大卒で介護士はもったいない？

大学卒業後に介護職を選ぶことをもったいないと感じる方は少なくありません。

しかし実際のデータを見ると、大卒介護士は珍しい存在ではなく増加傾向にあります。

ここでは大卒介護士の現状となぜそのような選択をする方が増えているのか、またもったいないといわれる背景を詳しく見ていきましょう。

大卒介護士の割合

介護労働安定センターの調査によると、介護職員のうち大学卒業者の割合は約28.7%に達しています。

短大卒を含めると4割を超える高学歴者が介護現場で活躍しており、特に若い世代では大卒者の比率がさらに高くなるのが特徴です。

施設の種類によっても差があり、特別養護老人ホームでは約25%、有料老人ホームでは約30%と施設形態によって異なります。

管理職や相談員では大卒者の割合が5割を超えるケースも珍しくありません。キャリアアップを考えるうえで、大卒の学歴は有利に働きます。この数字からわかるように、大卒で介護職を選ぶことは特殊な選択ではありません。

なぜ大卒で介護士を選ぶのか

大卒者が介護職を選ぶ理由は人それぞれですが、なかでも多数を占めているのが人の役に立ちたい思いです。

高齢化社会では介護は社会貢献度の高い仕事であり、直接的に人を支える実感を得られます。福祉系の大学出身者にとっては専門知識を活かせる職場となるのも魅力です。

介護職は全国どこでも需要があるため、地元で就職したい方や転勤を避けたい方にも選ばれています。キャリアの見通しが明確な点も見逃せません。

介護福祉士やケアマネジャーなど段階的な資格取得によって着実にステップアップできます。一般企業での競争に疲れた方が、より意義を感じられる仕事を求めて転職するケースも増えています。

もったいないと言われる理由

大卒なのに介護職はもったいないと言われる背景には、給与面での懸念が大きく影響しています。

厚生労働省の調査では、介護職員の平均月収は約290,000円で全産業平均と比較するとやや低い水準にあります。

大学での専門分野と直接関係ない仕事に就くことを学歴の無駄遣いと考える方も存在するのが現状です。身体的な負担が大きい仕事内容も、デスクワークを想定していた大卒者にはきついと映るかもしれません。

しかし介護職は処遇改善が進んでおり、資格取得による昇給も期待できます。社会的意義の高さや雇用の安定性を考慮すれば、もったいない選択ではないでしょう。

介護職のメリット

介護職には給与面以外にもさまざまなメリットが存在します。特に将来性や雇用の安定性、キャリアアップの可能性など長期的な視点で見た場合の利点は見逃せません。

ここでは介護職を選ぶことで得られる具体的なメリットを詳しく解説していきましょう。

社会的な需要が高く将来性がある

日本の高齢化率は2025年には30%を超えると予測されており、介護サービスの需要は今後も増加し続けます。

厚生労働省の推計では2040年度には約280万人の介護職員が必要とされ、現在よりも約69万人多い人材が求められているのが現状です。

この需要の高さは雇用の安定に直結し、景気に左右されにくい職業となっています。AIやロボット技術が進化しても、人間の温もりや細やかな配慮が必要な介護の仕事は完全に代替されません。

国も介護職員の処遇改善に力を入れており、2024年には月額6,000円の賃上げが実施されました。このような社会的背景から、介護職は将来にわたって安定した需要が見込まれる職業です。

就職先が多く転職しやすい

介護施設は全国に約18万カ所存在し、都市部から地方まで幅広く求人があります。

特別養護老人ホームや有料老人ホーム、デイサービスや訪問介護など施設形態も多様で自分に合った職場を選べるのが特徴です。

介護業界の有効求人倍率は約3.6倍と高く、ほかの産業と比較しても就職や転職がしやすい環境にあります。

経験を積めば即戦力として評価され、よりよい条件での転職も実現できます。介護の経験は全国どこでも通用するため、結婚や家族の事情で引っ越しする場合でも仕事に困りません。

夜勤専従や日勤のみなど働き方も選べるため、ライフスタイルに合わせた転職も可能です。

資格取得でキャリアアップがしやすい

介護業界には明確な資格制度があり、段階的にスキルアップできる道筋が整っています。初任者研修から始まり、実務者研修を経て介護福祉士の国家資格を取得できるのが一般的な流れです。

介護福祉士の資格を持つと基本給が月額10,000〜30,000円程度上がることが少なくないため、年収で300,000円以上の差が生まれます。

5年以上の実務経験を積めばケアマネジャーの受験資格を得られ、合格すれば月収350,000円以上も視野に入ります。認定介護福祉士や社会福祉士など専門性を高める資格も豊富で、施設長や管理職への道も開けるのが魅力です。

