胃ろう治療のメリットとデメリット

胃ろうは経口摂取が困難な方の栄養補給手段として広く用いられています。

治療を選択するにあたり、メリットとデメリットの両面を正確に理解することが大切です。

メリット

胃ろうによる経管栄養は、経口摂取が難しくなった方に対して栄養補給を行える治療法です。

経鼻胃管と比較すると、顔の外見がすっきりしているため利用者の心理的負担が軽減され、チューブやボタンの交換頻度が少なく済む利点があります。

また、抜けにくい構造のため安定した栄養補給が可能です。栄養状態の改善により、褥瘡の予防や免疫機能の向上が期待でき、肺炎のリスク低減にもつながります。

消化管機能が保たれているため、腸管からの吸収によって免疫力を高められることも見逃せません。

さらに、経口摂取が困難な方でも必要な栄養と水分を確保できるため、生命維持や体力の維持に役立ちます。

デメリット

胃ろうの造設には内視鏡を用いた手術が必要であり、身体への侵襲を伴います。造設後は、胃ろう周囲の皮膚トラブルや腹膜炎などの合併症のリスクが存在します。

これらの合併症は適切な管理により予防できるものの、日常的な注意が欠かせないです。栄養剤が胃から食道へ逆流しやすくなる場合があり、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性もあります。

適切な量や内容の栄養管理を怠ると、肥満や高血糖、脂肪肝などの代謝性疾患を招く恐れがあります。

また、経口摂取の機会が減ることで嚥下機能の低下につながり、食事の楽しみが失われる点も考慮が必要です。

日常生活では胃ろう部分の管理が必要となり、入浴時の注意や定期的なケアが求められるため、介護者の負担が増える場合があります。

胃ろう治療のメリットとデメリットを理解したうえで、実際に医療的ケアに携わる職場を選ぶことが次のステップです。

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胃ろうでも入居できる介護施設の種類

胃ろうの方を受け入れている施設は複数あり、それぞれの医療連携体制や目的により異なる特徴を持っています。

主な施設は介護医療院や介護老人保健施設、介護付き有料老人ホームの3つがあり、医師や看護師の配置基準も施設によって違いがあります。

介護医療院

介護医療院は医療依存度の高い方を受け入れる施設として2018年に新設されました。

Ⅰ型とⅡ型に分かれており、Ⅰ型は医療療養病床相当、Ⅱ型は介護老人保健施設相当以上の医療提供体制を整えています。

常勤医師や看護師の配置が手厚く、胃ろう交換などの医療処置を施設内で実施できるため、別の医療機関を受診する負担を減らすことが可能です。

長期療養や終の棲家としての機能も担っており、喀痰吸引や経管栄養が必要な方も生活できる環境が整っています。

介護職員も医療的ケアの研修を受けているため、24時間体制で医療と介護の両面からサポートを受けられる点が特徴です。

介護老人保健施設

介護老人保健施設は在宅復帰を目指す方のための施設で、リハビリテーションに重点を置いています。

入居期間は原則3ヶ月程度と設定されており、理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職による機能訓練が充実している点が大きな特徴です。

医師が常駐し、看護師も24時間体制で配置されているため、胃ろうの栄養管理や喀痰吸引などの医療処置にも対応できます。

病院から退院したものの、すぐに自宅に戻ることが難しい方が入所し、日常生活動作の改善を図りながら在宅復帰を準備する場として機能しています。

医療ケアとリハビリを同時に受けられるため、胃ろうの方でも安定した状態で生活しながら体力や機能の回復を目指すことができる環境です。

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは民間事業者が運営する施設で、介護サービスを24時間提供する体制が整っています。

施設によって看護師の配置状況は異なりますが、看護師が常駐している施設では胃ろうの管理や医療的ケアに対応可能です。

2012年の法改正により研修を受けた介護職員も経管栄養を実施できるようになったため、受け入れ可能な施設が増えています。入居期間に制限がなく、終身利用できる点が特徴です。

