看取りケアプランについて

看取りケアプランとは、人生の最終段階を迎えた利用者が穏やかに過ごせるよう支援する計画書です。

厚生労働省が定める人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインに基づき、利用者本人の尊厳を守りながら、医療と介護が連携してケアを提供します。

看取りケアプランは一般的なケアプランとは異なり、回復を目指すのではなく、残された時間を安心感を持って過ごすことを目的とします。

看取りケアとは

看取りケアとは、医師が回復の見込みがないと診断した利用者に対し、最期まで本人らしく過ごせるよう支援することです。

具体的には、身体的な苦痛の緩和・精神的な安定・家族への支援を含む総合的なケアを指します。

多くの介護施設で看取りケアが提供されるようになった背景には、2006年に看取り介護加算を開始した介護保険制度があります。

看取りケアは、利用者と家族の意向を丁寧に聞き取り、医師・看護師・介護職員が協力してケアを行うのが特徴です。

介護職は利用者に近い存在として、日常の変化に気付き、声かけや身体ケアを通じて穏やかな時間を支える重要な役割です。

ターミナルケアとの違い

看取りケアとターミナルケアは似た意味で使われますが、厳密には異なります。ターミナルケアは医療的な処置を含む終末期医療全般を指し、主に医師や看護師が中心となって行います。

看取りケアは介護職が中心となり、日常生活の支援を通じて利用者の尊厳を守るケアです。

ターミナルケアでは、疼痛管理や医療機器の使用など医療的な側面が強調されます。一方、看取りケアでは利用者の気持ちに寄り添い、穏やかな環境を整えることに重点が置かれます。

介護施設では看取りケアという言葉が一般的に使われ、医療機関ではターミナルケアという用語が使われる傾向です。

一般的なケアプランとの違い

一般的なケアプランは、利用者の自立支援や機能維持・向上を目標としています。リハビリテーションや活動への参加を促し、できることを増やしていく視点で作成されます。

一方、看取りケアプランは回復を目指すのではなく、残された時間をいかに穏やかに過ごすかが大切です。

目標設定も苦痛なく過ごせることや、家族と穏やかな時間を過ごせることなどにより、提供するサービスも身体的・精神的な安楽を優先します。

また、看取りケアプランでは医師による定期的な診察や看護師との密な連携が不可欠となり、多職種協働がより重要になります。

計画の見直しも、利用者の状態変化に応じて柔軟に行われる点が特徴です。

身体的看取りケアの内容

身体的な看取りケアでは、利用者の苦痛を少なくし、快適に過ごせる環境を整えることが優先されます。

医療職と介護職が協力し、疼痛管理や清潔保持、適切な体位変換などを行います。

看取り期には食事や水分の摂取が困難になることも多く、利用者の状態に合わせた柔軟な対応が重要です。

介護職は日々の観察を通じて利用者の変化に気付き、医療職と連携しながらケアを提供します。

疼痛管理・症状緩和・呼吸苦対応

看取り期は、痛みや呼吸困難などの症状が現れる時期です。疼痛管理では医師の指示のもと、鎮痛剤の適切な使用や温罨法などを行います。

介護職は利用者の表情や仕草から痛みのサインを読み取り、速やかに看護師や医師に報告することが重要です。

呼吸苦がある場合は、上体を起こした姿勢を保ち、酸素吸入などの医療的処置を行います。

また、静かな環境を整え、不安を和らげる声かけも大切です。症状緩和では利用者の訴えに耳を傾け、楽な体位を工夫したり、室温や湿度を調整したりして少しでも快適に過ごせるよう配慮します。

