介護職の資格取得支援制度とは？

介護職の資格取得支援制度とは、資格を取得する際の費用を国・自治体・事業所が一部または全額負担する制度です。

介護業界は慢性的な人手不足の状況にあり、より多くの人材を確保するために、未経験者や無資格者でも働きながらスキルアップできる環境が整えられています。

例えば、介護施設が職員向けに資格取得費用を補助するケースや、ハローワークや自治体が特定の資格講座の受講料を助成する制度などがあります。

また、一定の条件を満たして厚生労働省が実施している教育訓練給付制度を活用すると、支払った費用の一部が還付されるでしょう。

さらに、施設や事業所によっては資格取得のための研修を業務時間内に受けられる場合もあり、働きながら無理なく学べる環境が整っている点も魅力です。

介護職が資格を持っているかどうかは、給与やキャリアに大きく影響するだけではなく、利用者さんへの質の高いケアの提供にもつながるでしょう。

この制度を利用すると、負担を抑えながら自身の目指すキャリアを築ける可能性が広がります。

介護職で資格取得支援制度を利用するメリット

介護職が資格取得支援制度を利用すると、費用を抑えられるだけでなく、キャリアアップや転職にも大きなメリットがあります。

現在の場所で働きながらスキルを磨き、より安定した職場環境を手に入れられるかもしれません。

この章では、資格取得支援制度を利用するメリットを4つに分けて解説します。

働きながら資格取得を目指せる

多くの支援制度は現職の介護職員を対象にしており、仕事を続けながら資格を取得できるように配慮されているのが大きな特徴です。

介護施設や事業所によっては、業務の一環として資格取得のための研修を受けられたり、勤務時間内に資格講座を受講できたりする場合があります。

研修のためのシフト調整も受けられますが、通信講座や夜間講座も開催されており、勤務に合わせて効率よく学べます。

収入を維持しながら学習を進められ、スキルアップとキャリアを両立できるのが、この制度の大きなメリットです。

資格取得にかかる費用を抑えられる

介護資格を取得するには数万円から数十万円の費用がかかる場合がありますが、資格取得支援制度を活用すれば、その負担が大幅に軽減できます。

教育訓練給付制度を利用すれば、対象講座の受講料の20～70%が還付されます。

また、ハローワークが実施する職業訓練制度では、条件を満たせば受講料が無料になるケースもあるのも見逃せません。

この制度を利用すると費用を抑えて資格を取得できるため、資格取得のハードルが下がるのではないでしょうか。

給料アップやキャリアアップにつながる

介護業界では、資格の有無が給与に大きく影響します。勤続年数や年齢などの違いがあり比較は難しいものの、無資格の介護職と比べると、有資格者や研修修了者の給与は高い傾向にあります。

無資格と介護福祉士の資格を持つ介護職では、月収で数万円の差が出る場合も珍しくありません。

また、介護職員初任者研修を修了すれば基本的な介護業務を担当できます。介護福祉士の資格を取得すれば、現場のリーダーとして活躍するチャンスが増えるなど、キャリア形成と収入アップの両面によい影響を与えるでしょう。

転職に有利になる

介護業界では、資格を持っているかどうかが採用のポイントになります。介護福祉士やケアマネジャーの資格を持っていると、より条件のよい職場へ転職しやすくなります。

無資格のまま転職活動を進めるより、資格を取得してからの方が待遇のよい職場を見つけやすくなるでしょう。

また、転職支援サービスを利用する方法もあります。資格取得支援制度のある職場を紹介してもらえるため、転職と同時に資格取得を目指せます。

子育てと仕事を両立しながら、転職と資格取得を目指したい方もいるかもしれません。

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支援の対象となる主な介護職の資格

介護職の資格にはさまざまな種類がありますが、すべてが支援制度の対象になるわけではありません。

資格取得支援制度の対象となる場合が多いのは、介護職員初任者研修・介護職員実務者研修・介護福祉士・介護支援専門員（ケアマネジャー）の4つです。

それぞれの資格の特徴や取得方法を詳しく解説します。

介護職員初任者研修

介護職員初任者研修は介護職の入門にあたる研修で、以前はホームヘルパー2級と呼ばれており、介護業界で働くうえで基本となる知識や技術の習得できます。

主なポイントは以下のとおりです。

• 資格取得に必要な期間：2～4ヶ月程度
• 費用の目安：60,000～150,000円
• 取得のメリット：訪問介護や介護施設での業務に従事できる

費用は、自治体の助成金や事業所の支援がある場合、無料または割引になるケースもあります。研修終了時には、各科目の知識や技術の習得度を評価するために筆記試験が行われます。