入居者の状態に応じて個別のケアプランを作成し、食事や入浴などの日常生活支援を提供しています。

協力医療機関との連携体制が整っている施設も多く、急な体調変化にも対応できます。施設選びでは、事前に胃ろうケアの看護体制の確認が大切です。

胃ろう介護のポイント

胃ろうを利用する方へのケアでは、快適性の配慮が欠かせません。

栄養剤の注入時には、正しい姿勢の維持・口腔内の清潔保持・状態に合わせた栄養剤の選択・器具の衛生管理・胃ろう周囲の皮膚トラブルの予防などの5つの基本ポイントがあります。

これらを押さえることで、介助できる環境が整います。

姿勢を正す

胃ろうから栄養剤を注入する際は、上体を30度から60度程度起こした姿勢を保つことが重要です。

この姿勢により、重力を利用して栄養剤が胃から十二指腸へスムーズに流れ、逆流や誤嚥のリスクを減らせます。

高齢の方は噴門が緩んでいる場合や食道裂孔ヘルニアがあることも多く、平らな状態では栄養剤が食道に戻って誤嚥性肺炎を引き起こす恐れがあります。

注入中は安楽な姿勢を保てるよう、臀部に高い圧がかからないよう配慮し、胃部を圧迫しない体位を心がけることが必要です。

急激な体位変換は血圧低下やめまいを招く可能性があるため、ゆっくり頭部を挙上することも大切です。注入後もしばらく上体を起こした状態を維持し、安全性を確保しましょう。

口腔ケアを徹底する

胃ろうを使用していても、口腔ケアは1日3回しっかり行う必要があります。

経口摂取をしていなくても、口腔内には細菌が繁殖しやすく、放置すると誤嚥性肺炎や口腔内感染症のリスクが高まるためです。

歯ブラシやスポンジブラシを使って口腔内の汚れを丁寧に除去し、口腔粘膜にも適度な圧をかけて清拭します。唾液の分泌が少なくなることで自浄作用が低下しているため、こまめなケアが欠かせません。