さまざまな施設では資格取得支援制度があり、費用補助や勤務時間の調整など学習環境も整っています。

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大卒で介護職につくメリット

大学を卒業してから介護職に就くことには、高卒や専門卒では得られない独自のメリットがあります。

学習能力の高さや論理的思考力、組織内での信頼感など大卒ならではの強みを活かせる場面があります。

ここでは大卒介護士特有のメリットを詳しく見ていきましょう。

試験に強く合格しやすい

大学での学習経験は、介護関連の資格試験で大きなアドバンテージです。介護福祉士国家試験の合格率は全体で約84%ですが、大卒者に限ると約90%を超える高い合格率を誇るのが特徴です。

論文作成やレポート課題で培った文章力は、記述問題や事例検討で力を発揮します。大学で身につけた効率的な学習方法や時間管理能力は、働きながら資格取得を目指すうえで重要な武器となるのも見逃せません。

ケアマネジャー試験のような難関資格でも、大卒者の合格率は全体平均を上回ります。法律や制度に関する理解力も高く、介護保険制度の複雑な仕組みも素早く習得できます。

昇給・昇格しやすい

さまざまな介護施設では、管理職候補として大卒者を積極的に採用しています。

実際に施設長や管理者の約6割が大卒以上の学歴を持っており、昇格のチャンスは高卒者より多数ある傾向にあります。

大手法人では初任給から大卒と高卒で月額10,000〜20,000円の差をつけているケースも珍しくありません。

論理的思考力やプレゼンテーション能力は、会議や研修での発言機会を増やし上司からの評価につながりやすくなります。

大学で学んだマネジメント理論や組織論は、チームリーダーや主任になった際に実践的に活用できるのも強みです。昇格スピードも速く、3〜5年で主任クラス、10年以内に施設長補佐や部門長になる大卒者も存在します。

頼られやすくやりがいがある

大卒介護士は職場で頼りになる存在として認識されることがあり、やりがいを感じやすい環境です。

パソコンスキルや文書作成能力の高さから、記録業務や報告書作成を任される機会が増えるでしょう。

新人教育や実習生指導の担当に選ばれやすく、後輩育成を通じて自身も成長できます。家族への説明や多職種連携の場面では、論理的な説明力が評価され施設の代表として対応を任されることもあります。

大学で学んだ幅広い教養は、利用者との会話を豊かにし信頼関係構築に役立つポイントの一つです。研修講師や外部発表の機会もあり、介護の専門性を深めながら社会的な発信力も身につけられるのが魅力です。

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大卒介護士の給料事情

給与面は介護職を選ぶうえで重要な検討事項の一つです。

大卒介護士の給料は高卒者と比べてどの程度違うのか、ほかの業界と比較した場合の水準はどうなのか、資格取得によってどれだけ改善するのか詳しく解説します。

大卒と高卒の給料の違い

介護職での大卒と高卒の初任給には、月額で約10,000〜20,000円の差があります。

厚生労働省の調査によると、大卒介護職員の初任給は約190,000〜210,000円、高卒では約170,000〜190,000円となっているのが現状です。

年収ベースでは200,000〜300,000円の差となり、勤続年数が増えるにつれてこの差は広がる傾向にあります。

大手法人では学歴による基本給の差を明確に設定しており、昇給率も大卒者の方が高く設定されているのが特徴です。

ボーナスも基本給に連動するため、年間で見ると差はさらに大きくなります。10年勤続時点では、大卒者の平均年収が約4,000,000円に対し高卒者は約3,500,000円と500,000円程度の開きが生じています。

他業界との給料の違い

介護職の平均月収約290,000円は、全産業平均の約360,000円と比較すると低い水準にあります。特に大手企業の総合職と比べると、初任給で50,000円以上の差があることも珍しくありません。

しかし介護業界は残業が少なく、サービス残業もほとんどないため時給換算ではほかの業界との差は縮まります。

介護職は夜勤手当や資格手当など各種手当が充実しており、基本給以外の収入も期待できるのが魅力です。

処遇改善加算により年々給与水準は向上しており、2019年から2024年の5年間で月額約30,000円の改善が実現しました。

福利厚生も充実している施設が少なくないため、社宅や保育所完備など実質的な収入増につながる制度も整っています。

資格取得でどう変わるか

資格取得は介護職の給与を大きく向上させる手段です。介護福祉士の資格を取得すると、月額で10,000〜30,000円の資格手当が支給され年収は300,000〜400,000円アップします。