清拭・体位変換・皮膚ケアなどのケア

清潔を保つことは、利用者の尊厳を守り、感染予防にもつながる重要なケアです。看取り期には入浴が難しくなるため、清拭や部分浴で身体を清潔に保ちます。

清拭の際は利用者の負担にならないよう、温かいタオルを使い、優しく丁寧に行います。

体位変換は褥瘡予防のために2時間ごとを目安に実施しますが、利用者の状態に応じて頻度や方法を調整することが大切です。

皮膚の観察も欠かせず、発赤や傷がないか確認し、必要に応じて保湿ケアを行います。口腔ケアも重要で、口内を清潔に保つことで誤嚥性肺炎を予防し、少しでも快適に過ごせるよう支援します。

水分・栄養調整と経口摂取の配慮

看取り期には食欲低下や嚥下機能の衰えにより、食事や水分摂取が困難です。無理に摂取を促すのではなく、利用者の意思や身体の状態を尊重することが大切です。

少量ずつでもお口から食べられるよう、とろみをつけたり、好みの食べ物を提供したりして工夫します。水分補給では、スポンジブラシでお口を潤したり、氷を舐めてもらったりすることも有効です。

医師や管理栄養士と相談しながら、利用者にとって適切な方法を選択します。家族が食事介助に参加することで、最期の時間をともに過ごす貴重な機会にもなります。

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看取りケアは特別な医療スキルがなくても、利用者に寄り添う温かい気持ちがあれば、十分に活躍できる分野です。

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精神的看取りケアの内容

精神的な看取りケアでは、利用者が不安や恐怖を感じることなく、穏やかな気持ちで過ごせるよう支援します。

死を前にした利用者の心は揺れ動き、孤独感や不安を抱えることも少なくありません。

介護職はそばに寄り添い、言葉だけでなく、温かい手のぬくもりや優しい眼差しで安心感を与えます。

精神的ケアには特別な技術は必要なく、ただそばにいて、利用者の気持ちを受け止めることが何より大切です。

本人の安心感を高める声かけ・傾聴

看取り期の利用者は、これまでの人生を振り返り、家族への思いを語りたいという気持ちを持つことがあります。

介護職は忙しいなかでも、利用者の話にじっくり耳を傾ける時間を作ることが重要です。

「ゆっくり休んでくださいね」「そばにいますよ」といった安心感を与える声かけは、利用者の心を落ち着かせます。

否定や説得はせず、利用者の思いをそのまま受け止める姿勢が大切です。

また、意識がはっきりしない状態でも、声かけは続けます。聴覚は最後まで残る感覚とされており、優しい声は利用者の心に届いています。

プライバシー確保・静かな環境づくり

看取りケアでは、利用者のプライバシーと尊厳を守ることが重要です。個室や静養室を利用し、ほかの入居者の視線や音が気にならない環境を整えます。

カーテンやパーテーションで空間を区切り、家族が付き添いやすい環境も作ります。静かな環境は利用者だけでなく、家族にとっても落ち着いて最期の時間を過ごせる大切な要素です。

室内の照明はやわらかく調整し、騒音を避けることで、穏やかな雰囲気を保ちます。

利用者の好きな音楽を小さく流したり、家族の写真を飾ったりすることは、心地よい空間づくりに効果的です。

スキンシップ・触れ合い支援

看取り期には、言葉よりも触れ合いが大きな安心感を与えます。手を握ったり、肩にそっと手を置いたりするスキンシップは、利用者の孤独感を和らげます。

マッサージ・手浴・足浴なども、リラックス効果が高く、利用者との信頼関係を深めるケアです。家族にもスキンシップの大切さを伝え、手を握ったり声をかけたりすることを促します。

最期の時間をともに過ごすことで、家族も後悔の少ない看取りを経験できます。介護職は利用者と家族の橋渡し役として、温かい雰囲気づくりをサポートすることが大切です。

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看取りケアは利用者の人生に深く寄り添える、やりがいのある仕事である一方で、精神的な負担も大きいとされています。