口腔内を清潔に保つことは、全身の健康状態の維持にもつながります。介護職として、利用者の口腔状態を観察し、異常があれば看護師や歯科医師に報告する姿勢も重要です。

口腔ケアを習慣化し、利用者の快適性と健康を守ります。

適した栄養剤を選ぶ

栄養剤には液体タイプと半固形タイプがあり、利用者の状態に合わせて選択します。

液体栄養剤は医療保険が適用され経済的負担が軽い利点があります。

それぞれの栄養剤には異なる特性があるため、利用者の体調を見ながら使い分けることが大切です。

一方、半固形栄養剤は逆流しにくく誤嚥のリスクが低いことや下痢が起こりにくい、注入時間が短く済むなどの特徴があります。

利用者が嘔吐や逆流を繰り返す場合は、半固形タイプへの変更の検討が有効です。また、栄養剤の温度管理も重要で、常温から人肌程度が目安です。

冷たすぎると腸の蠕動運動が刺激されて下痢を引き起こす可能性があります。

医師の指示や家族の意向に従いながら、利用者にとって適切な栄養剤と温度を選ぶことが大切です。

使用する器具を清潔に保つ

胃ろうの器具は細菌感染を防ぐため、常に清潔な状態での使用が重要です。

注入用ボトルや経管栄養セット、カテーテルチップ型シリンジは使用後に食器と同じように丁寧に洗浄し、しっかり乾燥させてから保管します。

乾燥が不十分だと細菌が繁殖しやすくなるため注意が必要です。栄養剤は細菌の温床になりやすいため、作り置きは避け、セット後はすぐに利用者に接続する準備に移ります。

また、注入後は白湯をチューブ内に流してチューブ内の栄養剤や薬剤の残留防止になる、白湯フラッシュを行うことも大切です。

清潔な器具の使用で、感染症のリスクを大幅に減らし、安全性の高い栄養補給を実現できます。介護職として衛生管理の意識を高く持ちましょう。

胃ろう周囲の皮膚トラブルに気を付ける

胃ろう周囲の皮膚は、発赤や湿潤などの炎症が起きやすい部位です。毎回の注入前には胃ろう周囲を目視での観察を忘れず、異常がないか確認します。

ボタン型の場合、ストッパーが皮膚の同じ箇所を圧迫し続けると潰瘍を形成する恐れがあるため、圧迫の有無のチェックが重要です。

胃壁内のバンパー部分が引っ張られたり、傾いたりしても胃の内壁に潰瘍ができる可能性があります。

皮膚に炎症所見がなければ特別な処置は不要ですが、発赤や湿潤が見られる場合は看護師や医師に速やかに報告しましょう。

入浴時は感染徴候がなければそのまま入浴できますが、発赤がある場合はフィルムで保護します。日常的な観察と早期発見や早期対応が、皮膚トラブルの予防につながります。

胃ろう介護は、医療的ケアの知識と観察力が求められる専門性の高い業務です。こうしたスキルを現場で身につけながら、働ける職場を見つけることが次のステップです。

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胃ろうの実施者

胃ろうによる経管栄養は、原則として医師や看護師が実施する医療行為です。

しかし2012年度から、社会福祉士および介護福祉士法の改正によって、介護福祉士や一定の研修を修了した介護職員も実施できるようになりました。

この制度改正では、介護福祉士は必要な研修を修了して、喀痰吸引と経管栄養（胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養）を医師の指示の下で実施できる資格を得られます。

ただし個人で認定を受けただけでは実施できず、医療職との連携体制が整った登録事業者に所属する必要があります。

介護現場では人材不足が続いているため、介護職が医療的ケアを担えることは利用者にとって安心感を持って暮らすために大切です。

一定の条件を満たすことで胃ろうの介助に携われるため、介護職としてスキルアップを目指す方にとって研修を受ける価値は十分にあるといえるでしょう。

医療的ケアのスキルを身につけることで、介護職としてのキャリアの幅が広がります。ただし研修制度が整い、登録事業者として認定された職場を選ぶことが大切です。

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胃ろう介護を介護福祉士が実施する要件と注意点

介護福祉士は社会福祉士および介護福祉士法の改正により、一定の条件下で胃ろうによる経管栄養を実施できるようになりました。

ただし、法律で定められた要件を満たす必要があります。ここでは実施に必要な3つの要件と注意点を解説します。

勤務先が登録事業者でなければならない

介護福祉士が胃ろうによる経管栄養を行うには、登録喀痰吸引等事業者に所属していることが必須条件です。

個人として研修を修了し認定を受けただけでは、たとえ介護福祉士であっても胃ろう介護を実施できません。

これは医師や看護職員との連携体制を確保し、医療的ケアを提供するための仕組みとされています。

事業者が都道府県から登録を受け、適切な管理体制を整えていることで、介護職員が業務に取り組める環境が実現します。

所属する施設や事業所が登録事業者であることの確認が重要です。

喀痰吸引等研修の受講と認定登録を行っていなければならない

介護福祉士が胃ろう介護を実施するには、喀痰吸引等研修を修了し、都道府県知事から認定を受ける必要があります。

研修には第一号研修から第三号研修まであり、胃ろうによる経管栄養を行うにはこれらの課程で定められた講義と演習、実地研修を修了しなければなりません。

実地研修では実際の利用者に対して一定回数以上の経管栄養を実施し、指導看護師から評価を受けることが求められます。

研修修了後は都道府県に申請を行い、認定特定行為業務従事者として登録されることで、初めて業務として胃ろう介護を実施できるようになります。

医師の指示書のもとに実施しなければならない

胃ろうによる経管栄養は医療行為に該当するため、介護福祉士が実施する際には医師の指示書が必要不可欠です。

利用者のかかりつけ医や主治医、施設の配置医などから具体的な実施方法や注意事項を記載した指示書を受け取り、その内容にしたがって介護を行います。

指示書には栄養剤の種類や量、注入速度、実施時間帯などが明記されており、これらの遵守が求められます。

また看護職員との連携を密にし、利用者の体調変化や異常があれば速やかに報告する体制を整えることも重要です。医療的ケアの提供には、チーム全体での情報共有と協力が欠かせません。