実務者研修修了でも月5,000〜10,000円の手当がつく施設が多く、着実に収入を増やせるのが特徴です。ケアマネジャーになれば基本給自体が上がり、平均月収は350,000円以上を見込めます。

認定介護福祉士や社会福祉士などの上位資格を取得すれば、さらなる給与アップが見込めるのも魅力です。

複数の資格を組み合わせることで、月収400,000円を超えることも可能です。資格は転職時の交渉材料にもなり、好条件での転職を実現しやすくなるのも見逃せません。

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大卒で介護職につくデメリット

介護職を選ぶ際には、メリットだけでなくデメリットも正しく理解しておく必要があります。

特に大卒者にとって気になる初任給の低さや身体的・精神的な負担に関して現実的な視点から解説していきます。

初任給は他業界よりやや低め

大卒介護職の初任給約190,000〜210,000円は、一般企業の総合職と比べると30,000〜50,000円程度低い水準にあります。

特に大手企業や金融業界と比較すると、その差はさらに広がるのが現状です。学生時代の友人と給与を比較して落ち込むこともあるかもしれません。

しかし介護業界は着実な昇給が期待でき、資格取得による手当も充実しています。残業代がきちんと支払われる施設が多く、サービス残業で疲弊を感じることは少ないのが特徴です。

夜勤手当は1回8,000円〜15,000円程度で、月4回入れば30,000〜60,000円の収入増となります。処遇改善加算も年々充実しており、5年後や10年後の給与水準は改善していきます。

身体的・精神的負担が多い

介護の仕事は利用者の移乗介助や入浴介助など、身体を使う場面が多く腰痛のリスクがあります。

夜勤もあるため生活リズムが不規則になりやすく、体調管理が重要になるのも事実です。認知症の方への対応では、コミュニケーションの難しさからストレスを感じることもあります。

看取りケアでは精神的な負担も大きく、感情のコントロールが求められるのが現状です。しかし最近では介護ロボットやリフトの導入が進み、身体的負担は軽減されつつあります。

チームケアの体制も整備され、一人で抱え込まない環境づくりが進んでいるのも特徴です。研修制度も充実しており、認知症ケアや看取りケアの専門知識を学ぶことで精神的な負担も軽減できます。

大卒介護士のキャリアアップ

介護職は明確なキャリアパスが存在し、努力次第でさまざまな道が開ける職業です。

特に大卒者は学習能力や管理能力を活かして、より高いポジションを目指しやすい環境にあります。

ここでは大卒介護士が目指せる具体的なキャリアアップの道筋を解説していきます。

ケアマネージャーや施設長を目指す

介護福祉士として5年以上の実務経験を積めば、ケアマネジャーの受験資格を得られます。

ケアマネジャーは利用者のケアプラン作成や関係機関との調整を行う専門職で、平均月収は350,000円以上となるのが魅力です。

合格率は約20%と難関ですが、大卒者の論理的思考力や文章力は大きな武器となるでしょう。施設長への道も現実的で、主任や課長、部長とステップアップしていけば10〜15年で施設長になることも可能です。

施設長の年収は5,000,000〜7,000,000円程度で、大手法人では10,000,000円を超えるケースもあります。経営感覚やマネジメント能力が求められるため、大学で学んだ知識を存分に活かせるのが特徴です。

福祉系の行政機関や教育分野に進む

介護現場での経験を活かして、行政機関や教育分野へ転身する道も開かれています。市町村の福祉課や地域包括支援センターでは、介護保険制度の運営や相談業務を担当できるのが魅力です。

公務員として安定した雇用と充実した福利厚生を得られ、地域福祉の向上に貢献できます。介護福祉士養成校の教員になる選択肢もあり、実務経験5年以上と介護教員講習会の修了で教壇に立てるのも見逃せません。

大学院に進学して研究者を目指すことも可能で、介護の質向上に学術的な側面から貢献できます。企業の福祉用具開発部門や介護コンサルタントとして活躍する道もあり、現場経験を基盤にさまざまな分野で専門性を発揮できるでしょう。

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大卒で介護士を目指すなら

ここまで、大卒介護士の現状やメリット・デメリット、キャリアパスに関して詳しく見てきました。大学を卒業して介護職を選ぶことは、もったいない選択ではありません。

高齢化が進む日本で、社会的意義が高く将来性のある仕事です。

大卒ならではの強みを活かせば、キャリアアップの道も広く開かれています。給与面での課題はありますが、資格取得や昇格によって着実に改善できます。

直接人の役に立てる喜びや、利用者からのありがとうの言葉は、ほかの仕事では得られない大きなやりがいとなるのが魅力です。

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