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家族への看取りケア内容

看取りケアは利用者本人だけでなく、家族への支援も重要な要素です。大切な方との別れを前にした家族は、不安や悲しみ、ときには罪悪感を抱えることもあります。

介護職は家族の気持ちに寄り添い、情報提供や精神的サポートを行うことが重要です。家族が後悔なく看取りを経験できるよう、丁寧なコミュニケーションを心がけます。

情報共有・立ち会い対応

家族への情報共有では、利用者の状態変化をわかりやすく丁寧に伝えることが大切です。専門用語は避け、家族が理解できる言葉で説明します。

医師や看護師からの説明にも同席し、家族が質問しやすい雰囲気を作ることが重要です。看取り期に入ったことを伝える際は、家族の心の準備を考慮し、段階的に情報提供します。

立ち会いでは、家族が希望する時間に面会できるよう柔軟に対応し、宿泊を希望する場合は環境を整えます。

最期の瞬間を家族とともに過ごせるよう、状態変化があれば速やかに連絡し、駆けつけやすいよう配慮することも大切です。

グリーフケア・相談支援

グリーフケアとは、死別による悲しみや喪失感に対する支援です。看取り後も家族の心のケアは続きます。利用者が亡くなった後、家族は深い悲しみや孤独感に襲われることがあります。

介護職は家族の話を傾聴し、気持ちを受け止めることで、悲嘆のプロセスを支えることが重要です。

遺族訪問や追悼会を実施する施設もあり、同じ経験をした家族同士が支え合う機会を提供します。

グリーフケアでは、悲しみを否定せず、自然な感情として受け入れることが基本です。

必要に応じて専門のカウンセラーを紹介したり、地域のグリーフケアグループの情報を提供したりすることも大切になります。

付き添い環境の整備

家族が利用者のそばで過ごせるよう、快適な付き添い環境を整えることも介護職の役割です。椅子やベッドを用意し、家族が長時間過ごしても疲れないよう配慮します。

飲み物や軽食を提供したり、休憩できる場所を案内したりすることで、家族の負担を軽減します。

また、家族が利用者のケアに参加できるよう、手伝ってもらえることを提案することも大切です。

手を握ったり、身体を拭いたりすることで、家族も看取りに参加している実感を持てます。

介護職は家族の気持ちを尊重しながら、必要なサポートを提供します。家族が後悔のない時間を過ごせるよう支援することが重要です。

看取りケアの現場で働きたいとお考えなら、ハッシュタグ転職介護がサポートします。介護業界は未経験の方でも、研修制度が充実している施設が多く、段階的にスキルを身につけられる環境です。

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看取りケアプランの作成手順

看取りケアプランの作成は、ケアマネジャーが中心となって行います。利用者と家族の意向を丁寧に聞き取り、医師や看護師、介護職員など多職種と連携しながら計画を立てます。

作成手順は一般的なケアプランと基本的には同じです。看取りケアプランでは、本人の尊厳を守ることを優先しながら、短期目標を設定し、頻繁に見直すことが特徴です。

アセスメント

アセスメントでは、利用者の身体状況・精神状態・家族の意向を総合的に把握します。

医師の診断をもとに、どの程度の期間があるのか、どのような症状が予想されるのかを確認します。

利用者本人が意思表示できる場合は、どのように過ごしたいか、どこで最期を迎えたいかなどの希望を聞き取ることが重要です。

家族にも、看取りに対する考えや不安、希望するケアの内容を確認します。

これまでの生活歴や趣味、大切にしてきた価値観なども把握し、その方らしい最期を迎えられるよう情報を集めます。多職種でカンファレンスを開き、情報を共有することも重要です。