胃ろう介護の実施要件を理解したうえで、研修を修了し実際に現場でスキルを活かせる職場を見つけることが次のステップです。

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胃ろうを介護福祉士が行う場合の業務内容と流れ

胃ろうによる経管栄養は、事前準備・実施・観察・記録というステップで構成されます。

医師の指示に基づき、よりしっかり行うために各段階でのチェックと報告が求められる業務です。

事前準備

介護福祉士は実施前に流水と石けんで手洗いを行い、感染予防に努めます。

手洗いは15秒以上かけて丁寧に実施し、外部から細菌を持ち込まないよう配慮が必要です。

次に医師の指示書を確認し、栄養剤の種類や量、注入速度などの内容が正しいか把握しましょう。利用者本人や家族への声かけも欠かせません。

腹痛や吐き気、発熱などの体調変化がないか確認し、異常がある場合は看護師や医師に相談します。

必要物品として栄養剤・注入用ボトル・経管栄養セット・白湯、アルコール綿などを用意し、衛生的に保管されているか点検を行います。

利用者が安楽な体位をとれるよう調整してから作業に入ることで、誤嚥や逆流のリスクを減らせるでしょう。

胃ろうの実施

注入開始時に、栄養剤を注入用ボトルに入れてクレンメを閉じます。ボトルを高いところにかけ、滴下筒に栄養剤を半分程度満たして滴下を確認しましょう。

クレンメを緩めてラインの先端まで栄養剤を流し、空気を抜いてから再びクレンメを閉じます。胃ろうチューブの破損や抜けがないか目視で観察し、周囲の皮膚状態も確認が必要です。

チューブの先端とラインの先端をアルコール綿で拭いてから接続し、利用者に開始を伝えてクレンメをゆっくり緩めます。決められた滴下速度に調整し、注入開始時刻を記録しましょう。

滴下中は利用者の表情や呼吸状態を観察し、嘔吐や発汗、顔面紅潮などの異常がないか確認します。

滴下終了後はクレンメを閉じてラインを外し、白湯をチューブ内に流してフラッシュを行いましょう。

経過の観察と記録

注入終了後も利用者の上体を挙上したまま、安楽な姿勢を保つよう配慮します。体位を整えて嘔気や嘔吐がないか再度確認し、異常があれば速やかに看護師へ報告が必要です。

使用した経管栄養セットやシリンジは食器と同様に丁寧に洗浄し、破損しないよう取り扱いましょう。

実施記録には注入開始時刻・栄養剤の種類と量・滴下速度・利用者の状態・終了時刻などを正確に記載します。

ヒヤリハットやアクシデントが発生した場合は忘れずに報告し、業務終了後に詳細を記録しましょう。

記録は多職種間の情報共有に欠かせないため、客観的で具体的な内容を心がけることが大切です。

チームケアの一員として、医師や看護師と連携しながら利用者の健康を守る役割を担います。

胃ろうに対応できる介護福祉士になって可能性を広げよう

胃ろうの経管栄養を含む医療的ケアができる介護福祉士は、転職市場で高く評価され、働ける施設の選択肢が大きく広がります。

特別養護老人ホームや介護医療院、訪問介護など医療的ケアが必要な利用者を受け入れる施設では、胃ろう対応ができる人材が不可欠だからです。

介護福祉士として喀痰吸引などの研修を修了すれば、胃ろうによる栄養注入を法律で認められた業務として行えるようになります。

この専門性は給与面でも評価されやすく、キャリアアップの道を広げる武器となるでしょう。

未経験から介護職を目指す方も、計画的に研修を受ければ医療的ケアに対応できるスキルを身につけられます。

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