無資格から介護職に就職・転職する際の第一歩として、介護職員初任者研修の受講がおすすめです。

介護職員実務者研修

介護職員実務者研修ではより専門的な介護技術や医療的ケアを学びます。主なポイントは次のとおりです。

• 資格取得に必要な期間：6ヶ月程度
• 費用の目安：100,000～200,000円
• 取得のメリット：介護福祉士の受験資格が得られる・たん吸引などの医療的ケアが可能になる

教育訓練給付金などを利用すれば、費用負担の軽減が可能です。すでに履修している研修がある場合、単位として認定されることもあります。

介護職員実務者研修を修了すると介護福祉士の受験資格が得られるため、キャリアアップを目指す方には重要なステップになるでしょう。

介護福祉士

介護福祉士は、介護職としての専門性を証明する国家資格です。介護職のなかでも高いスキルを持ち、施設や訪問介護事業所などでリーダー的な役割を担う場合もあります。

介護福祉士資格を取得する方法は主に養成施設ルートと実務経験ルートがあり、養成施設ルートの場合、介護福祉士養成施設を卒業すると受験資格が得られます。

実務経験ルートの場合の主なポイントは以下のとおりです。

• 資格取得に必要な期間：実務経験3年以上＋実務者研修修了が必要
• 費用の目安：試験料約15,000円＋研修費用
• 取得のメリット：給与アップ・キャリアアップ・介護現場での指導者的な役割を担える

実務者研修受講時に研修費用がかかりますが、負担を減らせる教育訓練給付金などを積極的に活用しましょう。

介護福祉士の資格を取得してキャリアアップしたいけれど、どの施設を選べばよいかわからない方は、介護の知識が豊富な転職エージェントを利用するのが便利です。

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介護支援専門員（ケアマネジャー）

介護支援専門員（ケアマネジャー）は、介護保険制度のもとでケアプランの作成や、利用者・家族・施設間の連絡調整を行う専門職です。

介護現場の実務だけでなく、マネジメント業務にも関わるため、専門的な知識と豊富な経験が求められます。

主なポイントは次のとおりです。

• 資格取得に必要な期間：実務経験5年以上＋介護支援専門員実務研修修了が必要
• 費用の目安：試験料約12,000円＋研修費用50,000～100,000円
• 取得のメリット：介護職からのキャリアチェンジ・収入アップ・デスクワーク中心の業務への転換

ケアマネジャーの資格を取得すると、介護現場の最前線から、管理職や相談業務などへのキャリアアップが可能になります。

体力的な負担が大きい介護職からの転向を考えている方にとっては、長く安定して働ける選択肢の一つとなるでしょう。

介護職の資格取得支援を受ける方法

介護資格の取得には費用がかかりますが、国や自治体、事業所が提供する支援制度を活用すれば、負担を軽減しながらの資格取得が可能です。

ここでは、利用できる代表的な支援制度を解説します。

国が定める助成金制度を活用する

国が提供する助成金制度を利用すれば、介護資格の取得にかかる費用の一部または全額が補助されるため、自己負担を抑えながら知識と技術を習得できるでしょう。

個人が申請できる、国からの主な助成金制度を以下に挙げます。

• 教育訓練給付制度：受講費用の一部が支給される
• 教育訓練支援給付金：専門実践教育訓練を受講中に支給される
• リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業：新たなスキルを得てキャリアアップや転職を目指す取り組み