課題分析（第1表）

課題分析では、アセスメントで得た情報をもとに、解決すべき課題を明確にします。第1表には利用者の基本情報、生活状況、要介護認定の状況などを記入します。

看取りケアプランでは、疼痛の緩和・不安の軽減・家族との時間の確保など、利用者と家族が穏やかに過ごすための課題を抽出することが重要です。

課題は優先順位をつけて整理し、何を重視するかを明確にします。本人の意向と家族の希望が異なる場合もあるため、両者の気持ちを尊重しながら、適切な方法を探ります。

目標設定（第2表）

目標設定では、短期目標と長期目標を具体的に記載することが大切です。看取りケアプランの長期目標は穏やかに最期を迎える・家族とともに過ごすといった内容です。

短期目標は痛みなく過ごせる・穏やかに休めるなど、より具体的な内容を設定します。目標達成のために必要なサービスや、誰がどのような支援を行うかを明確にすることが重要です。

看取り期は状態変化が早いため、目標は柔軟に見直すことが前提です。第2表には、これらの目標とサービス内容を詳しく記入します。

サービス具体化 ・第2表の援助内容

サービス具体化では、目標達成のために誰がいつ何を行うかを詳しく決めることが重要です。訪問診療・訪問看護・訪問介護など、必要なサービスを組み合わせます。

医師による定期的な診察、看護師による健康観察や医療的処置、介護職による身体介護や生活援助を計画することが大切です。第2表の援助内容には、各職種が行う具体的なケアの内容と頻度を記載します。

毎日の清拭・週2回の入浴介助・随時の疼痛管理など、サービスの詳細を明記することが重要です。家族の希望も反映させ、面会時間の調整や付き添い環境の整備なども計画に含めます。

文例で見る看取りケアプラン（記入例）

看取りケアプランの実際の文例を見ることで、具体的なイメージをつかむことが可能です。ここでは第1表と第2表の記入例を紹介します。

実際のケアプランは利用者ごとに異なりますが、基本的な構成や記載すべき内容は共通しています。文例を参考にしながら、利用者の個別性を大切にした計画を作成することが重要です。

第1表例

第1表の記入例として、以下のような内容が挙げられます。

• 利用者情報欄：氏名・生年月日・要介護度・認定有効期間などを記載
• 利用者・家族の生活に対する意向：本人や家族の希望を記入
• 介護認定審査会の意見・サービスの種類の指定：医師の意見書の内容や看取り介護の必要性を明記
• 総合的な援助の方針：利用者への援助の方針を記載

利用者・家族の生活に対する意向とは、例えば最期は住み慣れた施設で穏やかに過ごしたい、家族に見守られながら安心感を持って旅立ちたいなどです。

また、総合的な援助の方針欄には、疼痛コントロールを行う・苦痛のない状態を保つ・家族との時間を大切にする・面会しやすい環境を整えるなどを具体的に記載します。

第2表例

ここでは、第2表の記入例を紹介します。

生活全般の解決すべき課題欄には、痛みなく穏やかに過ごしたい・家族と一緒に時間を過ごしたいといった具体的な内容を記載します。

目標欄は、次のように長期目標と短期目標に分けて記載することが必要です。

• 長期目標：住み慣れた環境で安心感を持って最期を迎える
• 短期目標：苦痛なく過ごせる・家族と穏やかな時間を持てる

サービス内容欄には次のように記載します。

• 訪問診療：週1回・疼痛管理と全身状態の観察
• 訪問看護：週3回・バイタルチェックと医療的ケア
• 介護職員による清拭・体位変換・声かけ：毎日

ケアプランの作成は、実務経験を積むことで、利用者一人ひとりに合った内容を記載できるようになります。

未経験の場合でも、研修や教育体制が整った職場であれば安心感を持って作成できるでしょう。

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看取りケアプランも知識を活かして働くなら

看取りケアプランの知識を持つことで、介護の仕事の幅がより広がります。高齢化が進む日本では、今後ますます看取りケアの需要が高まると予想されます。

看取りケアは、特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・グループホームなど、多くの介護施設で実施されているサービスです。

看取りケアに関わることで、利用者の人生に深く寄り添い、最期の時間を支える意義深い仕事に携わることができます。

介護職として成長したい方、他者の役に立つ仕事がしたい方にとって、看取りケアは大きなやりがいを実感できる分野です。

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