプローチで、利用者も職員も安心感を持てる環境づくりに取り組みましょう。
暑さ対策や職員の健康管理を重視する施設は、職場環境の整備やチームケアの意識が高いです。
ハッシュタグ転職介護では、離職リスクを軽減するため、企業に対して求職者が働きやすさを考慮した採用アドバイスを行いミスマッチのないよう努めています。
資格取得支援やキャリアアップの制度が整った環境、パートから正社員登用できる可能性のある職場など、将来のキャリアを見据えた転職をサポートします。
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