これらの制度をうまく活用すれば、ご自身のキャリアや生活状況に合わせて新しい技能を身につけられ、仕事環境が変化しても柔軟に対応できるでしょう。

地方自治体が定める助成金制度を活用する

国だけでなく、都道府県や市区町村ごとに独自の助成金制度を設けている場合があります。

例えば、東京都の介護資格取得支援制度には、介護職員初任者研修や実務者研修の受講費用を助成する支援事業があります。

対象は都内在住または勤務の介護職希望者で、都が指定する研修機関での受講が条件です。

神奈川県では資格取得のための研修を無料で受けられたり、大阪府では資格取得を援助した事業所に助成を行ったりします。

自治体ごとに助成額や対象資格が異なるため、ご自身が住んでいる地域で、公式情報の確認が必要です。

ハローワークの職業訓練を利用する

ハローワークでは、求職者向けに介護資格取得を支援するハロートレーニングを実施しています。主な職業訓練制度は、公共職業訓練と、求職者支援訓練の2つです。

公共職業訓練は介護職員初任者研修や実務者研修なども含まれており、無料または低額で受講できます。条件が合えば失業保険を受給しながら訓練を受けられます。

求職者支援訓練は介護職未経験者向けの研修で、受講料は無料です。訓練期間中、一定条件を満たせば、月100,000円の職業訓練受講給付金が支給されます。

ハローワークを通じた訓練は、低コストで資格が取れるだけでなく、就職までスムーズに進められるのが強みです。

資格取得支援制度のある施設や事業所で働く

介護事業所のなかには、従業員向けに資格取得支援制度を設けている施設が少なくありません。介護施設が行っている資格取得支援の例を紹介します。

• 資格取得のための研修費用を全額負担する
• 研修受講中も給与を支給する
• 介護福祉士取得後に給与アップやキャリアアップの制度がある

このような職場を選べば、費用負担を気にせず働きながらスキルアップが可能です。

資格取得支援のある職場を探したい方は、転職エージェントを通すとスムーズに希望に合った事業所を探せます。

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介護資格で受けられる教育訓練給付金制度の種類

介護職の資格取得を支援する教育訓練給付制度を活用すると、受講費用の一部が国から給付されます。

一般教育訓練給付金・特定一般教育訓練給付金・専門実践教育訓練給付金の3種類があり、それぞれ対象となる講座や給付率が異なります。

それぞれの制度の特徴を解説しましょう。

一般教育訓練給付金

一般教育訓練給付金は、雇用保険の被保険者期間が通算1年以上の方を対象とし、厚生労働大臣が指定する講座を修了した場合に受講料の20%（上限100,000円）が給付される制度です。

対象となる介護に関する主な資格は、介護職員初任者研修・介護事務資格・福祉住環境コーディネーターなどです。

この制度を利用すれば、新しく介護業界へ踏み出す際の経済的負担を軽減できます。

特定一般教育訓練給付金

特定一般教育訓練給付金は、さらなるキャリアアップを目的とした資格取得を支援する制度です。

受講費用の40%（上限200,000円）が給付され、修了後に一定の条件を満たせば追加で20%（上限100,000円）が支給されます。

対象となる主な資格や講座は以下のとおりです。

• 介護職員実務者研修
• 認知症ケア専門士
• 社会福祉士国家試験対策講座 など

資格取得後に雇用保険に加入すると、さらに追加給付を受けられます。また、実務経験がある方向けの資格が多く、転職や昇給につながりやすい点がメリットとして挙げられます。

介護福祉士の受験資格となる実務者研修も対象のため、キャリアアップを目指す方にとって、積極的に活用すべき制度です。

専門実践教育訓練給付金

専門実践教育訓練給付金は、専門性の高い資格取得を目指す方向けの制度で、受講料の50%（年間上限400,000円）が給付されます。

さらに、修了後に資格を取得し雇用保険に加入すると、追加で20%が給付されます。

対象となる主な資格は次のとおりです。

• 介護福祉士（養成施設ルート）
• 介護支援専門員（ケアマネジャー）
• 社会福祉士 など

この給付金では、長期間の専門教育が必要な資格取得を、合計1,200,000円までもらえる可能性があります。

さらに、資格取得後に雇用されると追加給付が受けられるため、転職時の経済的負担も軽減できます。

介護福祉士やケアマネジャーなど、より専門的なスキルを身につけたい方に適した制度です。

教育訓練給付制度を受ける流れ

教育訓練給付制度を利用するには、事前の申請と受講後の給付申請が必要です。

正しい手続きを行えば、受講料の一部を国から還付されます。申請から給付までの具体的な流れは以下のとおりです。

• 受給資格の確認
• ハローワークでの事前手続き
• 講座の受講・修了
• 受講終了後の受給申請

まずは、自分が教育訓練給付金の対象者であるか、ご自身の希望する講座が厚生労働省の指定講座にあたるかを確認しましょう。

最寄りのハローワークか、ハローワークの公式サイトから指定講座を選んだ後、受講前にハローワークで手続きを行い受講を開始します。

出席率や試験合格の条件を満たして講座を修了し、受講修了後1ヶ月以内にハローワークで給付申請を行うと、申請から約2ヶ月で給付金が振り込まれます。

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